「日本一危険な動物園」触れこみで20年 民間動物園「ノースサファリサッポロ」まもなく閉園 300以上の動物の行方は…旭山動物園「相談はないが、拒否する姿勢ではない」
2025年09月26日(金) 23時35分 更新
北海道札幌市南区の民間動物園「ノースサファリサッポロ」がまもなく、閉園します。
園内に残る動物たちのゆくえは。
2005年にオープンした「ノースサファリサッポロ」
札幌市に無許可で施設を建て事業を拡大。
「日本一危険な動物園」の触れこみで20年にわたり営業を続けてきました。
市から行政指導を受け、運営会社は9月末での閉園と、すべての建物を撤去することを表明。
閉園を前に、多くの観光客が駆け込みで訪れています。
来園者
「来てよかったなと思うから、閉まっちゃうのは寂しい」
来園者
「もうすぐ終わり、閉園みたいなので最後に見ておこうと思って。建物を撤去と言っているけど動物が先じゃないかと思う。全部の動物の行き先が決まってからの撤去が正しいと思う」
心配されるのは、閉園後の動物たちの行方です。
札幌市の調査で、園で飼育されていた640の動物のうち、ライオンなどを含む300以上の動物が、園内に残っていることが分かりました。
受け入れ先が見つからず、移動のめどが立っていないとみられています。
また獣舎など、多くの建物も残されています。
札幌市開発指導課 坪田修一課長
「15棟減っていて118という建物を確認している(閉園後も)職員が現地に立ち入りして、建物の除却が終わるまで指導を続ける」
札幌市は、建物の撤去を命じる「除却命令」を出すことも検討していますが、撤去に伴う動物たちの移動については、運営会社に委ねています。
札幌市開発指導課 坪田修一課長
「動物関係で時間がかかっている。園内の移動だけでもストレスがあるらしい」
一方で、札幌市は、長年にわたり運営会社に対し、動物飼育の許可や、施設内の飲食ブースなどの営業許可を出していた経緯もあり、地元の住民や市議会からは、市側の責任を問う声もあがっています。
運営会社の代理人弁護士は、HBCの取材に対し「今後も札幌市に報告しながら、動物の福祉を最優先したうえで、建物の撤去も進めていきたい」とコメントしています。
札幌市は早期の撤去を求めていますが、多くの建物に、まだ動物が残っていることが、問題を難しくしています。
(施設の)ホームページにも、動物たちについては、健康と福祉を守るための最善の策を講じているので安心いただければとコメントやお知らせも残っている。
運営会社は、閉園後も飼育を続けて、受け入れ先を探すとしていますが、北海道内の動物園では受け入れることはできないのでしょうか。
旭川市旭山動物園の、坂東元統括園長は、動物の移動には、様々なハードルがあり「現状では受け入れられる要素はない」としつつも、動物の立場に立つと、相談を拒否することはないと強調します。
旭川市旭山動物園 坂東元統括園長
「絶対に何も拒否する姿勢ではない。札幌市からも正式な形で協力要請は来ていない、JAZA(日本動物園水族館協会)からも来ていない」
ライオンなどの特定動物を引き取った場合、国際条約に則った許可とともに、新たな飼育施設が必要となります。
さらに…
旭川市旭山動物園 坂東元統括園長
「国際的な血統登録だったり個体の来歴とか、国内の動物園でもかなり将来的な事を見越して計画を立てている」
動物の移動をめぐって、坂東さんには忘れられない経験があります。
かつて北海道美瑛町にあった「北海道シベリアタイガーパーク」での問題です。
1980年代初めに開業した民間動物園。
絶滅危惧種のアムールトラなど10数頭が飼われていましたが、ずさんな飼育管理が、国内外から指摘され、そのまま休業に。
坂東さんは当時、調査員として現場を目の当たりにしました。
旭川市旭山動物園 坂東元統括園長
「行き先は見つからず(トラは)終生飼育へ、死ぬまできっちりと責任を持って飼いましょうと」
トラには1頭ずつ「血統書」があったものの、移動の経歴が分からない上、監督する北海道も、施設の検査を12年間怠り、記録が無いことが判明。
トラたちは、結局その場所で一生を終える判断となりました。
ただ、今回のノースサファリの問題は、美瑛町のケースとは異なると坂東さんは強調します。
旭川市旭山動物園 坂東元統括園長
「(運営会社の)土地の利用は、違法かもしれないが、(動物たちの)施設はそれぞれ許可は出ていたと思う。
合法的の部分と違法の部分と何が今回の閉園につながったのか、冷静に見ていく必要がある」
旭山動物園の坂東統括園長は「動物園には『種の保存』の使命があり、血統登録が無い、移動歴が分からない動物を受け入れることは困難」で「今はノースサファリにいる個体の情報が全く分からない状況」と前置きしつつ、「ワシントン条約に関係する動物は、登録や許可が無いと移動も飼育もできないが、その条件をクリアしたからこそ札幌市も許可を出して、これまで営業できていたと見ている」「正式な相談などはないが、すべて拒否する姿勢ではない」との見解を示しています。
人間の都合で、動物の命が左右されてはなりません。
みんなで知恵を出し合うときが来ています。