10月2日放送

 2002年に上映された映画「ベッカムに恋して」。
 邦題の印象はかなりポップで軽めだが、人種差別、性別、国家で違う文化風習のあり方など様々な視点が織り交ぜられた感動作品だ。
 インド系イギリス人の女子高校生がサッカーの面白さに目覚め、インド系に対する差別や女子がサッカーをするという偏見など幾多の壁にぶつかりながら、アメリカのプロリーグを目指して突き進むというのがストーリー。
 インドの宗教観に則って厳格なしつけをしてきた母親にとっては、娘がサッカーをするなど「家族の恥さらし」である。
 「女の子が短パンはいて脚見せてサッカーなんて、とんでもない!」
 「そんなことより、おいしいチャパティ(インドの主食のパン)の焼き方でもおぼえなさい!」と大変な剣幕で叱りつける。
 サッカー大好き少女である主人公の前には「No more football!」を押しつける幾多の「ディフェンス陣」が立ちはだかるのだ。厳格な宗教の教えという名の、女の子のくせにという世間という名の、国の違いという名の、何層にも重なった強固な守備陣。そんな中を、夢を抱いた小柄なサッカー少女が、古びた慣習に風穴を開けるような爽快なシュートを決めていく。
 原題は『DEND IT LIKE BECKHAM』。ベッカムのように、曲線を描いてゴールにボールを蹴り入れろ!というイメージか。
 人の夢を阻むものは、人の中にある偏見。だとすれば、「それは常識」と凝り固まっていた視点を外してみれば、もっと人は自由に力強く生きられる・・・そんなメッセージが受け取れるのではないかと思う。
 この映画の女性監督であるグリンダ・チャーダがインド系イギリス人。「国は違っても人間は同じ存在だ」という実体験からくる思いを作品に込めたという。

 翻って日本。なでしこジャパンの功績は大きい。
 「なんで女の子がサッカーを?」、映画の中のインド系イギリス人ほどではないが、そんな古びた慣習に颯爽と風穴を開けてくれた。
 後に続く、潜在能力を持つサッカー女子たちにどれだけ勇気と希望を与えてくれたことだろう。世の中の、目に見えない有象無象の「ディフェンス陣」を破って、何かを大きく変えるその瞬間に立ち会える幸せを、今年の女子サッカーなでしこジャパンはプレゼントしてくれた。

菅原怜菜さん 釧路のサッカーチーム「釧路リベラルティ」に所属する中学1年生、菅原怜菜さんがこれから進む先も、そんな先輩たちのおかげでこれからもっと変わっていくに違いない。
 男子チームと練習試合をした時、試合終了後求めた握手を無視され悩んだことがあるという怜菜さん。監督に相談すると、「今出来ることを一生懸命していればいい。必ず結果に繋がるから」と言って貰えて気持ちを切り替えることが出来た、と話してくれた。
 一言一言考えながら真っ直ぐ話してくれる彼女の言葉を聞いて、周りには沢山の支える大人がいるのだということ、サッカーという大好きなものを通して、人として何が大事かを身につけている、まさにその最中なのだということが伝わってきた。
 宝ものは「支えてくれる家族」であり、監督やコーチからは「感謝の心を持つことの大切さ」を教わっているという。
 人の夢を支えるのは、人。そう、周りの大人たちの、何ものにもとらわれない遙かなる視点なのかもしれない。

菅原怜菜さん 怜菜さんは、今後、サッカーの強い高校を目指し、ゆくゆくはプロで食べていけるようになりたいと、夢を語ってくれた。
 目下、右足だけではなく、左足でもシュートが打てるようになるようになりたいと集中練習しているとか。その鍛えた足で、これからいくつも立ちはだかるであろうディフェンダー達をくぐり抜け、まだ見ぬ未来をも切り開くようなアスリートを目指してほしいと思う。
 BEND IT LIKE…NADESHIKO!!

(インタビュー後記 村井裕子)

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