5月27日放送

横田愛さん 今回のゲストは、バルーンアーチストの横田愛さん。
 (「アーティスト」だと芸術家風で高尚過ぎるから「アーチスト」と名乗っているとご本人の弁)
 インタビュー当日、大きなカエルが足取りも軽くスタジオに入って・・・いや、細長い風船を幾つも組み合わせて作った大きな「カエル」を頭にかぶった横田さんが、やってきた。聞けば、HBCの駐車場で車を降りたところから横田さんはカエルくんになり、そのまま玄関を入り、エレベーターに乗って、長い廊下を歩いてやってきたとのこと。
 なんでも、荷物が多くてバルーンアートを持ちきれなかった時に、「えいっ、かぶっちゃおう!」と、頭に乗せて歩いたのがきっかけで、それ以来、地下歩行空間でも地下鉄でも、時々かぶっているとか。そのエピソードだけでも、もうスタッフの間で笑いが風船のように弾け、明るく楽しい収録だった。
 終了後も、その「カエルくんのまま」の横田さんをエレベーターまでお見送りしたが、すれ違う社員たちの反応が面白かった。100%笑顔。「こんにちは。お疲れさまです」の声が明るい!普通の格好をしたお客様とすれ違う時には無い、何かが破られた明るさだ。
 ひとりが「道化」役としてハートをオープンにした途端、見知らぬ人のハートもオープンにするのだと、一瞬で見せて貰った瞬間。

 横田愛さんの仕事は、そう「道化師」。欧米で言う「クラウン」だ。

横田愛さん NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会の養成や研修を受け、北海道で「ホスピタルクラウン」の認定第一号になった女性。小児病棟などで笑いを届ける活動をし、現在は、協会から離れてフリーの「クラウン」として、病院のみならず、お年寄りの施設や子供のイベントなどで人を笑わせる活動を独自に続けている。

 「ホスピタルクラウン」と言えば、広めたドクターとしてお馴染みなのが「パッチ・アダムス」。このインタビュー前に、私はもう一度DVDで、ロビン・ウィリアムズ主演の映画を観てみた。
 パッチ・アダムスことハンター・アダムスが、なぜ、病院に「道化師・クラウン」が必要と思い立ったのか。彼自身が自殺願望を治すために自主入院した病院で、同室の、やはり心を病んだ患者を、ユーモアでより良い方向へ導いたという経験がきっかけだったという。
 誰かの心を少しでも救えたことが、自分でも何か出来ることがあるかもしれないとの気づきに繋がり、生きる力がわいてきたのだ、と。
 人の力は無限大だ。誰かを笑わすことで、誰かと一緒に笑うことで、誰かが元気になることで、自分の中のまだ見ぬ力が引き出されるのだ。

 収録を終えてマイクのスイッチを切った時に、横田さんからぽろりこぼれた言葉。
 「私も笑うことを忘れていた時期があるから、どれだけ笑いが大事かがわかる」と。
 聞けば、お子さん2人を抱えて離婚を決意したとき、子供を育てること、生活をしていくことに必死で、笑うことなど忘れていたそう。保育園の先生に、「この頃お子さんが笑わないけれど」と言われてはっとした横田さんは、子供と一緒に笑う楽しさを共有しようと出掛けた先で「クラウン」のショーに出会い、その温かい笑いに接したことで、自分の中の何かのスイッチが入ったのだそうだ。
 「そうだ、私も誰かに笑って貰える自分になろう」と。

 そういえば、日本でお馴染みの道化師「ピエロ」のメイクには、目に涙が描かれている。
 自分の悲しみを隠して人を笑わせるから、深い人間味がにじみ出て、笑いとともに愛が伝わるのだ。
 人間って愛おしいな、尊いなとつくづく思う。
 そして、自分がどんなに辛い状態でも、触れ合う人を笑わせたり、喜ばせたり出来る人というのが、人としてたくさんの宝ものを持っているのかもしれないと、改めて気づかされる。
 「クラウン・キラリ」として「道化師」を続けている横田さんと話していて、「何かしてもらう」のを待っているより、「してあげられる」ことを探していくことで、人は何倍にも生きられるのだと感じた。

 しぼんでしまった風船を前に泣いていても、何も変わらない。
 空気の抜けた風船は、ただのゴムのカケラ。空っぽのココロ。
 膨らますのは誰でもない、自分。
 ひとつひとつ丁寧に空気を入れて、ひねったりねじったりしているうちに、ピンクの花にもなるし、黄緑色のカエルくんにもなる。
 それを見た誰かが元気な笑顔になってくれれば、それは自分自身の笑顔をも引き出すパワーになるだろう。

 膨らまそう、ひとりひとりの中にある、笑いの詰まった色とりどりの風船。

(インタビュー後記 村井裕子)

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