ほっかいどう元気びと

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2019年12月1日のゲスト

柳 真也さん
ジャズベーシスト
柳真也さん

和歌山県出身 45歳。
愛知県の大学在学中にエレキベースをはじめ、22歳の時にウッドベースに転向。プロのベーシスト、故・市ノ瀬美音(いちのせ・よしね)氏に師事し、26歳の頃から会社員として働きながら、名古屋のジャズクラブを中心に本格的に演奏活動をスタートさせる。
2004年に北海道に移り住み、2014年にサッポロ・シティ・ジャズ実行委員会がプロデュースするビッグバンド「札幌ジャズアンビシャス」に加入。自身が率いる「柳真也クインテット」でも精力的に活動を続けている。

 

村井裕子のインタビュー後記

柳真也さん 今回の『ほっかいどう元気びと』は、札幌を拠点に活動するジャズベーシスト 柳 真也さん 45歳。札幌ではジャズ熱が年々高まっており、この番組でも今年8月に北海道在住の世界的ジャズピアニスト デビッド・マシューズさんにお話を伺ったが、そのマシューズさん率いるビッグバンド「札幌ジャズアンビシャス」で柳さんはウッドベースを担当。自身がリーダーを務める「柳真也クインテット」を通してもジャズシーンを盛り上げる活動を続けている。ジャズという音楽から伝えたい思いを訊いた。

 音楽、特にジャズというジャンルは全く門外漢の私。事前にまずは「ウッドベースとはなんぞや?」を調べるところから始める。弦楽器であることはわかるが、柳さんの資料のプロフィールの中に「ミュージックスクールで講師も務める。教えるのはエレキベースとコントラバス」とある。エレキベースは分かるにしても、コントラバス? ウッドベースとどう違うの? そこから調べると、面白い面白い・・・楽器の世界も深くて興味深い。コントラバスとウッドベースは同じ楽器だが、クラシック界ではコントラバス(弓で弾く)、ポップスやジャズ界ではウッドベース(弓でも弾くが、たいていは指で弾いて音を出す)と呼ぶとのこと。大人の身長以上の大きさで低音が特徴的。じゃ、チェロとどう違うの?・・・調べ進めると、チェロやバイオリンなどの「バイオリン属」とは違う「ヴィオラ・ダ・ガンバ属」に含まれるとのこと(!)・・・へぇ~そうなんだ。「○○属」って生物の分類みたいだ。
 柳さんをスタジオにお迎えして、そんなふうに調べてみたところからお伝えすると、「調べてくれたんですね?!」とその“属”の違いについて身を乗り出さんばかりに教えてくれる。とってもフレンドリー。ジャズプレイヤー、特にベース奏者は苦み走った雰囲気で寡黙・・・というイメージを勝手に作り上げていたが、「とにかくジャズを楽しんでみて!」というポップで明るい“気”が溢れるお人柄。ジャズをもっと知りたくなり、放送時間には限りがあるが想定していた以上の質問を沢山させていただいた。

柳真也さん 柳さんのお話の中で興味深かったのは、ジャズセッションでの“ベースの役割”は全体の中心で、樹で言えば「幹」のようなものということ。ウッドベースは、ステージ上ではほぼ真ん中に位置し、ピアノ、トランペット、サックスなどのあらゆる楽器の中心となる。役割としてはポップスやロックで中心となるドラムと同じようなポジションなのだそうで、ジャズはウッドベースが土台となって互いの音が引き出されていくとのこと。柳さんは言う。「ベースプレイヤーは上手いほうがいいに決まっているが、上手ければいいということではない。一音ボーンと出したら、それ以外、何もしない瞬間も絶対に必要」と。例えばピアニストやドラマーは表現者として前に出なければならない楽器だが、ベースプレイヤーは“見守る瞬間”もあると続ける。さらに、「上手くなることがベースプレイヤーとしてイコールかというとけっしてそうではなく、(大切なのは)“ベースプレイヤーになっていく”ということ」だと。精神的にもそれは大事であるということに最近気が付きましたとほんとうに楽しそうに思いを言葉にする。
 インタビュー番組を担当していて心が震える瞬間は、こんなふうに、人の思いが言葉になる時だ。目指したいところは“上手くなる”という高み以上に、「ベースプレイヤーになっていく」・・・というのはなんて素敵な生きる哲学だろう。それは、選んだ仕事に誇りを持ち、それに合わせて自分の価値を高めていくということ。「〇〇になっていく」の〇〇にそれぞれの職業を当てはめてみると分かりやすい。例えば、「“インタビュアー”になっていく」生き方を深めるとはどういうことだろうと考える。それは、人の思いに寄り添うことが出来るとか、人を尊敬出来るとか、深い思いを引き出せるための自分自身の“引き出し”を増やすとか、感受性と論理性を備えるとか・・・職業を通して“人としてなりたい像”が浮き彫りになってくる。
 柳さんのお話の「ベースプレイヤーは上手いほうがいいに決まっているが、上手ければいいということではない。一音ボーンと出したら、それ以外、何もしない瞬間も絶対に必要」という表現も、そのまま“インタビュアーの生き方”と一致するではないかとひとり納得。・・・「インタビュアーは上手いほうがいいに決まっているが、上手ければいいということではない。一言出したら、それ以外、何もしない瞬間も絶対に必要。そして、“言葉を待つ瞬間”を大事にする」。・・・あらゆる取り組みには共通項がある。インタビューによって様々な取り組みに重なり合う普遍的なものを浮き彫りに出来たら、“インタビュー哲学”をもっと深められるのかとワクワクする。
 柳さんが心に持つ“なりたいベーシスト像”は、「人と人を結びつけていく存在」。音楽は人と人が結びついていくツール。音楽を使っていろんな人が結びついていく手助けになりたいとのことだった。

 収録後、ジャズベーシストの柳さんにとって「音楽とは何か?」という大きな質問をしてみたくなり、訊いてみる。開口一番、「演奏する以外に、口で・・・ということですか?」と笑い、「どれだけ言葉を尽くしてみても、それは伝えられないなぁ」とミュージシャンらしい表現で答える。私の仕事は“思いを言語化”してもらうことなので・・・とさらにインタビューすると、柳さんも“それじゃあ”と俄然前のめりになって概念を言葉にしてくれる。
 「演奏する以外に伝える方法はないのだけれど、あえて言葉で、ジャズのキーワードで言うと、『ブルース&スイング』・・・ブルージーなハーモニーとスイングが伝わること。それがジャズです」
 そして、その“ブルージーなハーモニーとスイング”を伝える意味についてのディープな話に入っていきながら、ふいにとても分かりやすい答えが飛び出す。
 「もっと言うと、世の中の空気を動かしたい。ジャズライブで演奏家とお客さんとが共有し合う“いい気”を皆が持ち帰ることで、きっと世界はより良いものになっていく」
 より良い世界はその積み重ねで出来ている。そんなふうに演奏者は信じているんじゃないかな、と。その意見に私も“一票”だ。“伝える”仕事の私も声から、文章から、言葉から、“いい気”を出せるように、良(善)きことを日々考えよう。ピーター・ドラッカーも言っている。「成果とは、自分が手に入れたいものではなく、外の世界に変化を起こすこと」と。
 世界は、きっとそういう積み重ねの集合体でより良くなっていく。あらゆる仕事に携わる人がそんな思いを強く持っていたらどんなに素晴らしいだろうと、心から思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

※柳 真也さん参加のライブは、
・『デビッド・マシューズ with 札幌ジャズアンビシャス ライブ in幕別 2020』
 2020年2月1日(土)幕別町百年記念ホール
・『第3回 札幌ジャズアンビシャス 定期演奏会』
 2020年2月4日(火)札幌教育文化会館小ホール
※「札幌ジャズアンビシャス」初のアルバム『ONE MORE TIME』は2020年1月リリース

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