4月10日放送

梅木あゆみさん ガーデナーである梅木あゆみさんにインタビューすることになり、私は随分昔に読んでとても好きだったチェコの作家、カレル・チャペックの「園芸家12ヶ月」という本を本棚から引っ張り出しました。
 園芸の魅力にはまってしまった人は、1月も2月も・・365日、土や種や苗のことで頭がいっぱい。どれだけ人は土いじりの中に喜びを感じられるかを、軽妙洒脱の文章ながら、いつのまにか哲学書を読んでいるかのような気分になる、深い人生観に彩られたエッセイです。
 チャペックおじさん曰く、「ある時、一本の花を植える。そのとき指のどこかに傷をしていて、そこからでもはいったのか、とにかく血液のなかに少量の土が入り込んで、一種の中毒、あるいは炎症をおこした。つまり園芸熱というやつにかかったのだ。・・・新たにとり憑かれた園芸熱が、うまくいくたびに助長され、しくじるたびに鞭打たれて、ますます嵩じていく。勃然と蒐集熱がおこり、それに拍車をかけられて、カタログに出ている限りの植物を片っぱしから全部育ててみようと思い立つ。」
 それは、やむにやまれぬひとつの情熱であり、凝り性の人間が何かやりだすと、みんなこんなふうになるのだ・・と。(「園芸家12ヶ月」小松太郎訳 中公文庫より)
 梅木さんに、そんなチャペックおじさんが語る「園芸熱」について問いかけてみると、「そうそう、まさにそう!凝り性なの、私!」という返事。熱い熱いインタビューが始まりました。

梅木あゆみさん 梅木あゆみさんは、地に足の着いた情熱家です。
 ガーデナーとしてのスタートは37歳。月形町に生産直販の園芸店「コテージガーデン」を設立したのが始まりでした。
 それまでは、4人のお子さんの子育ての日々でしたが、家庭菜園で種を蒔く喜びに目覚め、「花の種も蒔けばいいっしょ」とのご近所の農家のおばさんに勧められ、蒔けば芽の出てくる快感にめざめ、さらにはドライフラワー作りの楽しさを覚えていったそうです。
 まさに「園芸熱」にかかってしまった梅木さん、凝り性としての本分を発揮するのはここから。「英国の種苗会社のカタログを手にした私はその品種の多さに驚き、宿根草のありとあらゆる種が手に入ることに狂喜した」と、ある専門誌のコラムに書いた文章には、チャペックおじさんがしめしめと微笑みそうな蒐集熱にとり憑かれて今に至る経緯が綴られていました。

 凝り性と情熱でガーデナーという自己実現をした梅木さんに「これからの種まきは?」と伺うと、「花で北海道を元気にしたい」と。道内各地域の町から村まで、北海道はこんなにもいい所なんだという自信を取り戻すための手伝いを、花作りという役割でしていきたい、と熱く語ってくれました。
 「自分の場所に自信を持つ」という言葉が何度も出てきましたが、梅木さんご自身、自信の無い時期も過ごし、コンプレックスと向き合ったからこそということが、「支えとなった言葉は?」という質問の答えに表れていました。
 プロのガーデナーとして37歳の遅いスタート。やってきたことは主婦業ばかりと引け目も感じていたときに出会ったのが、イギリスのガーデナー、ローズマリー・ヴァレリーさんの「経験を経験する」という言葉。やはり4人の子育てをし、40歳過ぎてからプロのガーデナーとして活躍した彼女の「庭はね、経験を経験しなければだめなのよ」という表現に触れ、自分のそれまでやってきた子育てや家庭の仕事のあらゆる経験があって、いい庭も造れるのだと、一歩前に踏み出せるきっかけになったのだそうです。

 好きなことを一心に。
 時には凝り性で、情熱家で。
 「やってきたことに何の無駄もない」と考える前向きな切り替え力。
 そして、「何かを始めるのに遅すぎることはないのだ」・・と思えること。
 そんなひとつひとつの当たり前のことが自分も周りも幸せにするのだという、生き方の達人の法則のようなものを梅木さんと話していて改めて感じさせて貰いました。

 あなたは、あなたの人生で「どんな種を蒔きますか?」

(インタビュー後記 村井裕子)

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