ほっかいどう元気びと

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2018年9月16日のゲスト

澤田 千香子さん
写真造形家/冊子「OTARU Ture*Dure」発行人
澤田千香子さん

小樽市出身 58歳。
大谷短期大学保育科を卒業後事務の仕事に就くが、タウン誌の出版社がガイドブックを作る編集者を募集しているのを知り、会社を辞め2年間編集の仕事に携わる。
それをきっかけに写真に興味をもち「小樽写真研究会」に入会。
1987年から小樽市内の路地裏や商店街を背景に怪獣の人形や玩具を撮影する「小樽幻想館」シリーズに取り組み始め、個展などで発表。
2016年、写真で歴史と叙情ある街の魅力を発信したいと冊子「OTARU Ture*Dure」を創刊。

村井裕子のインタビュー後記

 この度の北海道胆振東部地震で被害に遭われた皆様に心からお見舞い申し上げ、一日も早い被災地の復旧をお祈り致します。

 この後記は、9月6日に北海道を大地震が襲って以来、初めて書いている。16日と23日放送分のインタビューを2本録り終えたその晩の未明に札幌の自宅で大きな揺れに見舞われた。停電で外の状況が全く分からず、道外の姉や友人達からの電話やメールで被害の大きさを知らされ絶句。その後は40時間程の停電の中でひたすらライフラインの復旧を待つという北海道に住んで以降初めての経験をしたが、全く予期していなかった震度7に襲われて犠牲になった厚真町の方々や未だ避難されている方々の心中はいかばかりか・・・言葉も出ない。
 この番組は2011年、東日本大震災発生の翌月に始まっている。第一回目の収録の数日前にあの大地震と大津波は起こり、この国の皆がそうだったようにそこから何を考えていったらいいのかという課題を突きつけられ、葛藤しながら、悩みながら、人が生きる上で“ほんとうに大切なこと”を求めてきたような日々だった。
 今回は自分達の足元で起こった震災だ。北海道の私達はどういう“ものさし”をこれから大事にしていけばいいのか、これを契機に何に気づかなくてはならないのか、どういう方向に気持ちを合わせて向かって行けばいいのか・・・道民は皆がさらなる課題を受け取ったのだと思っている。東日本大震災の前と後では何かが確実に変わって、今もそれが続いている。さらに皆で課題への“答え合わせ”をしていかなくてはならない時代なのだと思う。
 この番組の「元気びと」というタイトルの通り、北海道各所で様々な役割を果たしているゲストおひとりおひとりのエネルギーの明るさをお借りしながら、心に響く言葉の力を発信していきたいと改めて感じている。

澤田千香子さん 16日の放送は、小樽で写真造形家として「OTARU Ture*Dure-つれづれ-」という小さな季刊誌を発行している澤田千香子さん 58歳。澤田さんは、ちょっと変わった『小樽幻想館』シリーズという、収集していた怪獣の人形や玩具を小樽の風景に置いて撮る写真を手がけ個展などで発表してきたという。観光スポットの紹介とはまた違った視点の“小樽を写真で表現する”という取り組みを続けることで地元小樽の何を伝えていきたいのか、どんな小樽を感じて欲しいのか、その思いを伺った。
 2016年の秋から創刊されているA5版のその小冊子(¥300)には、毎号テーマが付いている。最新の2018秋の7号は「拝啓 いにしえの住人さま -縄文の世界へアクセス-」。最近、縄文時代が再注目を集め、ちょっとしたブームになっているが、小樽にも縄文人は暮らしていたという歴史を振り返り、「忍路環状列石(ストーンサークル)」や手宮公園近くの「太古の森」、小樽の海の写真で構成されている。それぞれの場所で縄文風の装いの女性がポーズをとり、縄文研究の原子修さんの詩が添えられている。公園も海も、普段、当たり前のように見ている場所だが、そこにも3500年前の暮らしがあるという視点で見れば、新たな“地元再発見”の面白さがある。
 小樽生まれ小樽育ちの澤田さん、若い頃は「小樽はつまらない」と思っていたそう。地方で生まれ育った若者がだいたいは抱く感覚。よそに沢山いいものがあって地元には“何もない”という気持ち。澤田さんの中でそれが変わったのは、タウン誌のガイドブックを任されてからだったという。小樽のいろいろなものを自分で掘り起していくうちに、この土地の奥深さに気づいていき、特に写真に興味を持って「小樽写真研究会」に入会してからは、独自の視点で見慣れた小樽の風景を切り取り、個展などで発表するようにもなったとのこと。路地裏や商店街に、怪獣(同世代はとても懐かしい「ウルトラQ」のガラモンやカネゴン)や男の子の人形を配して写真を撮る『小樽幻想館』シリーズの撮影などを通して、新たな目線で見る小樽のポテンシャルの高さを伝えたいという気持ちが強くなっていったと話す。

澤田千香子さん 収録後に、これまでのバックナンバーを見せていただきながら、さらに、“小樽を写真で切り取る面白さ”を伺っていくと、飲み屋街である花園の「嵐山新地」がテーマの回に触れて、「古くからある庶民的な飲み屋街ですが、見てください。写真に撮るといい雰囲気出ていませんか?!」と“写真マジック”を語る。最近ではこの場所はその何とも言えない“ラビリンス”的良さが若い人たちにも受けて、海外や札幌からも観光客が訪れる名所になっているのだという。それはいい意味で“錯覚して貰う”ということ? と訊くと、澤田さん、すとんとそのキーワードが胸に落ちたようで、「そうそう!錯覚!」と膝を打つ。
 「まさに、写真によっていい錯覚を起こしたいんです!」。

 自分達が住む地域の良さや意外な面白さを掘り起こして伝える取り組みがあちこちで行われている。『ほっかいどう元気びと』はそんな人材の宝庫だ。小樽生まれ、小樽育ちの澤田さんのアプローチは、写真を通して“そこに元々あったものを独自の視点で掘り起こす”ということなのだろう。
 「小樽は日本じゃないような、無国籍、多国籍の雰囲気に溢れている。テーマを決めてシャッターを押すと、面白くないと思っていた場所でも俄然おしゃれになったり、意味を感じさせるスポットになったりする。その面白さを伝えていきたい」と澤田さん。
 テーマは面白いように次から次へと湧いてくるという。そこから何かを深く考えさせたり生き方を変えるヒントにしたりということは考えていない。ちょっとしたスパイス的なものでいられれば・・・とのこと。
 道民ひとりひとりがスパイス的役割を担っていくというイメージも面白い。それぞれの特徴を生かし、引き立て合って、北海道全体がより味わい深くなっていくといいなと思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

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