12月15日放送

 「ほっかいどう元気びと」を聴いてくださっている方から、私が相手に問いかける「質問」を参考にしながら聴いていると言っていただくことがある。それを仕事に活用したり、日々のコミュニケーションのヒントにしたりしているとのこと。とても嬉しく、改めて背筋が伸びる思いになる。
 インタビューというのは、アナウンサーの仕事の中でも「こういう方法で訊きましょう」とったマニュアルはほとんど無く、最も難しい奥の深いものだ。Q&Aのノウハウはあるにはあるが、やはり「人の心の奥へ分け入って行く」という最もデリケートなもの。人はひとりひとり違うわけだからスキルだけではない大事な何かがそこにはあると思っている。

寺井嘉朗さん 今回のゲストは、札幌市西区山の手で讃岐うどんの店「手打ちうどん 寺屋」を営む寺井嘉朗さん36歳。奥さんの実家のある札幌でうどんのお店を開いて11年という香川県出身の寺井さんに、食文化、麺文化が違う場所で専門店を続けてこられた思いを伺った。
 寺井さんの取り組みは、とにかく香川のうどん店にも負けない美味しいものを作りたいという気概で、天候などにも左右されやすいうどんに丁寧に向き合いながら作り続けてきたということ。盛り付けなどの見た目にも気を配っているのは、若い頃に修行した割烹のおやじさんの「料理は一瞬の芸術だから」という教えがあったから、とのこと。
 小さい時におじいちゃんに「お前は次男だから家を出て行け」と言われて育ったことで反骨精神と独立心が養われたということもお話の中から感じられたが、このとても素直な職人さんに、どういう思いでどういう力を発揮して前に進み、その過程で何に気づいたのか深いところを知りたいと思い、何度かそういう問いを投げかけてみる。ものを作っている人は、“言葉でどうこう”より、取り組みがすべて。まして、普通は自分を語る機会などそうそうない。明るく話す中でも「答えが出ませんね」と考え込んだ箇所が何度かあった。

寺井嘉朗さん 「お客さんが来なかった時期を、どういう力で乗り越えられたと思いますか?」
 “言葉にしてみたら何かがきっとあるはず”という思いで、何度か同じ質問をちょっと違う表現でしてみる。
 寺井さんは、「めげなかったのは一緒に店を支えてくれた嫁さんや料理人の先輩たちのおかげ」と、辛かった時の心の支えを話し始める。私は、ふと、そんなふうに多くの人が支えたくなる寺井さんご本人にはどういう力があるのかが知りたくなって、再度「あなたの中の力は何だと思いますか?」としつこく訊く。すると、それまで「多くの人たちに支えて貰って」と繰り返していた寺井さんから、ふと頭の中に電球が光ったような表情で自分を語る言葉がこぼれ出た。
 「多分僕は、結構熱いんですよね。情熱がある」
 しつこいインタビュアーは「なになに?熱いって、何がどんなふうに?」と身を乗り出さんばかりにぐいっとその思いを拾いに行くと、寺井さん、「お客さんが来なくて困っていた時に、面識も無いフレンチのシェフのところへ、自分の作ったうどんを1回食べてみてくださいと押しかけて行ったことがあります」と、エピソードを紐解いてくれた。「熱いというより、うざいと思われたかもしれませんが(笑)、そこから始まっていったんです」と。
 技に自信をつけるためにやれることをやる実行力、そして、それを人に伝える熱意、その両方が寺井さんの持ち味なのだということがその瞬間に伝わってきて、ぐんと人柄が際立ったような気がした。

 形のない思いを言葉にしてもらう醍醐味。例えば、人の心には沢山の箱のようなものがあって、普通は初対面の人などには表面にある“小箱”しか開けて見せることはない。その奥にある箱、それを開いて見せて貰うのがインタビュー。
 私自身この番組で多くの方に問いかけをさせていただき、大事な思いを語っていただく中で気がつくことは、人はそれぞれがそれぞれの人生の主人公で、誰の道にも当然山坂があり、その思いは普段誰彼に語ったりはしないが、深層心理では皆、人に受け止めて貰いたいと思っているのではないかということだ。あの大変な時にこんなことを思った。こんな行動に出た。そして気がついた・・私の中にこんな原動力があったこと。なぜそれをしたかったのかということ。こんなふうに生きていこうと感じたこと・・etc.
 インタビューというのは、それを「ただ真摯に聴く」「心をちゃんと震わせて聴く」。それに尽きるのではないか。心を震わせるためには、心の“受容器”の感度が欠かせない。実はそれがスキルではない最も難しいところだ。インタビュアーがどんなふうにものを考え、感じて、どう人と向き合い、どんな体験を積み重ねて生きてきたのか・・それまでの生き方が試される。
 人は、自分の言葉や思いに相手の心が震えていると感じ、受け止められたという感覚が持てると、必ず次の”小箱”を開けてくれる。その箱は、持っている本人でも気づいていなかった”箱”だったりするところが面白い。その中を覗くことで自分の中でも何かが腑に落ち、またその先の“大事な箱”を開けて見せてくれる。

 「自分の持ち味は、“熱い”ということ。逆境で尚熱くなれるということ」
 寺井さんが話したことは、自分の中にある“強み”だ。
 “強み”は経験から引き出されて言葉で確認することで、意識の中にブックマークされ、未来へ向けてその強みを意識しながら力を発揮して行くことができる。
 人の潜在能力は“潜在意識”という名の箱の中に入っている。一段目、またさらに二段目の棚の下にある箱のさらに奥底の箱。ひとりひとりの、そんな宝箱の中から出てきた言葉や気づきはその人自身を牽引するだろう。そして、聴いている方々ひとりひとりの中にもまだ見ぬ力が沢山詰まった“宝箱”があるのだということを感じて貰いたい。
 そんな思いで、毎回、「元気びと」に向き合っている。

(インタビュー後記 村井裕子)

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