7月23日放送

杉浦彩さん 「循環」「連鎖」といった言葉を最近よく使っている。自分の内側も外側も「より良い循環」や「より良い連鎖」というプラスの流れにしていくために出来ることは何だろうと考える。ごくごく僅かな意識で出来ることのひとつが「上機嫌でいる」ということ。ひとりひとりがちょっとした物事の捉え方やものの見方を「上機嫌」にしていったら世界は大きく変わっていくと心の底で信じている。自分を取り巻く“世界”は、ほんの半径5メートル位の狭いものかもしれないが、自分の心という世界をたえまなく良い循環や連鎖にしていけば、周りの空気も少しずつ心地よいものになっていくはず。
 そんな循環や連鎖の大きな輪の中で最も笑って機嫌良くしていて欲しいのは幼い子供達だ。ひとり残らずそんなふうにキャッキャと笑っていてくれたら・・・それこそ世界は変わっていくだろう。大人が笑っていれば小さな子供達も笑っていられる。子供達が笑えば大人も癒されて柔らかい心になる。今回の「ほっかいどう元気びと」でそんなループがふとイメージされた。ウェブショップで木のおもちゃの販売と貸し出しを行っている「おもちゃの森sapporo」の杉浦 彩さん(41歳)がお客様。ご夫婦でおもちゃコンサルタントの資格を取り、2014年にふたりで立ち上げたという背景にどんな思いがあるのか伺った。

 現在5歳の男の子のいる杉浦さんご夫妻。そもそもお子さんが生まれたことが今のこの仕事に繋がったのだということが彩さんの静かな一言一言から伝わってくる。それまで会社員だった夫の勝彦さんは朝から晩までかなり忙しく働いていたそうで、早朝に出掛けて夜遅く帰ってくる毎日では子供と接することが難しく、何か自分達で出来る仕事を新たに立ち上げ、もっと子供との時間、家族の時間を大事にしようと思ったのがきっかけだったのだそうだ。そういう思いで始めるのなら少しでも子供に繋がるもののほうがいいと夫婦で話し合い、安全・安心なおもちゃのことをいろいろと調べ始め、おもちゃコンサルタントとおもちゃインストラクターの資格をふたりで取ってスタートさせたとのこと。
 木のおもちゃ専門店にしたのは、やはりその優しさや温かさに惹かれたそうだが、お子さんの遊び方を見ていたらいろいろなおもちゃがある中で木のおもちゃのほうを自然と選び、いつまでも夢中になっていたからという理由もあるそう。全国のおもちゃを買い付けてネットで販売、または貸し出しという仕組みを作り、道内では新得町の「社会福利法人厚生協会 わかふじ寮」や津別町の「KEN工房」などで作られるものも扱っているとのこと。
 全くの新たな取り組み。勿論、スタート当初は「どうやって軌道に乗せようか」とふたりで不安になることもあったそうだ。収録後にそのあたりのことを尚も訊いてみると、「やはり思いの強さ、こうなりたいと願えば必ず叶うというそのあきらめない姿勢が大事なのだと思う」と彩さんは特に夫の勝彦さんの強い思いと行動力を話してくれる。皆が見てくれるようなサイトにするための工夫や周知のための智恵を粘り強く考えてはトライして3年目、現在はそんな工夫も実って販売やレンタルの需要も増え、全国のおもちゃ作家さんの元へと足を運ぶことも楽しみになったと言う。
杉浦彩さん そこには沢山の出会いもあり、気づけることもいろいろあるのだそう。例えば、これからどうやっていこうと頭の中がいっぱいだった頃に出会った埼玉のおもちゃ作家さんがさりげなく掛けてくれたのが「頑張ったらだめだよ」という言葉。「ちゃんとやることはやらなければならないけど、おもちゃは頑張って売るものじゃないよ」とおもちゃの作り手としての深い思いを伝えてくれ、おもちゃを販売するという仕事は商売ではあるけれど面白さや楽しさを伝える役目が大きいのだと改めて気づかされたのだそうだ。
 想像力を膨らませたり、智恵を引き出したり、子供達にとっていい栄養になるようなおもちゃを選んで提案する「遊びの栄養士」のような役割をしていきたいとこれからの夢を彩さんは語ってくれたが、ご夫婦が「どんな生き方をしていきたいのか」「そのためにどんな仕事を選ぶのか」といった向かっていきたい先が同じなのだと感じさせていただいた。
 7月9日放送の河嶋俊さんの時にも出てきた「生き方と仕事を一致させる」、そして、「誰と働きたいのか」という価値観を大切にするという生き方。その思いとも共通するのだろう。

 世の中の形態も少しずつ変わり、仕事に関しての大変なことも様々取り沙汰されているが、「おもちゃは頑張って売るものじゃない」という前述のおもちゃ作家さんの言葉をいろいろなことに当てはめてみるのもいいなぁと思う。食べ物屋さんは「美味しいのもは頑張って売るものじゃなく、味わう楽しさを楽しんで貰う役目」。観光に携わる人は「頑張って人を呼ぶのではなく、その土地の良さを感じて貰う役目」。人を育てる仕事の人も、歌う人も、写真を撮る人も、演じる人も・・・。ここのところの「元気びと」達を思い出してみても、そんな「役割感」を感じている人達ばかり。勿論、放送の仕事だってそんなところから醍醐味は生まれてくる。当然、どの仕事だって大変さや厳しさ、物理的なハードさは無縁ではないが、だからこその“捉え方”。これからの時代、そういうものの見方、捉え方という智恵がもっともっと必要になるだろう。
 ちょっとしたところから、いい循環やいい連鎖は始まる。子供にとってのおもちゃが宝もののように、大人にとって自分の仕事や取り組みが宝ものであるという心持ちが伝播していけば、大きなループの「上機嫌」な世界もきっとやってくる。

(インタビュー後記 村井裕子)

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