三冠馬『ナリタブライアン』や『ブローザホーン』が入浴した名湯が函館に “温泉門”を調査してわかった知られざる歴史
2025年06月13日(金) 16時19分 更新
知られざる名湯が北海道函館市に隠されていました。
依頼人(あやさん・札幌在住)
「函館に温泉門という門があるそうなんですが、あれが何なのか?調べてください」
温泉門…その言葉の響きからすると、堂々たる門構えの“何か”があるのかもしれません。
そう思った調査員は、早速、函館へ飛んでみたのですが…。
調査員
「函館に温泉門があると聞いたんですが?」
函館市民
「分からない」
「大門じゃなくて?知らなーい」
「温泉に入るのに門があるの?ちょっと分からないな」
いずれも、鈍い反応しか返って来ません。
どうやら地元の有名なスポット…というわけではないようです。
そこで、大門横丁で聞いてみると…。
函館いか家 久末誠代表
「知ってますよ。マチで言うと湯川町」
やはり“温泉門”というだけあって、函館を代表する、あの温泉街にあるようです。
いったい、どんな「門」だというのでしょうか?
中尾大輔 調査員
「ありました!こちらに温泉門と書かれています!」
確かに〝温泉門〟と記されているのですが…。
周辺を見渡しても、大きな門構えなどは見当たりません。
防犯カメラに…警備員。柵に取り囲われ、無用な立ち入りを厳しく阻む、警備体制です。
よく見てみると…そこに。
中尾大輔 調査員
「こちらに、函館競馬場と書かれています」
ここは日本中央競馬会、JRAが管理・運営する『函館競馬場』の一角。
では“温泉門”の正体とは、何なのでしょうか
中尾大輔 調査員
「温泉門って何ですか?」
JRA函館競馬場 三枝里緒さん
「競馬場内の温泉施設をつなぐ門となっています。日本で唯一のサラブレッドの温泉で、JRA全国10競馬場のうち函館競馬場のみです」
なんと、この先に温泉施設が…、しかもサラブレッド専用だというのです。
全国10か所あるJRAの競馬場のうち、函館競馬場は今から150年前に開設された、長い歴史を持ちます。
海を臨む唯一の競馬場であり、サラブレッド専用の手術室や、ウッドチップコースも、全国ではここだけです。
さらに、温泉まで…。
湯の川では、温泉を楽しむ猿たちが知られていますが、癒しを求め、サラブレッドも湯に浸かるというのでしょうか…?
それは見てみたい!
交渉の末、JRAから取材許可が下りました。
立ち入りが厳しく制限されているエリアに、もんすけ調査隊のカメラが入りました。
JRA函館競馬場三枝里緒さん
「こちらが温泉施設です」
中尾大輔 調査員
「ありました!サラブレッドの温泉施設を発見しました!」
JRAの競馬場で、ただ1か所という、サラブレッド専用の温泉施設。“馬温泉所”です。
そこには、水色の細長い浴槽が2頭分…。
深さは1メートルで胸まで浸かることができ、シャワーもあります。
60℃ある湯の川の源泉を、40℃にして使っているということです。
では、どんな効能をもたらすのでしょうか?
JRA競走馬診療所 小林稔 上席臨床獣医役
「現役の競走馬は、毎日トレーニングをして筋肉を使っているので、筋肉痛を取る以外にも、リラックス効果もあると言われている」
サラブレッドの平均体重は、400キロ~500キロ。
全身の筋肉をフルに使い、レースでは、時速70キロ台で勝負に挑みます。
“温泉門”の先にあった、ここ“馬温泉所”には、さまざまな名馬たちも入浴しています。
生涯獲得賞金10億円を誇る三冠馬『ナリタブライアン』、2024年に宝塚記念を制した『ブローザホーン』も、温泉に浸った名馬の一頭です。
それにしても、どうやって温泉に入るのでしょうか?
牡(おす)の3歳馬『エスタア』は、馬温泉所の利用は初めてだといいます。
怖がらせないために、今回はシャワーのみの、温泉体験となりました。
JRA競走馬診療所 小林稔 上席臨床獣医役
「坂を後ろ向きで馬が入っていき、(本来は)水深1mくらいなので、馬の胸くらいの深さになる。上にシャワーが付いているので、温泉のお湯を出して、背中や腰に打たせ湯的な形で筋肉疲労を取る。1回につき、15分ほど温泉に入るが、大体とろんとした顔になる」
ところで、わざわざ“温泉門”と掲げているのは、どうしてなのでしょうか?
競走馬専用の温泉施設は、かつて、函館競馬場から500mほど離れた、湯の川エリアの大湯温泉にありました。
馬たちは競馬場と温泉を往復するたびに、門をくぐっていたことから、『温泉門』の名が付いたということです。
JRA競走馬診療所 小林稔 上席臨床獣医役
「その後、1978年になくなったが、1981年、競馬場の中に新たに作り直した」
いまも“温泉門”の先には、激闘を尽くしたサラブレットたちを癒す、出で湯の空間がありました。
■調査結果
函館にある温泉門は、馬たちの健康を支える、「サラブレッド専用の温泉」に続く歴史ある門でした。