卓田の「これ聴いてみればいいっしょ」 バックナンバー

2023年12月

12月31日の1曲

「スクリーンに雨が降る」高橋研(1979年)

卓田のひとこと

2023年の音タク的ニュースの一つと言えば、6シーズン目にした初めて生でゲストをお迎えしたこと。10月29日に、シンガーソングライター、音楽プロデューサー、作詞、作曲家など様々に活動する高橋研さんをお迎えしました。その時にはお話しできなかったのですが、実は高橋研さん「役者」というもう一つの顔をお持ちでした。1979年に公開された角川映画『戦国自衛隊』に出演していたんです。ストーリーは、大演習に向かった自衛隊が戦国時代にタイムスリップしちゃって、そこに武田信玄との川中島の戦いに向かう長尾景虎が現れるというSF映画。研さんの役柄としては、妻と子供を残してタイムスリップしてしまい、最初は楽観的だったものの、多くの隊員や武器を失うにつれてビビって弱音を吐き始め、最後は大量の矢を打たれて死亡するという臆病で人間味ある、本編の悲劇性を体現する役。この映画のサウンドトラックでは研さんも何曲か手がけていて、この曲は、数ある研さんの曲の中でも、私が特に気に入っている曲です。

12月24日の1曲

「TERMINALまでのEVE」中森明菜(1984年)

卓田のひとこと

1984年にリリースされたクリスマス企画ミニアルバム『SILENT LOVE』に収録。このコーナーでこのアルバムから取り上げるのは、実は2回目です。このアルバムは、12月12日からクリスマスまでのショート・ラブストーリーに沿ったコンセプト・アルバムで、そのショート・ストーリーを手がけたのが、今年11月24日に73歳でお亡くなりになった、作家で作詞家の伊集院静(作詞家の時は伊達あゆみ)さんでした。ストーリーは、主人公の男女2人が横浜、横須賀を舞台に恋に落ちていく話で、3曲目のこの曲では、彼がクリスマス・イブに海外へ旅立ってしまうことになり、空港へバスで見送りに行くというシチュエーション。「赤いドレスに気づいて」とか「電話はいやよ。可愛い手紙が欲しい」とか、とても意地らしい女性像が描かれています。個人的にこの曲で気になったのは、明菜ちゃんの歌唱法。このアルバムがリリースされた1984年12月といえばシングル「飾りじゃないのよ涙は」がリリースされた後で、ちょうどアイドル期からアーティスト期へ進化しつつあった時期。歌い方もウィスパーボイスやロングトーンでのビブラートなど、後に明菜ちゃんの代名詞となるテクニックを使い始めた頃ですが、この曲に限って言うとちょっと懐かしい歌い方というか、割とストレートで甘い声の出し方をしていて、敢えてちょっぴり幼さの垣間見られる可愛らしさを表現している感じがします。

12月17日の1曲

「ブルー・クリスマス」南沙織(1975年)

卓田のひとこと

私が小学4年の時にリリースされたクリスマス企画盤EP「シンシアのクリスマス」に収録された1曲。当時日本の一般家庭にもクリスマスの風習は定着していましたが、日本のポップスでクリスマスをテーマにしたオリジナル曲が殆どなく、トップアイドルがクリスマス企画盤をリリースするということはかなりレアな時代でした。オリジナル曲は収録されていなくて「きよしこの夜」「サンタが町にやってくる」「ジングル・ベル」といったクリスマスのスタンダードナンバーのカバーで構成されています。「ブルー・クリスマス」は元々アメリカのカントリーソングだったものを1957年にエルヴィス・プレスリーがカバーし有名になった曲で、多くのアーティス田がカバーしていますが、当時のアイドル歌手がこの曲をカバーしたのは、かなりのセンスかなと思います。さらに驚くべきは、編曲を担当しているのが、後にシティポップ・ブームの立役者となる林哲司さん。アレンジャーとしてまだ駆け出しだった頃の林さんの編曲も聴きどころです。南沙織さんのボーカルも非常に艶やかで、元々洋楽ポップスのヒットであるこの曲とマッチしています。

12月10日の1曲

「冬将軍」ALFEE(1979年)

卓田のひとこと

THE ALFEEといえば、今年結成50周年、来年デビュー50周年の人気ロックバンドですが、「メリーアン」でのヒットまで長い下積みの時代が続いていました。私は個人的には売れる前のアルフィーも結構好きで、特に坂崎幸之助さんが1980年からパーソナリティを担当していた「オールナイトニッポン」の火曜2部を毎週聴いていて、そのラジオがきっかけでアルフィーの曲も聴くようになり、「冬将軍」もその頃気に入っていた曲の一つです。当時、何とかヒット曲を出そうということで「今年は寒くなるぞ」と意気込んでこの曲をリリースしたアルフィーでしたが、この年は記録的な暖冬となりこのシングルもヒットチャートにかすりもせず「北海道でだけ少し売れた」…というのは、ライブでこの曲を演奏する際には定番のネタになっています。とはいえ楽曲そのものは非常に良い曲で、近年のコンサートでこの曲を演奏した映像を見ると、歌唱力も当時より格段にアップしていて、3人のオーラもあり、ブレイク後にこの曲をリリースしていたら普通に大ヒットしただろうな、と思います。特に最初のサビの桜井さんのパンチの効いたボーカルから、Aメロの高見沢さんの甘い声に切り替わるギャップ。2人のボーカルのコントラストが堪能できる曲になっています。

12月3日の1曲

「Young oh! oh!」岡村靖幸(1987年)

卓田のひとこと

1stアルバム「yellow」に収録されている曲です。(のちにシングルカット)このアルバムは当時、友達が買ったレコードを借りて聴いたのが最初でしたが、まず1曲目の「Out of Blue」がカッコイイなと思いました。続いて2曲目に収録されていたのが「Young oh! oh!」で、ちょっと大人な感じの「Out of Blue」と全く違う、まさにタイトル通り若さ爆発って感じのノリノリのナンバー。ちなみに「Young oh! oh!」と言えば、かつて明石家さんまさんがブレイクするきっかけになった大阪MBS制作のテレビバラエティを思い出しますが、実際、岡村靖幸さんもこの番組のファンだったようです。曲の話に戻りますが、この曲はとにかくギターのカッティングがカッコよくてイントロから踊り出したくなっちゃいます。この曲があまりにも好き過ぎて、30年ほど前に帯広放送局時代、ラジオの十勝ローカル番組のオープニング曲に使っていたこともありました。この曲を広島でのライブで親友の尾崎豊さんと熱唱しているシーンもYouTubeで見たのですがこれも凄かったです。

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