ほっかいどう元気びと

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2018年8月26日のゲスト

小林 恵里子さん
「合同会社 健康応援社」代表社員
小林恵里子さん

札幌市出身 61歳。
札幌開成高校を卒業し、YMCAの専門学校に進学。卒業後はスイミングスクールのインストラクターとして働き、障がい者の水泳指導で通った事がきっかけで、2011年に小樽に移住。
高齢化が進む中「いつまでも自分の足で歩ける暮らし」を根付かせ、元気の輪を広げたいと「合同会社 健康応援社」をたちあげる。
2016年からは活動の一つとして小樽市花園で玄米自然食レストラン「ゆるり庵」を運営。

村井裕子のインタビュー後記

 『ほっかいどう元気びと』のインタビューは、人が持つ“思い”に焦点を当てている。それぞれの仕事や取り組みに対する思いを紐解いていき、その人の果たす役割や原動力といった“人の中の力”を浮き彫りにする。この番組の役割はひとつには「多様性の中の普遍を拾う」だ。言葉を換えると「それはどんな時代でもどんな人にとっても大切なこと」ということか。それは案外、というか、至極“あたりまえ”のことなのだというのが回を重ねる度に分かってきたこと。そして、そんなふうに“あたりまえ”なことこそ忘れがち。しかも、日常は“根元的な思い”など人前でめったに口にはしない。ちょっと照れ臭いし、かなり“青い”。だからそれらを、あえて拾う。何度も拾う…そういう媒体でありたいというのがこの番組だ。
 今回お話を伺った「元気びと」が表現してくれた“大切なこと”はそんな“多様性の中の普遍”の中でも“ど真ん中”のキーワード。改めてその言葉が音声化された途端、意味を咀嚼するより先に感情のメーターが触れてしまった。あれれ、なんだこのグッと来る感覚は? え? なんで涙?・・・という感じ。ゲストの思いがどう心に響いたのか、今回も後記を書きながら確認してみようと思う。

小林恵里子さん お客様は、小樽市花園にある玄米自然食レストラン「ゆるり庵」を運営する「合同会社 健康応援社」代表社員 小林恵里子さん 61歳。この「ゆるり庵」で月に一度、70代の女性達が家庭料理を作って安価で提供する「おばちゃん食堂」が人気を集めているという。
 元々は札幌でスイミングスクールのインストラクターをしていた小林さんが小樽で障がいを持つ人達に水泳などの運動指導を始めたのは、スポーツクラブで元気な人を益々元気にするというより自分は“弱者の側”に立ちたいという思いから。必ずしも“元気”ではない人達やハンデを抱えた人が出来る運動や健康のヒントを提供し、そうして、少しずつ“元気回復した人”が今度は誰かのために出来ることをしましょうと提案していく健康応援者でありたいとかねてから思っていたのだという。そういう活動の中から自然発生的に「おばちゃん食堂」が立ち上がり、健康志向の玄米食レストラン「ゆるり庵」がそれを望む人々の声に応えて定着していったというのが経緯。小林さんが“旗振り役”というより、多くの人が潜在的に欲していたニーズに小林さんの発信するものが合致して、自然の流れでひとつひとつがかたちになってきたということが伝わってくる。
 「おばちゃん食堂」で家庭料理を作っている“おばちゃん達”は運動教室の生徒さんであり、その立ち上げのひとつのきっかけになったのは、東日本大震災の翌年にボランティアに行ったことだったそう。運動教室で元気になってきた自分達が出来ることはないかと地元の「潮まつり」で資金を作り、宮城県の女川町へ赴き足湯マッサージをしたのだそうだが、被災者の人達が“おばちゃん達”に心を開き震災のことをようやく語れたのだそう。そんな想定以上のボランティアが出来たという実感が「私達でも出来ることがある」と自信を深めたのだという。「おばちゃん達の力って凄いなと思った」と小林さん。
 札幌から小樽に移り住んで健康応援の取り組みを本格化させることには“百人が百人反対するような状況”だったそうだが、そんな凄さを目の当たりにしたからこそ「大丈夫」という気持ちの方が勝ったのだという。確かに、小樽を始め地方は“経済状況が大変”やら“高齢化が進む”やら“若い人がいない”やら、ないない尽くし。「そういう場所でやっていけるのか?」という心配は当然だろう。だが、“ものさし”が違うのだ。地方だからこそやりたい、地方だからこそやれる。大都会では叶えにくいことが「ここでは出来る」という別の“ものさし”。それが小林さんにとっては大事だったに違いない。

小林恵里子さん ハンデのある人や元気一杯ではない人達に運動教室を提供し、その人達が出来る活動を後押しし、根本から元気な人を増やしていく取り組みを通して小林さんが伝えたいことは、言葉にすると何? そんな問いへの答えは、「目の前や足元に元気になるものがあるのに、それを見落としている。忘れているものを見直して貰いたいということ」。その“目の前や足元にあるもの”って、言葉にするとどういうもの? とさらに畳みかけると、少し間をおいて前述の“真っ直ぐな言葉”が少し照れ臭そうに発せられた。
 「人の愛。・・・人を元気にすることはとても簡単なこと。毎日毎日、“あなたを愛しているよ”と囁いたらきっと元気になるんじゃないかな」
 まさかの直球がスパーンと心の真ん中に。意味を解釈する脳よりももっと違う部位が反応したみたいに胸が熱くなった。私自身がこれまで貰った膨大な分量のその“元気の素”が瞬間思い出され、急に“有り難い気持ち”が心の底から溢れてきたのだ。愛への“有り難さ”で涙線が緩むとは。子供や若者にはそんなレセプターはない。さすが還暦のわたし。世のおばあちゃん達が「有り難い・・・有り難い」と思わず知らず手を合わせるあの気持ち…今ならわかる。あの人この人、あの場所この場所、すべてが“有り難い”。
 小林さんは、その「愛」を言葉に出すことで何かが変わると話す。「愛しているよ」という思いと言葉の力。人だけではない、きっと、場所もそうなのだ。“何もない土地”や“衰える土地”にも、違うものさしで根源的な良さを見い出し、愛を注ぎ、愛を伝えることで、その場所は変わっていく。小樽という場所に対して小林さんは「大好きっ!」と力を込める。開拓時代に先人が汗をかいてきたその息吹が小樽には感じられるからだそう。

 土地にも人にも、元々備わった“力”があり、それを思い出すと自ずと回復出来ていく。忘れてしまっているのだとしたら、気がついて取り戻せばいい。それは、とても“簡単なこと”。すぐ“目の前や足元にある”。
 「だって、政治家だけが日本を動かしているわけではないですもんね」
 収録後に溢れ出てきたそんな言葉に共感。まずは、自分で自分の身体を整えて、誰かのために、地域のために持てる愛を注ごう。伝えよう。貰って来た分の何倍も。

(インタビュー後記 村井裕子)

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