10月13日放送

 「楽しいから笑うのではなく、笑っているから楽しくなるのだ」と言ったのはウィリアム・ジェームズ(アメリカの心理学者・哲学者)。
 笑いの効用の研究は様々に行われて、近年ではその言葉を証明するような「作り笑いでも脳は騙されてしまい楽しい気分になる」という『笑いのフィードバック効果』なるものも解明されているとか。何でも、楽しいと表情筋が動いて「笑顔」になりその情報が脳に伝わるが、楽しくなくても「笑顔」を作ると、やはり表情筋が動き、それを脳が「楽しい」と感知。つまり、作り笑いでも脳は騙されてしまい楽しい気分になるのだそう。
 そうなのだ。笑っていると楽しくなる。これは本当だ。
 私もこの半年間、毎日朝から「笑い」のスイッチが強制的にONになり、そのエネルギーのおかげで忙しい日々も乗り切れた。そう、朝ドラの「あまちゃん」効果。朝のみならず、仕事を終えて帰ってきた夜にも家人と共に録画を見て、一日の締めくくりに笑って寝るという効用で何十倍もエネルギー充電が出来たような気がしている。
 多くの人が言っている「あまロス」は私もしかり。何というか、「あまちゃん」によって、私の頭の中に1本の「笑いの線路」が敷設されてしまって、毎日この線路上を力一杯電車が走る爽快感を感じていたのだが、10月からダイヤ改正。廃止路線の線路だけが淋しくポツーン・・・次の笑いの列車を待っているみたいな、秋風にススキが揺れるような心境なのだ。
 いやいや、笑いは待っでいではダメだ・・(と、訛りになるところが後遺症)自分から取りにいがなぐでは!

加賀城匡貴さん そんな心境で、ともかく「笑いの種を見つけよう!」と笑顔倍増計画の中、「ほっかいどう元気びと」のゲストで来てくれたのは、札幌を拠点に活躍しているステージパフォーマンス集団「scherzo(スケルツォ)」を主宰する加賀城匡貴さん。
 小さい時から物事をひとひねりして人を楽しませることが大好きだったという加賀城さんの、サッカー少年からエンターティナーになっていくストーリーを面白おかしく、そして時に共感しながら聴かせて貰った。

 高校の進路相談で志望校を書く欄に「第一志望 ブラジル」「第二志望 ドイツ」「第三志望 イギリス」と書いて、「お前、学校の名前を書け」と先生に怒られたお茶目なサッカー少年時代。
 国内のサッカー強豪校を大学受験するも落ちてしまった時、父親が「違う4年間もあるかもしれない」とイギリスへのサッカー留学への背中を押してくれたというエピソード。加賀城さん曰く、それは「自分大学」と称して、いろんなものを見て吸収しようと決心した旅立ちだったとか。怪我をしてサッカーの道を断念しても、イギリスで文化を吸収したいという気持ちに変換してエネルギーが枯渇しなかったのは、そんなバックボーンがあるからなのだろう。
 小ネタで笑わせてくれる合間に、人生観を真直ぐに語ってくれたり、質問に丁寧に考えてくれたり、加賀城さんの基本の軸は「真面目」なのだと伝わってくる。

加賀城匡貴さん 主宰するステージパフォーマンス集団「scherzo(スケルツォ)」のライブのテーマは“見たて”。
 “見たて”とは、“物の見方を変える”ということ。道内各地で様々な写真を撮ってきて、ステージ上のスクリーンに映し出し、その見え方を生演奏の音楽や言葉で変えて見せることだと加賀城さんは言う。
 例えば、庭にあるただのブロックをパルテノン神殿に見たててそれらしく撮り、ナレーションと音楽でドキュメンタリー風に見せたり、何台もの車のワイパーを動かして北海盆歌で踊らせたり、いろいろな物が違うものとしてそこに存在している面白さを追求する。
 「カッコつけて言うと“発見するエンターテインメント”です」と加賀城さん。ステージでのライブを中心に、小学校での課外授業やワークショップも行っているというが、小学生たちとワークショップをした時に、「答えはひとつだけじゃないんだって解りました」という子どもの反応に逆に驚いたそうだ。
 「今の子供達は、“答えはひとつなんだ”と教えられ続けているとしたら、それ以上そういう考え方に縛られ過ぎないように、“いろんな見方があっていい”ということを伝えていきたい」と思ったと。
 やっぱり、「真面目」が加賀城さんの真ん中にある1本太い軸なのだ。皆が共感できる笑いに真面目に取り組むのが、少年の頃から変わらない加賀城さんの心意気。

 「人生を楽しめる人は、いかに笑うべきか、いかにして笑いをつくり出すかを知っている」と言ったのは、心理学者のウエイン・W・ダイアーだ。
 大事なのは、「人を笑うのではなく、人とともに笑うこと」。
 秋の夜長、久々に気の合う仲間を誘って笑いの連鎖を肴にしようか。笑える小ネタをどっさり仕入れて家人に話して聞かせようか。そうだ、「scherzo(スケルツォ)」の“見たて”を真似てオリジナルの笑いを作り出してみるのも、クスッと笑えそうだ。
 笑っていると、楽しくなる。どんな状況でも、人は人と笑っていたい生きものだから。

(インタビュー後記 村井裕子)

参考資料 ウエイン・W・ダイアー「『自分の価値』を高める力」(渡部昇一訳 三笠書房)

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