ほっかいどう元気びと

日曜日 あさ9:30-9:50

2020年2月16日のゲスト

森 大翔さん
「ヤング・ギタリスト・オブ・ザ・イヤー2019」優勝/札幌厚別高校1年
森大翔さん

羅臼町出身 16歳。
小学生の頃はサッカーや地元の“ふるさと少年探検隊”で活発に活動し、6年生の時にギターをはじめる。
中学卒業後は道立高校で唯一芸術系列がある札幌厚別高校に進学し音楽を専攻。
去年、16歳以下のエレキギター世界大会「ヤング・ギタリスト・オブ・ザ・イヤー2019」にエントリーし、約100人の中からロンドンで開催される上位3人による決勝に進出。オリジナル曲「Eureka(ユリイカ)」を演奏し優勝した。

radikoのタイムフリーを使用すると、放送終了から1週間ほど番組を聴くことができます。

村井裕子のインタビュー後記

森大翔さん 今回の『ほっかいどう元気びと』は、去年ロンドンで行われた「ヤング・ギタリスト・オブ・ザ・イヤー2019」で優勝した札幌の高校生 森 大翔(やまと)さん 16歳。故郷である知床羅臼の大自然に磨かれた感性をオリジナル曲に込め、そのストーリー性とドラマチックな演奏が高く評価されたという。芸術系列の学科がある札幌厚別高校で音楽を学ぶために羅臼を離れ下宿生活をする中で、夢を育むその思いを訊いた。

 そもそも、そんな世界的な大会に参加することになったのは、小学6年から覚えたエレキギターの演奏をSNSで動画配信していたところ、それを見た海外の人が16歳以下を対象にしたこういう大会があるから是非出てみたらと連絡してきたのが始まりだという。それならば・・・と自作の曲「ユリイカ」をこれもまたネットでエントリーしたら、約100人の中から動画審査で3人に絞られ、ロンドンの舞台で演奏して見事優勝。まるでドラマや映画のようなこの出来事を森さん本人も夢のようだったと話す。
 オリジナル曲に込めたのは、故郷羅臼への思い。カモメの鳴く大好きな海を想像してフレーズやコードを工夫しながら作ったとのこと。15歳まで過ごしたその場所の名前をほんとうに大切な“宝もの”のように発音する森青年。羅臼で何が育まれたのかを訊くと、まずは「感性」と表現。ふるさと少年探検隊で知床の自然の中、冒険心一杯でいろんなことに挑戦をし、子供達はもちろん大人達とも沢山話したことがいい思い出と続ける。「今、それを思い出すことがけっこうあって不思議な気持ち。悲しいような、温かいような・・・そんな“哀愁”といったものが僕は好き。いろんな音楽を聴いても、懐かしさや温かみのある曲が大好き」などなど、故郷を遠く離れて暮らしているからこそ込み上げてくる思い、そして、創作への思いを言葉にする。
 そもそも、羅臼育ちの少年がどんなふうにギターと出会ったのかを訊くと、“アニキ”と慕う従兄弟がギターを弾いていたのがきっかけだったという。・・・収録後の話では、漁業などの傍ら、バンドを組んだり自宅にミニスタジオを作ったりする人もいるほど“羅臼の音楽シーンは熱い”とのこと。では、どうやって弾き方を覚えたの? コードやテクニックなどは人に教わらなければ難しいはずという思いで訊くと、涼しい顔で「YouTubeを見て覚えました」。では、作曲は? 「それもネットで見て、感覚で繋いでいる感じですね」。そして、とにかく動画で上手い人の演奏もよく聴くのだそうだ。その森さんの感性が面白い。「自分が好きなのは、歌詞のない音楽だけなのに“自然”が思い浮かぶもの。初めて聴くのに、なんでこんなに懐かしいんだろうと思うもの」。例えば、誰かが故郷の自然を思って作った曲を、全く違う故郷を持つ人が聴いた時でも“うわぁ懐かしい”と自分の故郷を思い出して涙が出るような“繋がっている感”。森さんは、それを研究したいと呟く。音楽の面白いところです、と。
 そんな森さんがエレキギターで自作の曲を奏でるようになって変わったことは? と問いかけると、間髪入れずに「それこそ、“自然”に目を向けるようになったことがほんとに大きい」と気づきを言葉にする。ギターを始める前はサッカー少年、冒険好き少年だったが、音楽を始めてから、他の曲にも触発されて“自然”を感じられるようになったのだそうだ。
森大翔さん 人には“意識”のスイッチのようなものがある。何かの偶然で“音楽”が自分の奥深くに入ってきたことで、それまで当たり前のように身のまわりにあった“自然”という圧倒的存在に対し“意識”のスイッチが入ったのに違いない。人は表現という手段を得ると、それをフィルターにしてそれまで見えていなかったものを見る、聴く、覚醒する。10代でそんなきっかけを手にするということは、一生の“宝もの”を見つける旅の切符を手に入れたようなもの。よしんばそれ自体を職業にしなかったとしても、見つけたことで広がる視野はその後の人生を根本から支えるものになるだろうし、エネルギーを注いでポテンシャルを高めた経験則は新たな何かに向かう時の強靱な武器になるだろう。
 森さんの場合、今楽しくてしょうがないという音楽を通して何を叶えていきたいのだろう。問いかけると、「まずは通っている高校が音楽を学べるのでギター以外の弦楽器もきちんと学び、自分が目標とする“初めて聴くけど懐かしい、温かい”と感じるサウンドを目指していきたい」とのこと。今はとにかく、音楽を通じていろんな人といろんな場所で触れ合って、沢山の音楽を感じたい、そして、羅臼の人達も応援してくれているので可能性を信じてポジティブに頑張りたいと、素直な思いを最後まで楽しそうに聞かせてくれた。

 収録後に、ありがとうと伝えると、「楽しかったです」と森さん。どういうところが? と訊くと、「言葉にしてみたら、感じていたことが再認識出来たところです。僕はこういうことを感じていたのか、と」。それはどういうこと? と尚も訊くと、「やっぱり“羅臼が好きだ”と気づきました」とにっこり。私も気づく。故郷を大好きと言える青年と向き合うと、なんとも言えず嬉しく、懐かしく、温かく、切ない気持ちになるということを。故郷の海が大好き、語り合った友人達が大好き、そこに住む人達が大好き・・・そんなふうに真っ直ぐに言える素直さは遙か遠くの東の大地でどんなふうに育まれたものなのだろう。雄大な景色と心情とを重ねて想像してみると、尚も気持ちが優しくなるような思いがした。

 それにしても、インターネット時代だ。世界は“すぐそこ”だ。知床の勉強部屋からも、札幌のリビングからも瞬時に繋がれる。自分の表現や思いを自由に発信し、そこから思いがけない何かが始まる可能性に満ち溢れている。
 インターネットがこんなふうに定着するかなり前、尊敬する人生の先輩がラジオ番組を担当している私に贈ってくれた言葉を思い出す。
 「ラジオで何かを伝えるということは一通の“封筒”を持つということ。その“封筒”を大切に。そして、何より、そこに何を込めて届けるかをしっかり考え続けることが大事」。
 今は、YouTubeやTwitterで多くの人が“封筒”を持ちうる時代だ。意見であれ思想であれ自己表現であれ才能であれ、皆が何かを届けることが可能な時代なのだ。
 だからこそ、その手にした“封筒”にどんな“手紙”を入れるのかが益々問われ、試されていくのだろうなと思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

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パーソナリティ

村井裕子 フリーキャスター/声と言葉の自己表現「村井塾」主宰

HBCで18年間勤務の後、フリーとして活動。現在は放送や朗読表現活動の他、札幌や帯広など道内各地で「話し方」「朗読」講座を通し、声と言葉の自己表現による人の魅力作りにも尽力する。

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