ほっかいどう元気びと

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2019年10月20日のゲスト

塩谷 拓真さん
「JAPAN CUP 全国犬ぞり稚内大会」
シベリアンハスキー限定2頭引き部門4連覇
塩谷拓真さん

秩父別町出身 21歳。
幼い頃から祖父の営む稲作農家を継ぐと心に決める一方、小学校1年生で犬ぞりをはじめ中学2年生の時に初優勝。
今年2月に行われた「JAPAN CUP 全国犬ぞり稚内大会」では、シベリアンハスキー限定2頭引き部門で大会史上初の4連覇を果たした。
今春、深川の拓殖大学北海道短期大学を卒業し現在は祖父の「吉田農場」で働きながら、米づくりと犬ぞりレースの両立に励んでいる。

村井裕子のインタビュー後記

塩谷拓真さん  今回の『ほっかいどう元気びと』は、「JAPAN CUP 全国犬ぞり稚内大会」のシベリアンハスキー限定2頭引き部門で4連覇を続けている秩父別町の塩谷拓真さん 21歳。短大で農業を学んだ後この春からは祖父が営む「吉田農場」で米作りを担う一員となり、責任ある本格的な農作業に四苦八苦しながら、来シーズンの連覇も叶えるため犬達の仕上げにも余念がないという。犬ぞりの魅力、そして、子供の頃から継ぐことを決めていたという農業との両立を訊いた。

 犬ぞり大会は冬になると道内各地で行われるが、1984年から36回の歴史を数えるのが稚内市開催の「JAPAN CUP 全国犬ぞり稚内大会」。小学生の頃に犬ぞりを覚えた塩谷さんが初めて優勝したのが中学2年の時。その後ライバルに破れる年もありながらもシベリアンハスキー限定2頭引き部門で目下4連勝。長年続く大会だけにスタート当初からの参加者も多く、年上の顔馴染み達が親身にレースのコツを教えてくれたり、飼い方のアドバイスをしてくれたりという、人との交流もとても楽しいのだという。
 物心つく頃にはすでに家にハスキー犬がいたという塩谷さん。3歳上の兄が始めた犬ぞりに興味を持ったことから自分も遊び始めたというが、聞けば、現在塩谷家にはハスキー犬が6頭と犬ぞりはしない柴犬1匹、そして、収録では触れていないが、孫達の影響で犬ぞりを楽しむようになった祖父の家にもハスキー犬が6頭いるとのこと。敷地にドッグランを作って運動をさせ、食餌などの世話を父親と共に行っているという。冬場のトレーニングは実際にコースを作って本番さながらの練習をするそうだが、大事なのは日々の犬達との意思の疎通。とにかく犬が気持ちよく走れることを第一に準備をするのだと話す。
 そして、短大を卒業したこの春からは「吉田農場」を担う1人となり、任されることも増えたとのこと。“手伝い”をしていたこれまでの農作業との違いを訊いてみると、素直に「考えは甘かった」と苦笑い。日々、機械の整備や操作、道具の片付けなどに追われる中、予想以上に天候に振り回されて余裕はほとんどなかったそうだが、子供の頃からの夢でもあり、しっかり基礎を覚えて一人前になりたいと力を込めていた。

塩谷拓真さん 体力を使う農作業に加えて多頭飼いの犬の面倒を見るのは想像するだけで目が回りそうだが、自分になついているシベリアンハスキーが12頭もいたら、いやはやどんなに面白い毎日だろう。実際、レースの目標を共有する“相棒”達とトレーニングする中で彼らの力に驚くことも多いのだという。例えば、距離1キロの練習の日と今日は7キロ走るという時とでは、犬は、「短距離ですね。では全力疾走で・・・」とか、「今日はマラソンですか。それではペースを調整しましょう」と考えているかのように力の配分をするのがすごい・・・というエピソードを話してくれたが、“大型犬と暮らした歴”合わせてほぼ20年の私も内心「わかる、わかる」の納得感。番組の時間は限られているので、(ここであまり“犬って凄いですものね”話や、“犬って愛すべき生きものですよね”話で引っ張りすぎても・・・ましてや、自分の興味先行で訊き過ぎるなぞ番組上いかがなものか・・・)と自制をきかせながら塩谷さん個人の話に戻していく。
 犬ぞりレースは日常の暮らしでおいそれと体験出来るものではない。その面白さはどこにあるのかを訊くと、競技そのものの爽快感や達成感は勿論のこと、大会に集まる人達が犬に対して真剣に真面目に取り組んでいるというところが、行ってみて、参加してみて初めて分かる良さなのだと話す。犬の魅力と共に犬ぞりを愛する“人の魅力”も大会の牽引役になってきたということなのだろう。まだまだ21歳と最も若手の塩谷さんは、「犬ぞりは“道楽”かもしれないけど、あの真剣勝負の良さを若い世代として引き継いで行きたい。自分はこの大会のいいところを伝えていく役目でもあると思う」と話していた。

 収録後に尚も稚内大会の“いいところ”を訊いていくと、「沢山あります。・・・勝っても賞金が出ないところも(笑)」との答え。贈呈されるのは賞状と副賞。人には例えばカニ、犬にはドッグフードが贈られるそうで、「それも雰囲気よくここまで続けてきている理由だと思う」と純粋に楽しめる大会の魅力を教えてくれる。すでに35年が経つ稚内大会は当初より参加人数は減り、主要メンバーも高齢になってきているという世代交代の課題もあるということだが、「昔のままのいいところを、真剣に犬ぞりを楽しむ仲間達と大事にしていきたい」と大会への熱い思いを語ってくれた。そんなふうに、犬ぞり大会をリードする役割であり、そして、“新米”後継者の立場で北海道の美味しいお米作りを引き継いでいく役割。どちらも、その一生懸命に頑張る姿が何かを伝えていくのだろうなと思う。

 放送用の収録が済むと皆一様にほっとした表情を見せるが、緊張のほどけた塩谷さんからこぼれたのはこんな一言。
 「犬ぞり仲間達がこの放送を聴いたら、『もっと犬のことを喋れ~』って言うと思います」
 仲間内では集まると話題は犬のこと一辺倒だそうだ(わかる、わかる)。犬ぞりレース仲間が喜ぶ“犬の話”ってどういう話題? とさらに訊くと、「それぞれの“犬の仕上がり具合”について」だそう。「後ろ足、いい感じになってきたよ」(実際に、「ほぉ~、どれどれ・・・いいですねぇ」と犬の筋肉を触って喜び合うらしい)とか、「デビュー予定の1歳のハスキーが頭の回転もよくて、かなり走れるんだよ」とか、それぞれの“うちのが一番”の犬話がなんとも楽しいのだそうだ(わかる、わかる)。
 犬を真ん中に、年齢も超え、職業も超えて集うことで日々の暮らしがぐんと活力あるものになっていく。そんなふうに、条件やしがらみを超えた遊びや趣味があることのかけがえのなさを改めて感じさせていただいた。

(インタビュー後記 村井裕子)

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