ほっかいどう元気びと

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2019年4月7日のゲスト

島田 龍哉さん
「島田農園」代表
島田龍哉さん

恵庭市出身 42歳。
大正9年に富山県から入植した稲作農家の5代目として生まれ育ち、幼いころから農業に親しむ。
岩見沢農業高校を卒業後、ハワイで1年間の農業研修を経て1997年に就農。米の生産だけでなく、小学校の農業体験の受け入や食農教育の出前講座にも力を注いでいる。
2015年には父親から経営を引き継ぎ、現在は農業と共に、米粉や酒米を使った商品開発にも取り組んでいる。

村井裕子のインタビュー後記

 「楽しむのではなくて、面白がることよ」・・・というのは、生前の言葉が多くの人の心を揺さぶり続けている故・樹木希林さんの名言のひとつ。その言葉に続けて、「楽しむというのは客観的でしょう。中に入って面白がるの。面白がらなきゃ、やってけないもの、この世の中。」という、“楽しむ”ことと“面白がる”ことの微妙な違いが加えられている。
 仕事も暮らしもまさにそうだなぁと思う。“楽しもう”ではなく、“面白がろう”・・・そのほうが心のスイッチが入る。「こうしたらいいかな? ああも出来るかな? こんな見方をしてみようかな? こんな方法も面白いかな?」の“面白がりスイッチ”が入ると、「へぇ~!」「そうなんだ~」「ワクワクする」という心の温度がぐっと上昇する。
 4月最初の『ほっかいどう元気びと』でお話を伺っていて、そんなことを感じた。

島田龍哉さん お客様は、恵庭市林田で大正9年から続く稲作農家の五代目、「島田農園」代表の島田龍哉さん 42歳。子供の頃から田んぼは遊び場、農業が大好きという思いを育んで跡を継ぎ、お米を作るだけではなく、もっと消費者に届けたいという思いで米粉や酒米からスイーツやお酒の商品開発といった農産物加工の6次化にも力を入れ、さらには、子供達への農業体験や農と食の出前講座にも取り組んでいるという。
 「いろんなことがいつの間にか増えちゃいました」と笑う表情からは、自分自身の役割である農業を通して地元の恵庭のために何が出来るかを考え、動き、多くの仲間達と未来のことを沢山話しているであろう日常が伝わってくる。「何よりも大事にしてきたのは、人の出会いと異業種の繋がりです」と、これからの時代の農家として地元の青年会議所の仲間達や市役所の職員達と様々なアイディアを形にしてきた思いが言葉になって溢れ出る。まさに、物心ついた頃から家の仕事である農業のひとつひとつを面白がっているうちに自分自身の家業になり、さらにお米から繋がる可能性を面白がり、「これをやってみたい」と言い続けることで周りの人達をもより良く巻き込んで来た人なのだろう。
 そのうちのひとつ、10年程前から続けているという子供達の農業体験については、「あまり子供は好きじゃなかったんです。うるさいし、騒ぐし」と笑い、「でも農業体験を受け入れる人が他にいないので始めてみたら、とっても喜んでくれて、子供達ってなんて面白いんだろうと自分にとっても嬉しい体験でした」と続ける。子供達が田んぼに入って蛙や虫を相手にはしゃぐ姿は勿論、その表情に先生達が驚くことも嬉しかったし、地域の年配の人達がそれを見て何を楽しそうにやっているのかと集まって来てくれたことも嬉しかったと。
 子供からお年寄り、地域をも巻き込む吸引力というのは、自然や食という人にとって最も大事なものと共存している“農業という生業”の持つ底力なのだろう。そして、何よりも島田さんが「農業って面白い!」と感じた心の原風景・原体験がそのままプラスイメージで子供にも大人にも伝わっているというのも決して小さくはないのだろう。
 商品開発に関しても然り。米を米粉にしようと思いつくものの加工や販売のノウハウが全く無い段階から、仲間に「こうしたい」と話すことで洋菓子店主と繋げてくれる人が現れ、スイーツとして形になったり、さらには、酒米からお酒造り、玄米から「抹茶入り玄米茶」の商品化にこぎ着けたりしたことも、人との出会いに支えられたおかげですと力を込める。

島田龍哉さん はてさて、「より良く人を巻き込んでいく秘訣は?」と収録後に訊いてみると、「夢を人に話すこと」との答え。今はLINEという便利なものがあるので、仲間達に“今度はこうしたい”と思いを伝えると、その中の誰かが“面白い!”と動き始め、「そうやって輪を作っていくことで、今まで無かったものが形になっていく」とのこと
 まさに、“面白がる”の連鎖でポジティブスパイラルの輪が幾重にも作られるのだろう。ふと、島田さんが先頭を走るイメージが浮かび、「旗を持って進む役割ですね」と伝えると、「いや、横並びです。皆に旗を渡して一緒に横並びで走ろう! みたいな感じ・・・」という表現。途端に頭の映像は、いろんな職種、様々な役割の人達が横に並んで思い思いに進んでいるイメージに変換される。ほんとうだ、そのほうが断然心地良い。誰かがぐいぐい先頭で引っ張るのではなく、ひとりひとりが“主役”で横に繋がるコミュニティ。まさに、これからの地域作りに共有していきたいテーマに違いないと改めて思う。
 「恵庭は、平均年齢も若く、人口も増えているまちなんです」と胸を張って語る口調を聴きながら、地域それぞれにきっとある“なにかしらの良い資源”をみつけて、面白がるということの大切さ、そして、それを横の繋がりで何倍も面白くしていくという“気概”がこれから益々求められていくのだろうと感じたインタビューだった。

 冒頭の樹木希林さんの言葉。“楽しむ”や“面白がる”というのは一見口当たりのいい言葉だが、そこは希林さんらしく、けっして甘くはない。深く味わっているとその奥になかなかに苦い味が含まれている。「面白がらなきゃ、やってけないもの、この世の中。」という厳しい現実への達観の眼差し。
 すべてが確かにそうなのだと背筋が伸びる。大変と思えば、国際情勢も、国内事情も、地方問題も大変の一語に尽きる。第一次産業の農業も漁業も、いや、都会の働き手だって起業家だって・・・すべての仕事において楽なものはひとつもない。個人の生活も、暮らしも、人間関係も・・・そう、生きることすべてが大変なことばかり。だから、面白がる(!)
 沢山の人生論が世の中にはあるが、生きる上でいろんなことがありながらも毎日を笑って暮らせるのは、究極その“面白がりスイッチ”をオンにするかorしないか・・・その僅かな違いなのではないか。そして、それを“摩耗”させないために日々出来ることは何なのか。・・・そんなことをこの頃私自身も考え続けている。
 田んぼの話、子供達との農業体験の話、米の商品開発の話、そして、農家としてのこれからの夢を溢れるように語る田島さんと話していて、何より、そんなふうに、まずは「仕事を面白がる」という“生きる力”の根本に、どういう機会であれひとりでも多くの子供達が触れてほしいと感じた。

(インタビュー後記 村井裕子)

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