北海道内に40万戸以上 実は身近な「空き家問題」 放置のリスク…倒壊や犯罪で重大事態にも 住んでいる時から親子や親族で話し合いが必要
2025年07月01日(火) 20時33分 更新
住む人がいなくなり放置された「空き家」。
北海道石狩市が1日、危険な空き家の解体に踏み切りました。
石狩市 建築住宅課 佐々木勇次 課長
「建築物および付属物の全部除却について、石狩市が代執行を開始することを宣言します」
北海道小樽市では実際に、空き家による被害が。
徳丸工業 北田大輔 代表
「この壁が中に入っちゃった状態です。窓がついてたんですが、窓も全部バラバラになって、中に(雪で)押し込まれた状態ですね。本当に人がいたら、恐らく命に関わる状態だった…」
自身も当事者になりかねない、実は身近な「空き家問題」を、もうひとホリします。
木下純一郎 記者
「石狩市浜益のこちらの建物ですが、外観はそうでもないが、中を見ると、天井が崩れ落ちているのがわかります。下には、集められたがれきでしょうか、積まれている状態です」
建設から60年以上経った石狩市浜益区の空き家です。
木下純一郎 記者
「横の壁ですね、木造がむき出しになっています。隣の家の持ち主、いるそうなんですが、こちらに迫るという、それぐらい危険な状態になっています」
3年ほど前、老朽化した煙突が隣の空き地に倒壊。
市は、空き家の持ち主に修繕や解体を求めてきたものの、危険な状態が放置されたため、空き家を強制的に撤去する「行政代執行」に初めて着手しました。
解体は、8月下旬までかかる見通しで、費用は市が所有者に請求します。
石狩市 建築住宅課 佐々木勇次 課長
「倒壊の危険がある物件と判断し、行政代執行に至った。こちらは土地柄、風が強い場所でもあるので、飛散物だとか、地域の方々に迷惑がかかると判断した」
小樽市の住宅地では、空き家による周りへの被害も。
徳丸工業 北田大輔 代表
「雪はもう、この茶色い(2階の)ところまであった」
建設業を営む北田大輔さんの作業場兼資材置き場です。
2025年3月、隣の空き家の屋根から、大量の雪が落ちてきました。
徳丸工業 北田大輔 代表
「いやぁもの凄いびっくりしました。もう家が崩れるんじゃないかって、規模で…。ここら辺の柱も折れて…」
雪は壁を突き破って屋内へ。
トイレも、断熱材が露出するほどの被害を受けました。
一時的な修理にかかった費用は、100万円あまり…
一方、空き家の持ち主は、すでに相続を放棄していて、いまは国の財産になるまで弁護士が建物の管理をしています。
本格的な修理には、さらに数百万円かかる見込みですが、金額面で折り合いがつかず、弁護士を通して話し合いが続いていると言います。
HBCは、建物を管理する弁護士に取材を申し込みましたが、「一切お答えできない」と断られました。
徳丸工業 北田大輔 代表
「私も、実家に両親がいますので、ここと同じくらい山奥ですので、(空き家問題は)明日は我が身の問題なのかな」
石狩市の隣、当別町では、空き家を再生する試みが。
T&T 辻野修太朗 代表
「1階は靴屋さんで、2階はオーナー住んでいた。前のオーナーからいただいた物(兜・神棚)で、ここは海外の方も来るので、喜んでもらえると思ってディスプレイしている」
4月にオープンした民泊「oheso(オヘソ)」です。
運営会社の辻野さんが、築50年以上の「くつ店兼住宅」を無償で譲り受け、町の補助金なども活用して改装しました。
駅や商店街から近く、1棟貸しで最大16人が泊まれるため、7月と8月は、大学のサークル合宿などで予約が半分以上、埋まっています。
もちろん、どんな空き家でも再利用できるわけではありません。
T&T 辻野修太朗 代表
「立地が面白いなと思うのが大きなポイントだと僕は考えてます。想定外の費用がかかることもありますので、購入前にしっかりチェックするようにしている」
空き家問題に詳しい北海学園大学の岡本浩一教授は、空き家に対する意識を、変えていくことが重要だといいます。
北海学園大学 岡本浩一 教授
「空き家=社会悪・問題というとらえ方ではなくて、空き家も地域の財産になる可能性があるという見方をしていくのは大事」
1戸に対応するだけでも大変ですが、北海道内に40万戸以上ということで、私たちの身の回りにもありそうですね。
空き家を放置することのリスクについて、岡本教授は次のように指摘しています。
・倒壊や損壊で他人にけがをさせる
・景観の悪化
・放火や不法侵入
・落雪による交通遮断
また、空き家問題の解決が難しくなることについて、岡本教授は、次のように指摘しています。
・まず、所有者が近くにいるとは限らない
・さらに、相続で権利が分散しているケースも
・問題が起きた時に、自治体が人手不足で支援も手薄になりがち
では、どうすればいいのか…
・「住めなくなったらどうするのか」について、「縁起でもない」と言わず、親子・親族で元気なうちに話し合っておく
・長期入院や施設入所の際に、自宅をどうするかアドバイスを受けられるなど、医療や福祉との連携を強化する。
私たちも当事者になるかもしれない、空き家問題。
市町村によっては解体や改修の補助金もあるので、悩んでいる方は、まずお住まいの市町村にご相談ください。