ほっかいどう元気びと

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2019年9月8日のゲスト

村上 彩子さん
「エシカル・タイム」店主/「SDGsアカデミー」代表
村上彩子さん

小樽市出身 43歳。
小樽で生まれ、小学校は東京、中学時代は札幌で過ごし、高校の時に香港へ。その後12年間を海外で過ごし、30歳の時に札幌に戻る。
2018年にSDGsを学校や企業、自治体などに広める「SDGsアカデミー」を立ち上げ、今年4月にはフェアトレード商品の専門店「エシカル・タイム」をオープンした。

村井裕子のインタビュー後記

村上彩子さん 今回の『ほっかいどう元気びと』は、フェアトレード専門店「エシカル・タイム」を営む村上彩子さん 43歳。“エシカル”とは“倫理的な”という意味があり、ここのところ“エシカル消費”という概念が注目されている。モノの生産過程で労働者が劣悪な環境下に置かれていないか、教育を受けられず強制的に働かされている子供達がいないか、或いは、自然破壊や動物が犠牲になっていないかなどに目を向け、“人と社会、地球環境、地域のことを考慮して作られたモノ”を購入・消費しようという世界的な潮流のこと。村上さんのお店では、それらに配慮して生産・輸入されたチョコレートやコーヒー、紅茶などのフェアトレード商品を揃える他、自然食品やエコ雑貨も扱い、「衣食住」で出来る持続可能な暮らし方を提案している。
 この番組では特に今年に入って、多様な取り組みをしているゲストの方々から“SDGs(エスディージーズ)=持続可能な開発目標”という言葉が頻繁に聞かれるようになったが、村上さんがもうひとつ力を入れていのがまさに「SDGsアカデミー」と名付けた学びの場。2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」を、個人や企業に浸透させていこうという取り組みだ。暮らしを紡ぐ生活者のひとりとしてどんな提案をしているのか、思いを形にしていく原動力は何か、お話を伺った。

 大量生産・大量消費の時代を経て様々な問題が浮上している今、人々の暮らしはこのままでいいわけはない・・・“自分さえよければ”を続けることで踏みにじられる人々や地域に目を瞑るわけにはいかない・・・大量のプラスチック廃棄問題や食品ロスの問題も待ったなし・・・と、私達は深刻な地球的危機に気づきつつも、「では、個人個人は何をしたらいいの? これまでに定着してしまったものをどうやって変えていったらいいの?」など、明確な足並みの揃え方がわからず心理的に右往左往しているのが現状だ。村上さんはその答えを探しながら、とにかく“一歩踏み出し行動している”人。学びの場を作り、企業への啓発セミナーを行い、フェアトレード商品専門のお店を実現させている。
 なぜ実践に踏み出せたのかを訊くと、これまで世界のあちこちを見てきた経験が影響しているとのこと。小樽で生まれ、東京や札幌で育ち、高校生の時に香港へ。後に取り組む仕事も含め12年間を海外で過ごし、30ヵ国を自分の目で見て、確かめてきたのだという。その中で深く印象に残っているのは14~5歳頃に父親に連れられてフィリピンを訪れ、スラム街を初めて見たこと。洋服を着ていない小さい子達が道端にいることに衝撃を受け、現地の人達とも話をする中で“世界ではこういうことが起きている”ということが分かったのが大きかったと言う。“世界にはいろんな人がいる”という知見を若い頃に得たことが、その後の仕事にも繋がり、さらには、そういう現状を広く知ってもらおうという原動力になったということが伝わってくる。
村上彩子さん 「SDGsアカデミー」がセミナーや講座、ワークショップの開催を通して最も力を入れているのは、子供達や若者達への啓蒙とともに、企業の経営にSDGsをどう取り入れていくかという仕組み作り。道内の中小企業と共に学びの機会を作っているのだという。企業は営利を目的として経済活動を行うものではあるが、今後、世界的にも求められていくのは“環境や社会に配慮した”企業。知らないまま遠い国の誰かを“搾取”しないという経済活動にシフトチェンジしていくためのきっかけ作りの取り組みでもある。
 SDGsは“世界を変えるための開発目標”として17項目があるが、そのすべては繋がっている。それらの問題にどう気づき、どう行動し、何を選択していくのかが問われている。開発途上国の貧困や労働問題にしても、気候変動や環境問題、プラスチックの大量廃棄問題にしても、企業が出来ること、そして、消費者の側の選択で変われること、消費者の側が働きかけることなど、双方が足並みを揃えるための意識の掘り起こしが欠かせない。村上さんは、「私は活動家ではないので、今あるものをすべて否定はしません」とにこやかに笑い、生活の中でプラスチックもペットボトルも利用しながらも、エコ雑貨に関心を持ち、再利用への最大限の配慮をし、「それはほんとうに要るのか?」の視点で企業側と消費者側の双方が未来の暮らしのために出来ることを考えていきたいというスタンスを話されていた。

 今、ワードとして注目の「エシカル消費」を村上さんは、“環境と人、社会に優しい”という易しい表現で広めていきたいと言う。“倫理的な”というと少し難しいイメージだが、「環境に配慮し、社会的にも児童労働がなされていないなど、“誰も泣いていない商品”をエシカルと呼びたい」と、まだまだ認知度の低い国際的課題を分かりやすいキーワードで噛み砕く。
 確かに、これまでの経済の仕組みを未来のために持続可能型にシフトチェンジするということは容易なことではない。何と言ってもこれまでの経済は“人の欲望”によって成り立ち、拡大を続けてきた。そして、“倫理的な”という概念は人によっても様々だ。求められるのは、その“想像力とバランス”か。「今、自分が手に取っているものは、どう作られたのか? 誰によって製品になったのか? その背景に何があるのか?」ということに少し意識を働かせてみる。そして、「これは、今の世の中にほんとうに要るモノなのか? 人、動物、自然を痛めつけてはいないか? 極端な食品ブームが遥か遠い場所で何らかの歪みを引き起こしていないか?」といった広い視点でバランス感覚を身につけることも共有していかなければならないだろう。
 「誰ひとり取り残さない」というのがSDGsの合言葉だが、それを叶えるために必要な“倫理”というのは、村上さんの言うように、この地球上で「誰も泣いていない」という、とても基本的な“優しさ”と、それに気づく“感性”なのかもしれないと改めて思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

※フェアトレード専門店「エシカル・タイム」は、札幌市中央区のサッポロファクトリー3条館2階にあります。営業時間などはHPでご確認の上、お出かけください。

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