7月24日放送

 以前もこの欄で書いたことがある。私が各地で行う「話し方」や「コミュニケーション」講座で受講生達がスキルやテクニックを超えてとても胸に染みるスピーチをしてくれているということ。先日、ある女性は、これまでの自分を振り返り、人によって様々に違う評価に対し幼い頃から迷ったり悩んだりする中で、ようやく「みんな違ってみんないい」という言葉に救われたという内容の話を心情を的確に捉えた表現でスピーチし、帰り際、スッキリした表情で「話をするというのは、カタルシスなんですね・・・」と話し終えた感想を聞かせてくれた。
 上手いことを言うなぁと頷く。私は講座という場を「学び合う場」であると共に、実はそんなふうにも使って貰えたらとっても嬉しいとずっと思ってきた。いや、最近ではそちらの比重の方が大きいかもしれない。思いを話して、聞いて貰えて、自分を再確認した人の顔はほんとうに清々しいからだ。
 「心の中に溜まっていた澱(おり)のような感情が解放され、気持ちが浄化されること」を意味するのが「カタルシス」。辞書によると・・・もともとは「感情を浄化する効果」をさす演劇学用語が転じて、精神医療において「抑圧されていた心理を意識化させ、鬱積した感情を除去することで症状を改善しようとする精神療法」をさすとある。さらに、一般化して、「心の中にあるわだかまりが何かのきっかけで一気に解消すること」をいう・・・とのこと。
 難しいことは脇に置いても、「話すこと」、「対話すること」の可能性はまだまだあると確信している。

丸藤健悟さん そんな「語り合う場」を作り、出会うこと、話すことで若い人達の思いを後押ししている人が札幌にいるとのこと。なぜ語り合いを大事にしているのかを聞きたくて「ほっかいどう元気びと」にお呼びした。
 「ゆるりぐるり」を主宰する丸藤健悟(たつのり)さん 26歳。若者支援の仕事に就きながら、その集まりは個人で開催。ふた月に1、2回位の割で5人~10人ほどの人達がフェイスブックを通じて集まり、テーマを決めて話すのだという。遡れば、大学4年の頃に、「地域活性」について話し合おうと仲間と共に茶話会を始めたのがきっかけで、地域活性だけにとどまらず、「将来の夢」「ターニングポイント」といった他のテーマが繋がっていき、その次、またその次と企画しているうちに参加者の友達など新しい人がやってくるようにもなり、3年が経つとのこと。
 私自身の講座もそうだが、「単なるお喋りになってしまわないように」という配慮と工夫は大事だ。その辺りを聞いてみると、やはりテーマ性を持たせるということと、人の話は否定せずにちゃんと聞くという参加者の暗黙のルールと意識の高さがあるという。何らかの葛藤を抱えている人には、他の参加者が自分の体験を話すこともあれば、そういう時に前に進めた誰かのやり方が話されることもある。1つの話が思いもかけぬ展開になったり、面白い「化学反応」が起こったりして、毎回とても有意義な時間なのだそう。

丸藤健悟さん なぜ、丸藤さんはその集まりを続けているのか?少し幼少の頃のお話も訊いてみると、今はとても笑顔の爽やかな、人の心をほっとさせる雰囲気を醸し出している青年にも様々な葛藤があったとのこと。小学生の頃の転校によって自分を表現することに臆病になり、素の自分を隠すようになったという丸藤さん。友達もあまり作らず、こんな自分で生きていくのは嫌だと酪農学園大学に入学と同時に「自分を変えよう!」と決意。自己表現の出来る自分になろうと努力するうちにYOSAKOI のリーダーの姿を見てこれだと確信。学年が上がるのをきっかけに志願し、その役をこなすうちにどんどん話せるようになっていったという。
 東日本大震災をきっかけに被災地支援にも関わり、自分の人生をじっくり考える時間が欲しくて1年間休学し、ピースボートに乗船。21ヵ国を回る3ヶ月の中で「何かを抱えていそう」な人に話しかけ、その思いを引き出し、その人の根っこにある解決策を指摘してとても喜んで貰えたことをきっかけに、自分はそもそも小さい時から本当はそういうことに喜びを感じていたことを思い出したのだそう。悩んでいる人に寄り添えることが自分の最も大きな強みだと気づいた丸藤さんは、いろいろな人と話した経験から社会に出る前の若者達のモヤモヤを解消することが大事と確信。その「役割」を思い起こせたということが「ゆるりぐるり」という場を続けている出発点なのだと語ってくれた。

 「あなたの宝ものは何ですか?」の問いかけには、「自分の感覚」という答え。今の自分の感覚や価値観は、家族や友人達がいろいろなものを与えてくれて出来たもの。それらひとつが欠けても今自分はこの場所に立っていないと、感謝を素直に口にする。
 収録の間も、終了後の聞き取りも、一つ一つの質問に興味深そうに、そして、楽しそうに話してくれたが、そんな「丸藤さんを作ったもの」の中には、沢山の迷いや悩みや葛藤や自己嫌悪、そして数々の自問自答もあるに違いない。
 そうやって気づいた丸藤さんの「宝もの」は「自分の感覚、価値観」ということだが、その「自分」は、「他者それぞれの自分」でもあるのだろう。目の前にいる「相手の感覚、価値観」も宝もの。「人がそれぞれに大切にしているものを尊重し合う」ことがどれだけ大切なことか。そして、それは、深く語り合うことによって可能になるもの。そこをきっと信じているのだろうと伝わってきたのだった。
 人と人との間柄のそんな「カタルシス」を生み出す役割を、これからの長い人生で果たしていくのだろうなと、頼もしくその背中を見送った。

(インタビュー後記 村井裕子)

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