7月10日放送

坂本純科さん ヨーロッパでエコビレッジという暮らし方を学び、北海道でも、人と人が支え合い、大量生産・大量消費ではない持続可能な社会を作っていきたいと、長沼町でエコビレッジ塾を開設している坂本純科さん。

 何か、あの時があったから今の自分があるという、大きく自分を変えた出来事はありますか・・と伺うと、20代の頃のパラグライダーの事故をあげてくれた。
 肝臓破裂の大けが。死と隣り合わせの体験がターニングポイントだったそうだ。
 「二度とあんな経験はしたくないけれど、あの、体の全く動かない時期を過ごしてみて、実感として体の弱い人や不自由な人の気持ちが分かったような気がする。それまでも共同生活など率先してやってきた自分だったが、あの思いがベースとなったからこそ『人と支え合う暮らし』とか『弱い立場の人と共に支えながら共同生活をする』という今の活動に繋がったのだと思う。今の私を作ってくれたと思うとあの経験は宝ものである」と。 
 一心に何かに向かっている人には、ターニングポイントがある。
 自分の力に気づいたり、失敗から学んだり、生き直しを計ったり。
 「個々に降りかかる出来事をどう受けとめ、どう生かすか」ということ自体が、ひとりひとり試されているのかもしれないと、この頃よく思う。
 そういう人の共通項は、自分のやるべきことを楽しんでいる。そして、しなやかだ。しなやかということは、いざとなると強い。
 坂本さんも、「降りかかった困難をプラスに変える力」を自分の中に見つけ、「不幸と思えるような出来事から学びを見つけ、前に進む、ブレイクスルーの発想法」を原動力の中に持っている人だ。

坂本純科さん 坂本さんが新しい自分を求めて、公務員を辞め、「これは面白そう」とフリーの立場で推進活動をしてきた「エコビレッジ構想」。話を聴きながら、私は、まさに「今」に通じるものをその取り組みの中に感じた。
 3.11後の私たちのこれからの暮らしに大いにヒントになる要素が含まれているのだ。「人が互いに支えながら暮らす社会作り」にしろ、「環境になるべく大きな負荷をかけない、持続可能な社会作り」にしろ、「『農』を取り巻く未来」にしろ、こんなに差し迫って問われていた時代はなかったはずだ。
 これまで「エコ」というと、そういうものが好きな人はどうぞ率先してやってくださいといったムードだったが、もう私たちひとりひとりが向き合わなくてはならないところに来ている。
 暮らしをダウンサイジングする中で、どう幸せを実感して生きていくか。
 この、二律背反とも思えるような課題に取り組む時、右肩上がりの暮らし方を追及し続ける中での方向転換は容易ではないが、坂本さんと話していると、そんなに右肩をいからせなくても、考え方ひとつで暮らしが楽しくなりそうと思えてくるから不思議だ。「何が本当に必要なのか」「本当は必要じゃないものにしがみついているだけなのか」・・そんなものが見えてきそうな明るさがある。
 きっと、人間が本来持っている力を取り戻す作業が必要で、それを無意識下で気づいてしまっている私たちは、その力こそ渇望しているのかもしれない。
 現代社会で疲れ果てた体力、精神力、知恵、人と力を合わせて繋がる力・・そういう「生きていく力」をもう一度取り戻すところに私たちは来ているのだと思う。「どう蘇らせるのか」のテーマは、衣・食・住の根本や、自分で考え判断する力、人間力など、坂本さんが主宰するエコビレッジ塾のテーマとシンクロする。

 私たちの国は、どう乗り越えていけるのだろう。敗戦以来のとてつもなく大きな「ターニングポイント」を。
 以前読んだ「ブレイクスルー思考-人生変革のための現状突破法」(飯田史彦著 PHP出版)の中にこんな一文があった。
 「『ブレイクスルー思考』とは、目の前にある壁そのものに価値を見出し、すべて『順調な試練』として受け止めることにより、その壁を自分の中に吸収しながら成長をはかり、一見閉じられているかのように見える状況を楽々と突破していくような発想法」
 よく言われる『プラス思考』は、「今後の展開についてよい方向に進むだろうと考え、自分の行く手をさえぎる壁をなんとかして乗り越えようとする」のだが、プラスに考えなくてはということ自体すでに心に負担となる。『ブレイクスルー思考』は「目の前にある壁そのものに価値を見出し、その壁を自分の中に吸収しながら成長をはかる」のだから、困難の捉え方と突破の仕方が違うのだというところが、目から鱗だった。

 ターニングポイントは、その受け止め方によって人を成長させ、しなやかにし、より強く変われる。
 日本という国のブレイクスルー。
 今、起きている困難は私たちに何を気づかせようとしているのか。
 そこからどんな価値を見いだすのか。
 立ちはだかる「壁」をどう吸収して、どう成長に結びつけていくのか。

 この国がどう生き直しを計り、何を幸せとしていくのか。
 ひとりひとりが自分の言葉で考えるほかにない。

(インタビュー後記 村井裕子)

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