ほっかいどう元気びと

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2018年12月23日のゲスト

越川 明征さん
北海道自由ウヰスキー株式会社 紅櫻蒸溜所 所長
越川明征さん

千葉県銚子市出身 35歳。
地元の高校を卒業後、ポンプ等を製造する「大平洋機工株式会社」へ入社し、働きながら千葉大学工学部で学ぶ。
25歳の時、たまたま立ち寄ったショットバーで飲んだ温かいカクテルに衝撃を受けバーテンダーの道へ。東京で腕を磨き、海外でウイスキーの製法などを学び、2017年末に北海道自由ウヰスキー株式会社 紅櫻蒸溜所に入社。
この春から、北海道らしさを生かすクラフトジンづくりに奮闘している。

村井裕子のインタビュー後記

越川明征さん 今回の『ほっかいどう元気びと』は、札幌市南区の紅櫻公園内でこの春から「クラフトジン」を製造している「北海道自由ウヰスキー株式会社」紅櫻蒸留所 所長の越川明征さん 35歳。お洒落でアーバンな雰囲気のバーとも、そもそもお酒とも無縁な暮らしの私にとって、ジンがどういうお酒で、どんな時に飲むのか、ましてや「クラフトジン」というものが何なのか・・・インタビュー準備をするまでほとんど知らないことだらけ。にわか勉強の受け売りで言えば、ジンとはそもそも穀物や糖蜜から作るスピリッツであり、「クラフトジン」というのは、地域で特徴を生かした少量生産のものを指すそう。香り付けのために用いられるのはボタニカルと言われる植物や自然食材。そのこだわりや工夫がその土地ならではの特徴となり、日本でも「クラフトジン」ブームなのだとか。いわゆるクラフトビール(地ビール)の“ジン”バージョンだ。 
 ・・・というのが、「クラフトジン」の定義でいいんでしょうか・・・と収録前に越川さんに伺うと、「ジンってウイスキーなどと違って決まりがあまりないんですよ」と、定義があってないようなものというジンの曖昧さと、だからこそ、「クラフトジン」は作り手の工夫の自由度があるとの面白さを教えてくれる。収録がスタートしてからも、そんなモノ作りの面白さを興味津々訊いていった。

 その“自由度がある面白さ”というのは、「クラフトジン」作りのために越川さんが選ぶ植物や食材の種類を聞いて初めてなるほどと分かってくる。「紅櫻蒸留所」による“北海道初”で“北海道発”の「クラフトジン」には日高昆布や椎茸、切り干し大根が使われているという。洋酒に?と意外だが、旨味が出るのだそうで、そもそも本場のものにも昆布は使われるし、ボタニカル(植物由来)の中には乾燥させた“根”の利用も多く、それを踏まえると“切り干し大根”も理にかなう。勿論、北海道らしくラベンダーの香りのものもあるそうだが、意外な前者のほうがお酒の旨味の分かる“通”好みなのではと思えてくる。
 越川さんの構想には“鮭節”や“山わさび”などもあって、“北海道らしさ”に思いを込めていることが伝わってくるが、例えば、ジンの香り付けに欠かせないとされるジュニパーベリー(和名では「西洋ネズの実<ヒノキ科ビャクシン属>」)の同種の樹などは北海道にも植わっているので、道産のものでも試してみたいと話されていたのも面白かった。
 お話を聞いてみると、「クラフトジン」は自然回帰の飲み物だ。ボタニカルだし、土地の恵みが込められている。今のブームはそういうところもあるのかもしれないと、“別世界”の端っこを覗いたような気持ちになれた。

越川明征さん 加えて、越川さんのこれまでの道のりも面白い。越川さんは千葉県銚子市出身。去年末に紅櫻蒸留所技師の募集を見て来道し“クラフトジンの作り手”としての今があるわけだが、もともとは会社員をしながら大学で工学を学んでいた折、ふとしたきっかけで新しい世界となるバーテンダーの道に入っていったという。たまたま立ち寄ったショットバーで思いがけない優しさで供された温かいカクテル「ホット・バタード・ラムカウ」の味わいに衝撃を受けたのだとか。スコットランドの蒸留所100軒に履歴書を出した末、ホテルに雇って貰いながら蒸留所まわりをして酒造の独学研究もし、ゆくゆくはバーを持ちたいという夢を持ちつつ蒸留所技師として札幌へやってきたという道のり。
  お酒作りも今後のいい経験になるからと思っての転身だったそうたが、作り手になったからには、もう北海道に骨を埋めるつもりですと越川さん。将来見据えているウイスキー作りは10年20年という時間のかかる世界ですから、と。
 ひとつひとつの行動が偶然に次の道を呼び寄せ、さらに学んだり動いたりすることで道は繋がっていく。その行動力はどこから来るのかを訊くと、「僕は実は真逆で、性格的には腰が重いタイプ。なかなか動き出せないが、それでも野心は持っている。目標を立ててやらざるを得ない状況をどんどん作って自分を動かしてきただけです」とのこと。その自己分析も面白く、芯のところに学びと準備とを厭わない真面目さがあるのだと伝ってきた。

 越川さんの真面目さは収録後の雑談でもにじみ出てくる。お酒には、その作り手がどんな人なのか、どんな性格なのか、どんな思いで作っているのかが全部出るものだと越川さん。分かる人には分かるのだ、と。そういう分かる人が「このお酒、色っぽいねぇ」などと言って味わっているのを見ると、自分もそんなお酒を作れるようになりたいと思っていると言う。今の自分の作るものは「きれいにまとまっている」と言われるので、“まとまり”だけでなくそこにもう少し自由度を足していきたいな、と。そして、北海道の風土や出会う人達によってそんな自分の可能性も楽しみにしたいと話されていた。
 ひとりひとりの“性質・性格”成分が何で出来ているか・・・と考えてみた時に、越川さんの“真面目”成分は私の中にあるものとちょっと似ているなぁと思って忍び笑いがこぼれる。準備を綿密にしたり、これはその後に役立つはずと学びを続けたり、思いきった行動をエイッと起こしたりするのは、私も同様に「自分を追い込んでやらざるを得ない状態にしている」からだ。越川さんは違うかもしれないが、私の真面目さは小心からも来ている。“ビビリ”だから、ちゃんとやっておく。怠けたりズルをしたりして後で面倒なことになるよりは努力したりやせ我慢したりするほうが何倍も心が楽。そんな真面目さだ。そのような“成分”が、“作ったお酒”・・・ではなく“声や話し方”に出ていると自己分析している。
 でも、北海道に暮らしてもうすぐ40年。越川さんと同じ“移住組”のひとりとして、この場所で自由な心がずいぶん引き出されたなぁとしみじみ思う。真面目の奥にあった“可笑しな私”もどんどん解放され、ものごとのプラスの面を見つけるのが上手くなったものだと思っている。そんなおおらかな成分を醸成してくれたのは紛れもなく北海道の風土と人だ。もう、感謝しかない。越川さんのお酒のように「もっと色っぽいと言われたい」という願望は・・・昔も今も1ミリも無いが、北海道歴さらに50年、60年・・・真面目ベースはそのままにフロンティアスピリットとユーモアの香り付けを存分に加えていきたいと思う。
 目指すは、大量生産ではなく少量生産、こだわりが魅力の“クラフト人(じん)”・・・なんて・・・こんな“ダジャレ”も私を醸成している微妙~な成分だ(あしからず・・笑)。

(インタビュー後記 村井裕子)

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