ほっかいどう元気びと

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2019年7月14日のゲスト

中根 惠美子さん
NPO法人 北海道海浜美化を進める会 事務局長
中根惠美子さん

室蘭市出身 70歳。
室蘭清水丘高校を卒業後、税理士事務所に勤めながら、サーフィンやヨットなどマリンスポーツに親しみ、29歳の時には「南北海道オープンレガッタ」の二人乗りヨットで優勝。
その後札幌へ移り住み、48歳で企業運営のコンサルティング会社を設立。
2002年に放送大学に入学し環境について学びはじめ、その後「北海道海浜美化を進める会」のポスターを目にしたことから入会。2008年からは事務局長を務めている。

村井裕子のインタビュー後記

中根惠美子さん 毎週この後記を書き続けて今回が433回目。様々な取り組みの方にインタビュー収録をした後で私自身が感じたことや考えたことを綴っているものだが、思いを言葉にする中で沢山使ったに違いないと思う言葉がいくつかある。ひとつには“気概”、そして、“志”。人の取り組みの奥深くにある力の源のようなものを表す言葉だ。誰かの気概や志に触れると触れた自分の心のスイッチも連動してONになるような気がする。何かに一心に取り組む人達の言葉をラジオの電波を通じて、そして、HP上での発信を通してスイッチONが伝播し、隅々までじわじわとより良い循環が起こる北海道を夢見ている。
 今回の『ほっかいどう元気びと』のお客様は、まさに、そんな気概や志で取り組む活動を牽引するおひとり。「NPO法人 北海道海浜美化を進める会」事務局長の中根惠美子さん 70歳。「北海道の海辺を日本一美しく」をテーマに有志達で海辺の清掃を続けるその原動力を伺った。

 札幌で企業運営のコンサルティング会社を経営する中根さんは室蘭市出身。若い頃はサーフィンやヨットなどマリンスポーツに親しみ、29歳の時には「南北海道オープンレガッタ」の二人乗りヨットで優勝も経験しているという。海辺の清掃活動への思いは、「海にたっぷり楽しませてもらったので、その恩返しです。昔のような綺麗な海辺を未来の子供達に残したい」。子供の頃から自然や環境問題に関心があったという中根さんは2002年に放送大学に入学して環境について学び始め、その後、「北海道海浜美化を進める会」を知って入会を決意。以来、会長、副会長を支える事務局長として活動を続けてきたという。現在の会員は40名。中根さんはコロコロと笑いながら、「会員達は皆、“心の発露からゴミを拾いたい”という人達です」と胸を張る。義理や義務で参加してもらってもうまくいかない。だから、勧誘もしない。良い環境を次の世代に残したいと心から思う人でなければ会員になれないんです、と。ボランティアで手伝ってくれる人達も広報をして集めるのではなく、志のある人がやって来てくれるおかげでここまで続いているのだという。
 フィールド活動は年に6回から7回。5月の石狩浜益海水浴場から始まって、8月31日から一泊二日の「エコツーリズムin積丹」を挟み、10月に再び浜益海岸を清掃。冬になると、勉強会やフォーラムで自然環境について勉強し、意識を深めるのだそうだ。中根さんのキーワードで頷いたのは、「ゴミを拾った人は、捨てない人になる」という会の“合い言葉”。一度ゴミを拾うと、自分からは絶対ゴミを捨てない。そういう意識を、会員から他の人へ、清掃活動に参加した子供達からそれぞれの親へ、一人また一人と伝えていってもらいたい、そのための継続活動なのだと中根さんは言う。

中根惠美子さん お話を伺っていて、これこそ、“意識のスイッチの伝播”だと思う。収録前に中根さんは「ゴミを拾うのも勇気が要るんですよね」と話していた。街の中でゴミを見かけても拾うのには勇気が要る。格好悪いと思われるんじゃないか、と。「私もこの活動を始めてから拾えるようになった。最初、ほろ酔いで歩いて帰る時に道端のゴミを拾うことが出来た。次の日からはしらふでも街の中のゴミを拾えるようになった」と笑い、「ゴミを拾うのは格好悪いのではなく、格好いいと思う社会にしたいの」と話していた。そして、収録中に語っていた「ゴミを拾ったら、人間、チェンジするんです。違った自分がそこで生まれるんです」という表現を聞きながら、そういうことに気づいた人達がほんとうに“格好いい”のだと納得。そして、そのような意識のスイッチを連動させていくことが、中根さん達の地道な活動の大きな実りのひとつなのだと伝わってくる。
 収録後に、40名の会員達について訊いてみる。「平均年齢65歳位。心の発露からゴミを拾いたいと思っている人達ばかりで、皆、自分がやらなきゃ誰もやらないと言っている。この地球を自分達で何とかしたいと思っているのです」とのこと。まさに、気概や志の発露の取り組み。会の目下のテーマは、その気概を若い人達に繋いでいくこと。次の世代への責任を皆さんが強く感じているということが、軽快な口調の中にも大事なキーワードをしっかりと込める中根さんのお話から感じられたのだった。

 それにしても、これから益々やっかいになってくるのがゴミ問題だ。中根さんは海浜のゴミとしては流木が圧倒的に多いが、人工物のゴミでは海辺そのものにポイと捨てられたものや漁具の類い、海の向こうの国から流れてきたものなど様々なゴミが打ち上げられているが、案外、川から流れてくるものも少なくないという。川に捨てたゴミ、山や農地から風に飛ばされて海へ流されたゴミなども目に付くという。ここのところプラスチックゴミも後を絶たない。波にさらされて細かくなったプラゴミも相変わらず多いのだという。海へ流れてくるゴミを少なくするために個々で出来ることは、あちこちでむやみに捨てないという心構えは勿論のこと、家庭からのゴミは分類をしっかりした上で収集に出し、飛散させないということもゴミ減らしに繋がるという。
 そして、今まさに、社会全体の意識チェンジが始まっている。レジ袋などの見直し、ストローの材質への模索、回収出来る容器の開発など、プラスチック製品を減らす取り組みが進められている。大量生産・大量消費がもてはやされたバブル景気時代を契機に膨らみ始めたプラスチック製品。当時はレジ袋も当たり前に貰っていたし、使い捨てのペットボトルはほんとうに便利で、持ち歩くのにちょっと格好いいとさえ思っていた。だが、時代はたえず変化する。今、すべてのことについて、その時その時の“当たり前”を見直し、広い視野で“最善”を考え直す時代なのかもしれないと改めて思う。
 日本一、いや、世界一の美しい海辺を目指して清掃活動を続ける「海浜美化を進める会」の地道な活動は、海はすべてのものへと繋がっているのだという想像力を喚起してくれる。そして、その想像力はそのまま、“人はどう生きるべきか”という、人の心の深い宇宙へも繋がっていくのだと感じた。

(インタビュー後記 村井裕子)

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