9月3日放送

梅沢忠弘さん 9月最初の「ほっかいどう元気びと」は、千歳と白老にキャンパスがある学校法人「日本航空専門学校」学長の梅沢忠弘さん 37歳。航空整備科・空港技術科・国際航空ビジネス科で“空のスペシャリスト”を養成するその学校では、技術や技能は勿論、人間性を伸ばすことを大事にしているとのこと。北海道の地で、どんなことを大切にして夢追う学生達に接しているのか、その思いを伺った。
 梅沢さんは山梨県出身。歴史を紐解くと、曾祖父の梅沢義三さんが昭和7年(1932年)に日本で最も古い航空従事者養成のための専門校を開いたのが始まりで、現在も山梨に本部がある学校法人「日本航空学園」はそれから85年の歳月を重ねて今に至るという。
 空への夢と教育への志で道を切り開いた創始者、そして二代目、さらには忠弘さんの父親である三代目とそのバトンは繋がり、その間、第二次世界大戦といった時代の波に翻弄されながらも今日まで歴史を刻んできたとのこと。小さい頃、特に祖母からそんな梅沢家の熱意溢れる先達のことを聞かされて育ち、自分も当然その学校運営に関わるということを疑わずに育ったという忠弘さんが千歳と白老キャンパスの学長に就任したのが2012年の春のことだったそうだ。
 お話を伺っていると、予め決まっていた道を心から信じて真っ直ぐに進んできた人が持つおおらかさのようなものが伝わってくる。自分自身が周りの人達から受けたものは長じて他の人に返していくということが自然に出来る人なのだろう。夢を抱いて学びにやってくる学生達への思いがお話の中からもにじみ出てくる。
 その思いというのは、それぞれが選択する仕事を人生の中で豊かなものにしていって欲しいという願いだ。「日本航空専門学校」で空のスペシャリストとしての技術や技能を習得し晴れて就職を果たすという目標を叶えて貰うのは勿論だが、梅沢さんは、「就職がゴールではなく、夢を抱いて専門性を身につけた学生達が企業に就職したその後も尚夢を忘れずに仕事を続けて欲しい」と力を込める。そのために身に付けて欲しいのが「人間力」なのだと。
 お話を聞きながら、「あなたは何のために働くのか?」という「より良く生きる」ための大事な“問いかけ”を思い出す。それが「お金のため」だけだと、その仕事は時として辛い「労働」になってしまう。自分の仕事が周りにどう役立っているかをじっくり紐解いていくと、必ず誰かを笑顔にしていたり、喜ばせたり、元気にさせたり、快適にさせたりしていることに気がつく。そのイメージを抱くことが出来れば、1日のほとんどを費やしていた「辛い労働」が、「意味ある仕事」になってくる。仕事に夢が持て、貢献心を感じ、誇りが持てるようになれれば、「何のために生きるのか?」という答えも自分で導き出すことに繋がっていく。
 梅沢さんの話の中にもとてもシンプルに、「人を愛し、会社を愛し、目の前の仕事を愛することの大切さ」がその人の人間力に繋がっていくといった表現があったが、「あなたは何のために働くのか?」という問いへの答えを、技術や技能を学び、時々はボランティアで地域にも出向き、仲間と達成感を感じる取り組みなどもしながら、自然に引き出せるような学びがされているのだろうと感じさせていただいた。

梅沢忠弘さん 収録後、学生達のために学長である梅沢さんが担っている役割について尚も聞かせて貰ったのだが、そのこぼれ話の中でこんな一言が印象に残った。
 「自分の役割は、これから社会へ旅立つ若いひとりひとりが持っているエネルギーを夢の方に向けさせること」
 高校を卒業したての若者達の中には、エネルギーが有り余って違う方向に向かってしまうような学生も時々いて、そんな学生と話をする機会もあるのだそうだが、37歳の学長は、その、“ちょっと悪い方に向かっているエネルギー”を「夢の方に向けさせる」ことに尽力するのだそうだ。そして、「こちらが掛ける言葉ひとつでより良く変化することがあるということを学生達が見せてくれる。ほんとうにガラッと変わる。それが、この教育という仕事の面白さでもあります」と。
 「どんな向き合い方を?」と尚も訊いてみると、「学生には学生の考え方がある。頭ごなしに“いい悪い”とか“常識”を言うことよりも、まず、この学生は何を考えているのかを聞いてみることが大事」とのこと。本題と違うアプローチで話をし、例えば、好きな事の共通点が見つかったり共感出来ることが出てきたりすると相手は思いを話しやすくなる。相手の中に「聞いて欲しい」という思いは必ずある。そこにちゃんと耳を傾けることで、人は自分で気づき、エネルギーの方向の修正が出来る。それを見守るのが教育に携わる者の役目だと思う、と。

 「人の中のエネルギーを夢の方に向けさせる」・・・
 いい言葉だと思う。それは簡単なことではなく、時間もかかるし、自分のエネルギーも惜しみなく使うことだ。だからこそ、(教育分野のみならず)あらゆる仕事において、人に対してそんな優しい“風”を起こせるような存在になれれば、その人にとってのその仕事はまた、意味のある“一生もの”になっていくに違いない。
 そうして、そんなふうにいい風を受けた人は、また身近な人に返していくのだろうなと思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

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