ほっかいどう元気びと

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2018年10月7日のゲスト

八木 直美さん
恵庭市黄金中央町内会「子ども回覧板」
学生サポーター/
北海道文教大学4年生
八木直美さん

安平町出身 21歳。
通った小中学校がいずれも全校生徒が数十人という規模だったことから、年下の子の面倒を見ることが好きになり、保育士を志すようになる。
大学ではボランティア部に所属し地域の様々な活動に参加、2年生の時に部長から誘われ恵庭市黄金中央町内会の「子ども回覧板」の立ち上げから子供たちの制作をサポートし続けている。

村井裕子のインタビュー後記

 『ほっかいどう元気びと』は、北海道の様々な分野で地域を元気にする活動や仕事に取り組む人達に毎回お話を伺っているが、全く違う場所で違う分野なのに、志や理念は“繋がっている”と思うことがよくある。例えば、違うそれぞれの“樹”なのだけれど、地下水脈で繋がっていて、同じ水を吸い上げているという感じ。
 前回、小学校の先生を退職後、子供や親たちに寄り添う様々な活動を続ける「札幌子ども日本語クラブ」代表の谷 光さんに出ていただいたが、今回のお客様とお話ししていて、そんなふうに何か深いところで大切にしているものの共通性を感じさせていただいた。

八木直美さん お話を訊いたのは、谷さんより55歳ほど年齢が下のお客様。保育士を目指して北海道文教大学で学ぶ八木直美さん 21歳。恵庭市の黄金中央町内会で2年前から取り組んでいる「子ども回覧板」作りに同じ大学の仲間達と関わっているという。実際にカメラを持って取材し文面作りをするのは町内会の小中学生10人ほど。八木さん達の役割はそのお手伝いだという。ボランティア部で地域の活動に取り組む中、こういう活動もあると部長が誘ってくれたのがきっかけで「子ども回覧板」の立ち上げから参加し、一から仕組み作りをしてきたとのこと。現在10人ほどの学生サポーター達は共に「こども発達学部」で学ぶ学生達。皆、自発的に参加してくれ、しかも、それぞれが将来教育現場に何かしら関わろうとしている仲間だけに実際の子供達へのサポートは生きた学びになるという。大学生がどんなふうに地域や子供達と関わり、それを将来の自分にどう生かそうと思っているのかを伺った。

 子供達と町内会とを繋ぐために、黄金中央町内会の役員達が立ち上げたという「子ども回覧板」。子供に役割を持たせるという仕組みは、高齢化で活動が停滞しがちな町内会を活気づかせるユニークなアイディアだ。とはいえ、上手に子供を引っ張っていくのは至難の業。終始明るい雰囲気で話してくれる八木さんのお話を聞きながら、その仕組みに地元の大学生のサポートを組み込んだということが、2年も続いてきた要因なのだと伝わってくる。
 最初はやはり、“何をしたらいいの? どう書けばいいの?”と戸惑いがちな子供達に、まずはやってみようよと“スイッチを入れていく”のが難しかったそうだが、取材する日時を決めて動き出したり、文や絵を書き始めてみようと促したりしながら進めていったと八木さん。そういう“体験ありき”の中で、カメラや絵などそれぞれの好きなことや得意なことを見つけたり、出来上がった時の達成感も感じられたりしてきたのだと思いますと取り組みを振り返る。
 子供達は、「無理、無理」とか、「別に・・・」「出来ない」「面倒くさい」などという言葉を反射的に発してしまうことも少なくない。そういうちょっと難しい年頃の子供にどう“やる気”を出させるのだろう? その辺りを訊いていくと、大学での日頃の学びを反芻するかのように幾つかの方法を真っ直ぐな目線で答えてくれる。自身の目標を遠くに置きながら意欲的に学んでいる人の目だ。お話の中から伝わってきたのは、子供と向き合う時に大事にしているのは、自主性や自発性。今回のサポートは、「子ども回覧板」の作り手である子供達が何よりも楽しんでやってくれるように、頃合いを見て声掛けをしたり、期限や時間を決めてその中で集中させたり、その子に応じて工夫することを心掛けているという。自分達がどんどん進めていったり、指示して書かせたりするのではなく、関わることで子供のやる気を引き出していくというスタンス。「待つということも大事なこと」という八木さんの言葉を聞いて、前回の谷さんの子供達との向き合い方にも同じキーワードが出てきたなぁと、その共通点が面白い。
八木直美さん さらに、「“結果よりも過程”を大事にしたい」「困っている子供に寄り添う」という思いも同じだ。そして、八木さんは収録後にも、そんな教育の理想を語りながら、「でも、“過程”を大事にゆっくり寄り添いたいと思いつつ、『子ども回覧板』としての見栄えや完成度という“結果”もある程度求められるので、そう言ってばかりもいられない。そのバランスをとるのにいつも悩みます」と、理想と現実のすり合わせの難しさも語る。
 “豊かな子供期”・・・前述の谷さんの言葉がまた浮かぶ。「今の子供達は忙しすぎて、豊かな子供期が無い」という前回のインタビューで心に留まったキーワード。教育現場で困っている人達に尚も寄り添う“先生の経験者”と、これから幼児教育の現場に踏み出して行く“保育士を志す若者”。双方の共通点は、“子供達の豊かな心作り”という願いだ。出会うことのないそれぞれのそんな理念が、『ほっかいどう元気びと』という“広場”で交差したような嬉しさを感じさせていただいた。
 子供達の未来のためにいろいろなアプローチで尽力する人達が確かにいる。子供を取り巻く環境は複雑で、問題解決は一筋縄ではいかないのが現実だが、次世代のために心を寄せるそんな人達がいるということを番組で地道に取り上げていきたいと、改めて感じさせていただいた。

 八木さんが、子供に関わる仕事に就きたいと思ったのは、安平町生まれで千歳育ちの環境の中、通った小中学校の全校生徒がいずれも数十人という規模で、年上からたっぷりと面倒を見て貰い、年下の面倒を見ることが好きになったからだそうだ。それこそ、“豊かな子供期”を自然や周りの人達からふんだんに与えて貰った体験が今に生きているのだろう。地方が持っている潜在力はそんなところにもある。「自然」と「人」が子供に与える豊かな“養分”だ。
 自分が育ったような北海道の小さな地域で保育士になりたいと夢を語る八木さん。ひとりでも多く“幸せな子供時代”を過ごせるような仕事が叶いますようにと、エールの気持ちを込めて見送った。

(インタビュー後記 村井裕子)

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