9月27日放送

 いつもいつも出来ているわけではないが、心がけたいもののひとつに「立ち居振舞い」がある。礼儀的なものや立ち姿、姿勢といったものは勿論だが、もっと日々のさりげないこと。
 例えば、ものを扱う時や自分の動作で“不快な音を立てない”といったこと。戸を閉める、バッグを何かの上に置く、お皿や湯呑みやペンなどをテーブルに置く時にも人への気遣いとして音を立てずに優しくありたい。或いは、ヒール靴のカツカツ音も要注意。折角きれいにお化粧しているのにペットボトルのお茶をバンッと置く人や、ヒールがすり減って金属がむき出しになっているのにも頓着せずにガツッガツッと音を立てて歩いている人などを見ると「ああ、残念・・・」と思う。

白岩大佑さん ここのところ、そういった「所作」について語っても唇寒しの感があるなと感じていたが、今回の「ほっかいどう元気びと」で、年齢には関係なく“人への配慮としての所作”を大切にしながら“ものづくり”に専心している人に出会え嬉しくなった。
 お迎えしたのは、函館に薪窯「鞍掛窯」を構える急須職人の白岩大佑(たいすけ)さん 30歳。北海道教育大学函館校芸術文化課程美術コースで陶芸を学び、常滑市無形文化財保持者である小西洋平さんの急須に出会ったことで自身も急須作りを志そうと決心。弟子として受け継ぐ常滑の技術と函館という土地ならではのオリジナリティを追求し、数ある陶器の中で急須一本に絞って技を極めようとしている若き“ものづくり”の職人だ。

白岩大佑さん 白岩さんの手からなる急須を実際に見せていただくと、小ぶりでぽってりとした丸みが可愛らしい。この丸みが、師匠である小西さんから受け継ぐ味わいなのだとか。そして、薪窯で焼いたからこその風合い。薪の灰が炎に舞って作品の上に雪のように降り、それが高温になって溶けることで自然の釉薬になるのだそうで、その降り積もり方や火の当たりによって艶が出たりくすんだり、二つとして同じものは出来ない絶妙な色合いが醸し出されるのが特徴だという。
 持ってみて驚くのはその軽さ。薄さが2ミリだからとのことだが、まずは1ミリで作れるように鍛練を続け、目標の薄さ2ミリを難なく作れるようにした努力の賜物なのだという。
 そして、持ち手の先がラッパのようにやや広がっているが、その長さが短いのが特徴的。
 白岩さんは言う。
 「お茶を注ぐ時には両手で急須を持ってほしい。そんな思いを込めて持ち手を短くしています」と。
 急須は両手でというのは、一昔前の古い人達なら当たり前のことのようだが、最近では蓋が落ちない作りであれば片手だけで無造作に持つ人もいたり、急須自体が家庭には無いので持ち方に気を配ったこともないという人もいる。両手でというのは道具を優しく扱うことは勿論、相手への思いやりなのだと白岩さんは言う。
 「人にプレゼントや賞状をを渡す時には両手ですよね。お茶を淹れるというのも相手がいること。その相手とのお茶の時間を大切にするという気持ちで急須という道具を扱って欲しいのです」と。
 お茶をいただくということは、相手をもてなし、時間を共有すること。そこに漂う空気やその豊かさを大切にして欲しいという思いが、まあるい形の急須を仕上げていくのだろう。優しい語り口から思いがしっかりと伝わってくる。
白岩大佑さん 世の中は便利さを追求し過ぎて、ちょっと人間らしさが失われているのではと日々感じながら作業に向かっているという30歳。一般の人達の受け止め方が自分と違った時や、問屋さんに「持ち手を長くしないと使いにくい」と使い勝手だけを重視して言われると複雑な思いになると苦笑いしながら自分を貫く大変さを語っていたが、私は“その気持ちのままでいいと思う”と、背中を押してあげたい気持ちになった。そういう人がいなくちゃ、この世はほんとうに効率一辺倒に流されていってしまう。
 「宝もの」として、師匠の小西洋平さんに初めて会いに行った時に求めた急須をあげた白岩さん。5年近くも作品を持って通い続けてようやく弟子入りを叶えたという話からは、ひとつのことへの思いの強さやめげない精神、古い表現だが“根性”といった逞しさも感じられ、日々あまり深い接点がない若い世代の心意気に大いに頼もしさを感じさせて貰ったインタビューだった。

 それにしても、ここ最近の世の中の動きに関しても若い人達の振る舞いに対して見直すことが多かった。何かが間違っていると思えば自分の意見を真っ直ぐに言う。行動を起こす。諦めずに、言葉の力で何かをより良く変えようとするその姿勢。
 正しい・正しくないではなく、ましてや安易に正義を振りかざすのではなく、何が真理なのかを真剣に考えようとする人がいる限り、未来は明るい。
 ものづくりの真理、仕事を突き詰めていく真理、生き方の真理、この世の真理・・・年齢に関係なく、一心にそこに向かおうとしている人達とじっくりと思いを通わせていくことが、未来のより良い道を探すために出来ることなのかもしれない。

(インタビュー後記 村井裕子)

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