4月3日放送

 「ほっかいどう元気びと」、前回のゲスト、「世界放浪絵描人」の山口陽介さんのお話から浮き彫りになったキーワードは、「ぜんぶ繋がっている」「めざすところはひとつ」だとこの後記で書いた。バラバラだと思っていたことが実は繋がっていた、ひとつだったと気づいてゆく「宇宙観」(宮沢賢治的に言うと「銀河系意識」)を持つことは、生きている意味や醍醐味にダイレクトに繋がっていくと私自身も思っている。
 人との出会い、そして、インタビューもまさにそういう醍醐味のひとつ。何かに取り組む人の胸の内側からその根底にあるものは何かを紐解いていくと、幾つかのバラバラの「点」だったものが一瞬にしてひとつの「線」で結ばれることがある。まさに、「ぜんぶ繋がっている」・・・。
 番組開始から6年目。4月の第一回も、そんなインタビュアーとしての喜びをひしひしと感じながら新スタートを切ることが出来た。

芳賀博信さん 3日のゲストは、「NPO法人 セカンドサポート」理事長の芳賀博信さん 33歳。2006年から2012年まで「コンサドーレ札幌」に所属しキャプテンも務め、現役引退してからは、「北海道コンサドーレ札幌」のアドバイザリースタッフとしても尽力する元Jリーガーである。
 「NPO法人 セカンドサポート」の活動は多岐に渡っていて、引退後の選手の次の人生へのアドバイスや再就職のサポートをするセカンドキャリア支援もあれば、視覚障がい者と健常者が共に楽しむ北海道初のブラインドサッカーチームの立ち上げ、子供のためのサッカー塾の開催など、スポーツ振興全般に力を注いでいる。
 引退後の選手のためのセカンドキャリアへのサポートは、人材派遣会社と連携をしているとのことだが、ここに着目したのは芳賀さん自身が引退を決めた後、「さあ、これからどうしようか?」と途方にくれた経験があったからとのこと。あらゆるスポーツの引退後というのはおしなべて厳しいのが現状。第二の人生の心配をすることなくスポーツに打ち込める環境整備が日本にはもっと必要だし、選手本人も「その後」の意識を現役の頃から働かせておいたほうがいいとも芳賀さんは言う。再就職希望者には芳賀さん自ら面談をして、「社会人」としての意識や心構えに切り替えていくといった関わり方もするそうだが、「それまでの熱を冷まして貰う」という表現からは、なるほど「熱い日々」を過ごしたプロスポーツ選手やアスリート達の社会人への「切り替え」がいかに難しく、且つ重要なのだという意味合いが伝わってくる。
 そして、ブラインドサッカーチーム「ナマーラ北海道」の運営は、北海道札幌視覚支援学校でサッカー教室を開いたことがきっかけ。ブラインドサッカーをしたいと願っている人達がいることを初めて知り、それなら作りましょうと「わりと気軽」に動いた結果と言い、さらに、子供達へのサッカー塾やサッカーを教える活動は、勿論、次世代にスポーツを引き継いでいくためのもの。「北海道コンサドーレ札幌」の河合竜二選手ら現役のJリーガーも巻き込んで行っているのは、選手にも現役の時から自分の経験や精神を教えるという意識を持って貰いたいからと話す。
 私はお話を伺う中で、芳賀さんの取り組みは、「スポーツ」を軸にして、引退後の選手達にとってはその経験を生かすという可能性を広げ、また、子供達も障がいを持つ人達も気軽に幅広くスポーツに触れ合う可能性も広がっていくという「より良い循環」を起こしているのだと感じ、インタビューでもそのように感想を述べたが、収録後の「宝もの」の聞き取りを進めていくと、さらにそれらの点と点が面白いように繋がっていった。

芳賀博信さん 芳賀さんの「宝もの」は、「人」。第二の人生をより良いものにするために人との出会いや支えは欠かせないという話から、「仲間の大切さ」や「仲間として大事なことは、裏切らないこと…やはり心が欠かせない」「上っ面で思ってもみないことを言うのは第一印象でもすぐにわかる」など、芳賀さんの信条が率直に表現されていく。その流れの中で、「子供達へのサッカー指導」についての思いに問いを移していくと、そこを最も大切にしているらしい「温度の高さ」が言葉になって溢れてくる。
 サッカーを学ぶ子供達へまず伝えたいのは、身の回りの基本。「一流の選手や長く続けられる人は、やはり人間性もすごい」と話す芳賀さんが大事にしているのは、日々の中、「あたりまえのことを、あたりまえにし続ける」ということだ。
 例えば、顔見知りの自分とすれ違っても無言で素通りする子供には挨拶の大切さを。さらに、脱いだ靴を揃える、鞄の中や道具をきちんと整理整頓する、遠征などの荷物は自分が使うものなのだから親が揃えるのではなく自分でするといったことを何度も伝えるという。
 挨拶は、競技に臨んだときの大事な声掛けに繋がっていくし、ちゃんと自分でものを片付け、整理するというのは、その後出し入れしやすい、使いやすいというあたりまえの結果を踏まえてのことなのだが、それらは、「先先を読んで、今何をすべきかを考え、行動する力」を養うことに繋がり、そのすべてが、サッカーの上達のために欠かせないものなのだと説く。
 数珠玉をひとつひとつ紐に通すようにお話を聞いていて、ふと、最初に伺ったもうひとつの芳賀さんの大事な取り組みを思い出す。「あ!・・・もしかして、その、『先を読む力と行動力』を付ける大切さというのは、選手を辞めた後に必要になる『その先も社会で生き抜く力』にも通じるということ?!」
 腑に落ちるというのは、こんなふうに点が線になってぐるりと繋がる時の感覚なのだろう。すべては「自分で先先を考える力」。サッカーの実践でも、自分の人生の構築も。先を見通せる力を小さな頃から予め鍛えておけば、たとえ引退という壁が目の前に現れたにせよ、経験を力に自分を最大限に生かすことも新しいチャレンジで一歩を踏み出すことも出来る。そう、それは一生ものの力だ。
 芳賀さんの取り組みは、サッカー塾も、障がい者のためのスポーツ支援も、選手達のセカンドキャリア支援も、一見別々に見えるような枝の1本1本ではあるが、すべて、自分自身の人生の先を豊かにするための『人づくり』という太い幹に繋がっているのだと感じられ、やはり、人に話を訊く「インタビュー」の醍醐味は、その「根っこ」を見せて貰える感動から来るのだと、改めて私の内側でも「大切なもの」が1本に繋がる確信を得たエキサイティングな時間だった。

 「先を読む人間力」・・・これは何もスポーツに限ったことではない。GOなのか、止まるのか、右か左か、それとも一旦戻るのが得策か・・・。先行きを判断するということは「戦略」とも相通ずるところがあると思うが、まさに、「戦略とは戦いを省く(省略する)こと」。人とむやみにぶつからずに自分の最良の道を進むための、あらゆる分野で問われる「人としての大事な能力」なのだと思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

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