ほっかいどう元気びと

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2019年9月15日のゲスト

高野 克也さん
「札幌まるやま自然学校」代表
高野克也さん

札幌市出身 40歳。
ラジオ番組制作会社に勤めた後、大雪山国立公園の自然保護監視員を経て、2009年「NPO法人ねおす」に就職。東川町でネイチャーガイドや子どもの自然体験活動などを担当し、2011年に札幌へ異動となってからも、子ども事業をメインに力を注ぐ。
2015年「札幌まるやま自然学校」として独立し、人と自然・人と人との豊かな出会いをつくりだす活動を行っている。

村井裕子のインタビュー後記

高野克也さん 今回の『ほっかいどう元気びと』は、「札幌まるやま自然学校」代表の高野克也さん 40歳。「NPO法人 ねおす」での経験を経て2015年に独立して立ち上げた場で、子供達や親子での参加者に自然活動のプログラムを提供している。野や山での遊びを通して何を伝えたいのか、子供達のどんな力を引き出したいのかを伺った。

 高野さん、20代の頃の仕事はラジオの番組制作。北海道の放送業界で企画をしたり、取材をしたり、時間と闘いながら“伝える”仕事をしていた同業者だ。放送のイロハを知っているからか、インタビューを受ける側に回っても話す節目節目で“編集点”を意識してくださっていたり、互いの声が重ならないように質問を待ってから話してくださったりと、さり気ない気遣いが伝わってくる(逆に変に緊張した・・・というのは終了後の弁)。
 仕事の転機は30代。制作会社の業務縮小のタイミングでリセットを決め、友人から声を掛けられた大雪山国立公園の自然保護監視員に転職したのが今の仕事に繋がるきっかけだったという。これまでの都市の生活とは全く違う時間の流れの中で、自然相手に仕事をする人達のゆったりとした自然への向き合い方に触れ、この環境をどう残すかを考えたり、自分が楽しいと思うポイントを人にどう伝えるのかを考えたりするのも素敵だと思ったとのこと。そんなフィールドでの“伝える難しさ”は、人にはいろんな感性や感覚があり、大自然の中では“美しいと思うポイント”が人によって様々であるということ。人にも向き合い、それぞれの興味を知ろうとする中で、自分の中にあるものも刺激され引き出される面白さも感じていったという。
 “自然”に関わる仕事の分野はネイチャーガイドや大人向けのものもいろいろあるが、高野さんが特化していったのは子供達の自然体験活動。札幌に異動後も子供向けのプログラムに携わり、その後、独立してからも子供のための放課後の活動プランや週末の自然体験活動、親子キャンプなどの企画を打ち出していったとのこと。高野さんは、幼いうちから“自分で興味を見つけ出す”ことや、“主体的に動く”ことを覚えてもらいたいからと話す。ひとつひとつのプログラムもそのきっかけ作り。野外活動のすべての内容を決めてしまうのではなく、安全をしっかり確保した上で、“そこから何をしたいのか”は任せるのだという。昔は、様々な年代が混ざって遊び、家族や学校だけでなく町内会などで他人と関わることも多く、そこから得られることは沢山あったが、今は少しお膳立てが必要な時代。さらには、保護者世代がもはやそういう人間関係や自然体験が薄い年代でもあることから、親子で体験してもらうことの意義も感じているという。

高野克也さん 加えて、今はデジタル社会。情報がふんだんに手に入り、あらゆることが瞬時に検索出来るこの時代に、自然体験活動の提供はどう工夫していけばいいのかをよく考えるという。収録後のこぼれ話で、インターネット時代の子供達の傾向とその対策について話してくれる。身の回りのデジタル機器で沢山のものを見ることが出来るのはとても便利なのだが、ややもすると、「(実際に)見たことがある」「やったことがある」と錯覚しがち。例えば、キャンプの火おこしを「知ってる、知ってる!」と率先してやってみようとするものの、経験は無いので実際には「出来ない、わからない」。大事なのはそこから。「わからないので教えてほしい」と、人にコミュニケーションをとり、教わった方法で実際にやってみて、そうして初めて「出来た」を実感することで人は自信を得られる。その過程を体験してほしいのですと高野さんは言う。今の子供達がデジタル機器の時代で生きていくのはもはや必定。それら無しには成り立たない。ただ、仮想やバーチャルなものに接してばかりだと何かがずれていく。野や山で遊ぶことで本来持っている力も思い出して欲しい・・・との思いに、深く頷いた。
 人間には、〇〇時(どき)というのがあると思う。遊ぶ、興味を持つ、好奇心を働かせる、驚く、喜ぶ、感動する・・・。それらの感性の芽生えは子供時代に他ならない。その時期だからこその恩恵がある。子供の自然体験活動に特化していったという高野さんにとっては、きっと、そんな“人の大事な時”に携わる活動がライフワーク。そのために20代は放送現場というフィールドで、段取り力や準備力、企画力、瞬発力、物事や人への対応力、伝達力を磨いていたのではと思えてくる。今がまさに「伝え時(どき)」なのだろうと思う。

 ここからは蛇足。高野さんの“自然の中に身を置く大切さ”のお話を聞いて、家と仕事場を往復する自分の日常を振り返って思った、取るに足らない話。ちょうどこの収録日の前日。朝の身支度でせっかちにワンピースを着ていたら、伸縮のない生地だったからかノースリーブの袖から右腕を出そうとしたそのせつな、引っかかった腕がぐわんとしなり、頬骨を殴打(!)・・・びっくりした。もののけに突然襲われたかと思った。しかも、その数時間後、午前の講座を終えて「おつかれさま。気を付けて」とニコニコ受講生達を見送っていたら、目の前に急に扉が出現し(・・・いやいや、扉は急に現れない。始めからそこに静止していた)、ガツンと鼻を強打(!)・・・つぅ~いたたた。全く危険の無い平和な場所で鼻骨を折り鼻血を出す間抜けな自分を想像し焦るが・・・助かった、鼻は変わらずそこにある。びっくりだ。お前が一番気を付けろ、という話だ。要は、前者は肩甲骨の可動域が狭くなり腕が上がらず、後者は老眼が進んで目の近くのみならずぼやっとする範囲が広がったという、単純に加齢がもたらす“惨劇”。気持ち(=段取り良く複数のことをスピーディーにこなしたい)と、身体感覚(=老朽化の現実)がいつの間にかずれていたのだ。あぁびっくりした。こんな時のリセットは・・・そうだ、自然の中に身を置いてずれた感覚を取り戻そう!・・・なんて急に思い立ってハードな山登りなどに挑戦しようなどとゆめゆめ思わないようにしようと言い聞かせる。(思い立ってやってみれば何事も出来る、根性で乗り切れる・・・という若き日の“成功体験”に要注意。きっと、おそらく、確実に、アキレス腱も半月板も古びている)。
 焦らず、慌てず、嘆かず。何よりも、“ズレを素直に受け入れよ”。そうして、日々の暮らしを通してこれまでのやり方を“今仕様にカスタマイズすること”・・・そこが先決。それからゆっくりと、無理をしないやり方で野や山に受け入れてもらおうと思った次第。そして、この世代以上にとってはほんとうに貴重な“体力という宝”を存分に持つ子供達。宝は磨けば益々光る。スマホからひととき離れて、思う存分野外で遊んでほしいものだと、心底思った次第。

(インタビュー後記 村井裕子)

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