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医師が処方する風邪薬や湿布など「OTC類似薬」が保険適用の除外か…国民医療費が年間3200億円削減される一方、受診控えで重篤化のリスクも

2025年06月17日(火) 16時14分 更新

みなさんは、病院で処方される薬が高額になるかもしれないことをご存知でしょうか。ドラッグストアで購入できる「かぜ薬」や「胃腸薬」は「OTC医薬品」と呼ばれる市販薬です。

「OTC」は「Over The Counter」の略で全額自己負担になります。

一方で「OTC類似薬」は、病院で処方される薬のことです。

成分や効果は市販薬とほぼ同じで、 医師の処方箋が必要ですが保険適用のため、自己負担1割から3割で購入できます。

いま「OTC類似薬」の一部で保険適用が除外されるかもしれません。



◆医療費の削減か、健康格差の拡大か

先週、閣議決定された政府の経済財政運営の指針、いわゆる「骨太の方針」。そこに盛り込まれたのが「OTC類似薬の保険適用の見直し」です。

これに先立ち、自民・公明の与党と、日本維新の会は、OTC類似薬を含め、2025年度から公的医療の保険適用を見直す方針で合意しました。

現場の医師からは…。



・八軒内科ファミリークリニック 大坪優介 院長
「うまく(薬の)勉強ができなかったときに、もう自己責任として自分の身に返ってくるので、そこはちょっと心配している」

医療費の削減につながるのか。それとも健康格差が広がってしまうのか。公的医療保険のあり方を、もうひとホリします。



・日本維新の会 岩谷良平 幹事長
「上がり続けている社会保障費と社会保険料を削減・引き下げていくための改革、その一歩が踏み出された大きな意味のある合意文書だと考える」

「OTC類似薬」の保険適用の見直しは、現役世代の社会保険料の負担を軽減することが狙いです。



◆「OTC類似薬」を保険適用外にすることで年間約3200億円削減(試算)

日本の医療費は年々、増え続けていて2003年度に31.5兆円だった国民医療費は、この20年で約16兆円増え、2024年度は、約49兆円で過去最高を更新する見込みです。

風邪薬や胃腸薬、湿布など、医師の処方箋が必要な「OTC類似薬」は保険適用のため、自己負担は1割から3割に抑えられ、市販薬より安く手に入ります。

具体的な対象品目は、慢性疾患を抱える人や患者の負担を配慮しながら検討するとしていますが、保険適用外にすることで、年間で約3200億円分の削減効果を見込めると試算されています。

◆診断を受けずに症状が重篤化するリスク

今回の方針について、札幌市西区のクリニックに通院する人は…。



・60代
「正直なところ経済的には今までどおりがありがたいけど、必要な分だけドラッグストアで購入するのも仕方がないかな」

・70代
「(OTC類似薬の)保険適用外はやっぱり嫌。年金で細々だから、やっぱり負担は低ければ低いほどいい」

院長の大坪医師は、医療費の削減以外にもメリットはあるとしています。

・八軒内科ファミリークリニック 大坪優介 院長
「医療資源(薬)の適正配分化にはなるのではないかなと。(患者の)健康リテラシーを向上させることによって、医療への過度な依存は減るのではないか」

一方で、診断を受けずに症状が重篤化するリスクを懸念しています。



・八軒内科ファミリークリニック 大坪優介 院長
「患者自身が自分の病態を判断しなきゃいけないので、本来医師が診ていたら早く発見できるものを、やっぱり手遅れになることは起こりうるかな」
「自分が飲んでる薬はどういうものなのかを勉強して、自分の健康に興味を持っていくことで、この変化にも乗り越えられるようになるのではないか」

◆「必要な人に薬が行きわたる」などのメリットの一方…

無駄な医療費は減らすべきですが、保険適用外になると、患者にとっては負担が増えることになります。



現在は保険が適用されているので、例えば75歳以上の高齢者の場合、定価2000円のかぜ薬が1割負担の200円になり、診察料や調剤料などを加えても市販薬より安く手に入れることができます。

八軒内科ファミリークリニックの大坪院長によりますと、以下のようなメリットデメリットが考えられるそうです。



【メリット】
・必要な人に薬が行き渡る
・健康への意識が高まり、病気や薬について学ぶ機会になる。

【デメリット】
・症状に合わない薬を選ぶ
・受診控えで重い病気を見逃す

医療費の削減は喫緊の課題ですが、命に関わる問題でもあるので慎重に議論が必要です。

北海道ニュース24