ほっかいどう元気びと

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2019年12月22日のゲスト

青山 則靖さん
キッチンサポート青 代表
青山則靖さん

帯広市出身 46歳。
子どもの頃からモノづくりが好きで、陶芸家を目指し美大を受験するが夢叶わず、その後は飲食店に勤める。
やがて、オーナーシェフという存在を知り、本格的に調理の道をめざし修業。また経理や経営についての基礎も身につける。
2006年、自身のスタジオ「キッチンサポート青」を設立。メニュー開発、レシピ製作、料理教室など幅広く活動中。
著書に『青ちゃんの解決レシピ 今さら聞けない料理の基本』。

 

村井裕子のインタビュー後記

青山則靖さん 今回の『ほっかいどう元気びと』は、フードプロデューサーで、「キッチンサポート青」代表の青山則靖さん 46歳。“青ちゃん”のニックネームでテレビや新聞紙上などでレシピを紹介し、料理を作る楽しさを広めている。“料理人”ではなく“料理を伝える人”としての役割、そして、レシピを通して伝えたいことを伺った。

 “青ちゃん”と言われて思い浮かぶイメージは、テレビの料理コーナーで“明るく元気に料理を教えるおにいさん”。そのキャラクターの印象から、きっと手がける料理はこれから覚えようとする若い人向けなのだろうなと勝手に思っていたが、改めて、おおっ!と思ったのは新聞に紹介されていた「春巻きの作り方」を目にした時。湿り気のある具を置く真ん中の部分には予め4等分に切っておいた別の皮を敷いて“補強する”というコツが図解されており、「そうすると皮がシナッとならないで、サクサクした春巻が出来る」といった説明になるほど!と納得させられた。真ん中がべちゃっと茶色くなる家庭春巻きのお悩み解消だ。さらに、グラタンに入れるマカロニは予め1時間程水に浸けておいてから、水を切って具と一緒に炒める(先に茹でない・・・!)というコツに出会った時にも目からウロコ。そして、“肉を焼く時には冷たいフライパンにのせてから点火”などという逆転の発想もこれまでの“常識”には無かったこと。長年料理を作ってきていろいろなことは分かっているつもりでも、こんなふうに基本も“更新”されるものなのだなぁと再認識させられた。
 スタジオに入った青山さんにそんな発見をまず伝えると、「僕のレシピはまず再現しやすいということ。基本をしっかり踏まえながらも常識にとらわれないということを大事にしています」と、でんぷんやタンパク質への熱や水分の加え方は科学に則っていれば順番が逆でも可能だし、それによって手間が省けるようであれば工夫として提案していきたい旨を一気に説明してくれる。収録で最初に問いかけた「青ちゃんレシピの強みは?」に対する答えも「再現力の強さ」。調味料などの分量も1:1などと表示して分かりやすくするとか、以前に作ったメニューであってもこのレシピならもっと美味しく出来るのではないかと思ってもらえるような“再構築”のアイディアを盛り込んでいるとのこと。
 去年出版された『青ちゃんの解決レシピ 今さら聞けない料理の基本』(エイチエス)にも自筆イラストで丁寧に材料の切り方や料理手順が描かれているが、元々は陶芸家を夢みて芸術大学を目指していたこともあり、デッサンはお手のもの。和食料理屋での修行後にビヤホールに勤めた時に、アルバイトスタッフ達が等しく同じ料理を作れるようにとレシピをイラストで伝えることを始めたのだそうだ。「僕の料理は70点の料理。誰が作っても70点ということが大事」と笑い、天才的な才能より、「当たり前のものを美味しく作る。ベーシックなものを平均以上で作る。・・・僕はそちら側なんです」と、“料理を伝える人”としての自己分析の言葉が軽妙に繰り出されてくる。

青山則靖さん 食に関して大事にしていることは、「食材を無駄にしないこと」と言い切り、「そのためには残されてしまうようなまずいものは作らないこと」と続ける。そして、「いい食材か悪い食材かとどうしても優劣判断をしてしまいがちだが、食材にいい悪いはないと僕は思っている」と言い、「例えば、硬い肉なら料理によって軟らかく美味しくすればいい。食材を悪く言うことは、お肉だった“その前”を想像していないこと」と核心を突く。「動物であり、命である」と。「食材になるその前を想像出来ないことがすごく嫌。だから、美味しくしてあげたい。その方法を分かりやすく伝えたい」と熱を込める。今、北海道の料理研究人として力を入れているというエゾシカ肉の普及に関しても、やはり、根底にあるのは同じ。「命をいただく」という思いだ。「青ちゃん流」とは、「難しくしないこと」という言葉で締めくくっていたが、まずは、必要以上に食を難しくせず、“美味しく作って、食べる”ことを楽しむことでそこから気づくことも沢山あるのだということを改めて感じさせてもらえるお話だった。

 初めましてと会話を始めてから、収録中も収録後も青山さんの話し方は抑揚があってとても楽しげだ。「自分は楽観的。上手くいかないこともそれも勉強だと思って・・・あはははは」と笑う。なぜ、すべてを肯定してものごとを進める考え方になったのかをこぼれ話として訊いていると、修行をしていた時に、されて嫌だなと思ったことは自分はやめようと行動してきたと言う。なぜ仕事がしづらいのか、なぜ嫌な気持ちになるのか、指示がわかりにくいのはなぜなのか、自分ならどうするかと考えた結果そうなった、と。尊敬出来るところは取り入れ、逆にこういうことはしないなどと体験から学んでいるうちに、「あれこれ否定するのではなく、肯定する考え方をすると何でも楽しくなる」というやり方が身に付いたという。
 「いろんなことが起こっても、何でそうなったのかなと考えると、全て面白くなる」と話す青山さんの言葉を聞きながら、今ちょうど読んでいた栗山英樹さんの『栗山ノート』(光文社)の中に同じような思考法が書かれていたことを思い出す。日本ハムファイターズの監督である栗山さん、例えば、春季キャンプに出発するチャーター機が故障で2時間遅れることになった時にどうするかというと、苛立ちを募らせるのではなく、「この2時間は必要なものなのだろう」と受け止め、その日のノートには「これも吉兆か」と書いたとのこと。
 それは、「自分たちにとって不都合なことや困ることはマイナスではない。自分たちの未来にプラスに出来るのだ」という考え方。「マイナスなことが起こる度に気持ちを尖らせていたら、心の健康を害してしまう。・・・長いシーズンではこんなこともあるのだよ」と自分に言い聞かせるやり方を「一日は一生の縮図なり」という項で書かれていた。
 生きていることにはすべてに意味があり、そう考えるとすべてが面白い。・・・何かに一心に取り組んでいる人達は、分野は違っていても大概そんな境地を目指していることに気づかされる。目の前に起こるひとつひとつの出来事に一喜一憂するのではなく、それを肯定の意味に変化させていくような生き方は自分も救うし、周りをも救う。ものの見方、言葉の用い方ひとつで世界は変わる。いずこの業界も大変な時代だと言われる昨今だが、そのような中でも大事なのはひとりひとりのそんな智慧。何かが上手くいかなくても、栗山さんのように「それはいいことの前ぶれだ」と、青山さんのように「それも勉強だ」と心を肯定モードにセッティングして、来る新しい年を迎えたいものだと思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

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