ほっかいどう元気びと

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2019年12月29日のゲスト

坂本 純科さん
NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト 理事長
坂本純科さん

埼玉県出身 52歳。
北海道大学農学部を卒業後、札幌市環境局緑化推進部に勤務。
2006年から3年間ヨーロッパに滞在し、様々なエコビレッジを訪ね、帰国後2009年、長沼町に「エコビレッジライフ体験塾」を開設。
2012年に拠点を余市町に移し、「余市エコカレッジ」を開講。地域の人たちとつながりながら持続可能な社会を目指している。

 

村井裕子のインタビュー後記

 今年も残すところあと3日。2019年を振り返ってみると、心に留め置かなくてはならないメッセージがいつもにも増して発信された年だったような気がする。16歳の環境活動家のグレタ・トゥンベリさんからは、大人たちの無策で地球温暖化が進み、自分たちの未来が奪われるとの怒りに満ちた提言が。広島・長崎を訪れたフランシスコ教皇からは平和を希求するためには武器を持ってはならない、核廃絶を進めなくてはならないとの強いメッセージが。そして、世界が足並みを揃えて地球規模の取り組みを進める「SDGs(持続可能な開発目標)」に関しても多方面からの提言が聞かれた。あらゆることが“待ったなし”の状況に、果たして私達は何が出来るのかという問いがいつも以上に突きつけられたが、改めて、“それらの課題に対しての明確な答えが見つかっていない現実”を思い知らされた年だったのではないかという気がしている。かろうじて分かっていることは、とにかく、個人としても自分達の足元から出来ることを始めなければ何も変わらない・・・ということ。民間という“普通”の暮らしを生きる人たちの真摯な思いは世の中の“潜在力”そのもの。それをひとつひとつ言葉に替えて伝え続けることで何らかのヒントが共有出来ないか・・・この番組としてもそんな思いでひとりひとりにお話を伺っている。
坂本純科さん 『ほっかいどう元気びと』、2019年を締めくくる29日のゲストは、2011年7月に出ていただいたNPO法人「北海道エコビレッジ推進プロジェクト」理事長 坂本純科さん 52歳。今でこそ、“持続可能な”というキーワードはあちらこちらで聞かれるようになったが、既に前回のお話の中でこの言葉が“目指す暮らし”の重要なキーワードとなっていた。いわば、“持続可能な”取り組みの北海道のフロントランナー的な人。「もう一度会いたい元気びと」として、これまで継続させてきたエコビレッジへの思いを伺った。

 坂本さんが北海道でエコビレッジをスタートさせたのは2009年。長沼町に「エコビレッジライフ体験塾」を開設し、2012年に余市町に拠点を移して、農のある暮らしを基軸に環境に優しい暮らし方を実践している。エコビレッジというのは、エネルギーや食糧などを通した“持続可能な暮らし”を様々な視点や技術、アイディアを持ち寄って作ることを実践する場。そこに住むだけではなく、働く、通う、農産物を購入するという関わりも生み出し、そこから社会へ暮らし方を提案していく“実験の場”のような役割・・・そんな解釈でいいですかと改めて坂本さんに問いかけると、その基本に加えて、以前の会員中心の活動から、余市エコビレッジでは修学旅行の学生や外国人の研修生や留学生、宿泊体験の一般の旅行客の受け入れも可能にしたことでターゲットが広がり、さらに、地域の農家の人達が運営に関わってくれるようになって活動も広がったのだと変化を付け加えてくれる。
 自給自足の農業から産業としての農業を目指していくために地元の農家の人達は得難い“先生”。例えば、余市ならではのブドウ栽培を教わって収穫まで手掛けた後は委託でワイン醸造まで手がけ、販売するというコミュニティビジネスを生み出す試みも始めているのだそうだ。「農家さん達は農業のプロであるけれど、他にもそば打ち、餅つき、漬け物の仕込みなどいろんなことが出来る。若いボランティア達が農作業はもちろんいろいろな手伝いに行くことで地域と一体感が出てきたことが最近の一番の成長です」と様々な人によって試みが進展してきたことを嬉しそうに話す。
坂本純科さん 坂本さんは近隣農家と手を携えたそれらの実践を、「訪れる人達が学んだり、体験したり、気づいたりする“ラーニングツーリズム”」と呼び、環境に負荷のかけないエコの工夫をこらした宿泊棟を体感することからも今の暮らしを見つめるきっかけにしてもらえればと語る。そして、そういう取り組みから伝えたいことは? という問いに、「エコな暮らし、自給、農的暮らしというのはひとつの大きなテーマだが、継続して10年。いいアイディアとして他にも普及していかないと一部の“酔狂な”取り組みで終わってしまう」と笑い、「いかにいろんな人達に真似をして貰えるものにしていくか、一定の快適さやデザイン、おしゃれ感も捨ててはいけないと思う」と続けながらも、「でも、快適さを過度に求め、より利便性を、より効率をと続けたあまりに環境ダメージが発生したので、今それぞれが出来る範囲のちょっとした負担こそが豊かな暮らしに繋がるのだということを伝えたい」と、まさに、超スピードで便利な生活が構築された結果生じた歪みに対して再度バランスを取りながら生活することの大切さを言葉にする。さらに、“持続可能な”というテーマに対して語られた、「自然環境だけ保全すればいいわけでもない。経済の持続可能性も大事だし、人間も折れたり対立したりしては元も子もない。人も、地域の繋がりも持続可能性のテーマのひとつ」という言葉、そして、「自分達が日々やっているのは、SDGs全部です」という言葉に、実践してきた人の説得力がにじみ出ていた。

 収録後、坂本さんはこれからの若い人達への期待を口にする。エコビレッジという新しい試みが元々そこにいる地域の人達と手を携えて信頼関係で活動することが出来ているのは、毎年のべ600人ほどにのぼる20~30代のボランティア達が、近隣の農作業を手伝ったり、バス停の修理やお祭りの準備といった地域の仕事を率先して手伝ったりする姿勢が受け入れられてきたからでもあると再度強調する。「若者達がボランティアを終えて帰る日にはもうお母さんのような気持ちになっている」と話す坂本さん。そのひとりひとりが自分の場所に戻ってから、エコビレッジでの体験をそれぞれの工夫で活かし、広げていってくれることが楽しみでもあり、願いなのだと語っていた。
 改めて、腑に落ちる。“持続可能な”というキーワードはまずは“人”に当てはめることで本来目指すところに近づいていくのかもしれない、と。大所高所から世界を変えることは難しいが、暮らしの中でひとりひとりが出来ることを始めていくことは可能と話す坂本さんの言葉を聞きながら、何はともあれ、人は、人に対して、どんなより良き“種”を蒔いていけるかを考えることの重要さを改めて感じさせていただいた。

 今年も1年『ほっかいどう元気びと』を聴いていただき、ありがとうございました。
 新しい年が心豊かな1年になることを祈り、思いの力、言葉の力をお届けしていきます。
 皆さま、どうぞよいお年をお迎えください。

(インタビュー後記 村井裕子)

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