10月28日放送

松並順子さん 「悲観主義は感情で、楽観主義は意志の力による」と言ったのは、『幸福論』を書いたフランスの哲学者アラン。
 今回の「ほっかいどう元気びと」のゲスト、アント英語スクール代表の松並順子さんと話していて、ふとその言葉を思い出した。
 松並さんは、まさに「楽観主義」の人であり、それは強い「意志の力」でそうしてきたのであろうと感じたからである。
 一時は英語を嫌いになった十代の葛藤から一転、夢に描いた英語スクールの開校まで、沢山の経験の引き出しからエピソードの数々を語ってくれたが、失敗や挫折さえ楽しそうに伝わってくる。まるでそれがひとつひとつ「楽観的」な包装紙に包まれているかのように。

松並順子さん 松並さんが英語を身につけたいと思ったのは、テレビのドキュメンタリーを観たのがひとつのきっかけだったという。太平洋戦争で息子を亡くした母親が、「遺骨も帰ってこなかった。せめて現地の石でもいいから拾ってきたい」と話す言葉に心打たれて、自分がその地の石を届けようと友人とグアム、サイパンへ渡るという、感性と行動力溢れる二十歳の頃の経験をしている。
 敗戦で多くの日本人が身を投げたというバンザイクリフを訪れた松並さんは、たまたま居合わせたアメリカ人の男性と目が合う。戦争の勝者と敗者という複雑な心境の空気が漂う。その途端、松並さんが発した言葉が「オー、フレンド!」。アメリカ人はそれに応えてハグしてくれたそうだ。
 この時期の松並さんは、英語が嫌いになっていて会話もままならなかったが、こんな簡単な単語でも分かり合えるし、通じ合うのだということを体感し、もっと喋りたいと思うようになったという。
 「こうしたい!」という思いの強さが何かを引き寄せ、そのエネルギッシュな状態が、自分の中で「学び」のためのスイッチになるのだろう。
 その後、松並さんは英語を始め多言語を学び続け、数々の仕事経験を積み重ねながら、英語スクール開講の夢を叶えていく。挫折を乗り越えながらようやく辿り着く自身のやり方を「雑草タイプ」と分析し、叶えたこともうまくいかなかったことも同じような温度で笑い話のように紐解いていく。
 聞けば、世界のあちこちで出会う人たちと何らかの繋がりを続けていくことで、その後の大切なネットワーク作りに繋げていくという、人生を切り開く「偶然力」を存分に発揮してきたことも伝わってきたが、その鍵は持ち前の「ほがらかさ」だったのだろう。

 「夢を叶えていく原動力は何ですか」と訊いてみると、松並さんはひょうひょうとた表情で「毎朝の腹筋100回、背筋50回」と答える。
 それは、こういうことだ。
 「やろうと思っても、出来ないことや挫折も多い。ままならないことも山ほどある。落ち込むこともあるけれど、とりあえず『何も考えずに、決めたことをする』。それを続けていくことで、毎日はうまく回っていくような気がする。それが、私にとっては、腹筋100回、背筋50回なのだ」と。
 その意味合いの深さに思わず納得。
 「自分で決めたことを、毎日する」ということは、もしかしたら自分の「耐性」や「持続力」といった「人間力」を鍛える最適トレーニングなのかもしれない。
 腹筋トレーニングであろうが、朝のラジオ体操であろうが、英単語を毎日覚えるでも何でもいい。小さくていい。とにかく「自分で決めたこと」を、毎日続けること。
 そして、その「続けるため」の習慣化に欠かせないコツは、「楽しく」続けるということ。
 松並さん流「辛い腹筋運動を楽しく続けるコツ」は、「覚えた20カ国の言葉でカウントをすること」だそうだ。想像すると、クスリと笑ってしまう。

 「自分で決めたことは毎日続ける。しかも、楽しく」
 それは、簡単なようでいてほんとうに難しい。
 まさに「楽観主義は、意志の力」。

 『幸福論』のアランはこんなことも言っている。
 「あなたが上機嫌でありますように。これこそ交換することで増えていく宝である。・・・あなたはこの上機嫌の波に乗ってどんな小さな浜辺にも行ける。注文を聞くボーイの調子が違う。いすを通り抜けるお客さんたちの様子が違う。こうして、上機嫌の波があなたのまわりに大きくなって、すべてのものを軽くする。まずはあなた自身を」
 ちなみに、松並さんは、今でもミュージカルに出たいという夢を持つほどダンスが好きと言うが、多言語をマスターする秘訣として、「言語×ダンス」を組み合わせることだったそうだ。英語の時にはジャズダンスを、スペイン語を学ぶときには、スペイン語圏のキューバのサルサを、アラビア語の時にはベリーダンスを!

 上機嫌という人間力。
 そう、それは、人も自分も幸せにする最強の道具に違いない。

(インタビュー後記 村井裕子)

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