小学生が閉校記念の革製パスケースづくりを特別体験 講師は“和製エルメス”の職人、地元企業が協力し郷土愛を育む 北海道砂川市
2025年09月11日(木) 23時24分 更新
北海道砂川市の小学校で児童たちがレザークラフト=革細工に挑戦しました。講師を務めたのは、日本のエルメスとも評され、天皇陛下の「即位の礼」で使われた馬具一式を制作した馬具メーカーの職人たちです。
この特別授業が実現した背景には、地域を見つめる職人たちの温かいまなざしがありました。
職人達
「おはようございます」
8日月曜日、砂川市の北光小学校を訪れたのは…
・ソメスサドル法人事業部・野澤大輔部長
「革製品、何の皮か分かる人いますか?じゃぁ、一番早かった…」
・児童
「馬?」
・ソメスサドル 野澤大輔さん
「ソメスサドルの商品はどういったものを使っているかと言いますと、一番多いのは、実は牛なんです」
北海道が世界に誇る、馬具メーカーで革製のバッグや小物などを製造する『ソメスサドル』の職人たちです。
・職人
「つるつるの方を表に、ずっとぐるぐるしていく感じ…。いいね!あってる!」
・児童
「あってる?良かった!」
一流の職人が教えるレザークラフト。特別授業に込められた”想い”を、もうひとホリします。
・北光小学校 濱本有未代校長
「北光小学校は(来年)3月31日で閉校することになっています」
砂川市では、児童数の減少を理由に、北光小学校を含む6つの小中学校が来年3月で閉校します。
そこで地元企業「ソメスサドル」の協力を得て、閉校の記念品として『革のパスケース』を作ることになりました。
・北光小学校 濱本有未代校長
「やっぱり地元にあって、校区にある会社なので、それが1つと、あと革製品ってやっぱり、大事にしていくと、ずっとずっと使えるということで、学校がなくなっても、思い出が残るっていうところで今回、ソメスサドルさんにお願いすることになりました」
全校児童45人が職人の指導のもと、パスケース作りに挑戦します。
・児童
「楽しいよ。初めてだけど、意外と簡単だし(どんなところが難しい?)角が、ゆるんだ時とか、ねじれたり…」
・職人
「才能はあります。将来はソメスでお待ちしてます」
砂川市に工場を構える日本唯一の馬具メーカー『ソメスサドル』。一つひとつハンドメイドで作られる革製品には、職人たちの高い技術がつまっています。
日本の中央競馬で、歴代最多の4600勝を達成した、あの武豊騎手も30年以上、ソメスサドルの鞍を愛用しています。
・ソメスサドル 野澤大輔さん(4日豊沼小学校)
「ソメスサドルって知っている人、いますか?お、何人かいるね…」
先週、職人たちの姿は、砂川市内の別の小学校にありました。児童たちが作っているのはもちろん『革のパスケース』です。
閉校する6つの小中学校は、来年4月に開校する小中一貫の義務教育学校「砂川学園」に統合されます。
新しい校舎から自宅が遠い児童はバス通学となるため、春からの通学で使えるパスケースが記念品に選ばれました。
・女子児童(4日豊沼小)
「できた(実際に作ってみてどう?)大事にしたいと思う。(使うの楽しみ?)うん」
・職人(豊沼小のOB)
「よし、引っ張れ!OK」
「なかなか日常だと、こういう体験ってできないので、こういうものを通して興味を持っていただけたら、我々もうれしく思います」
当初は、完成品をプレゼントする案もありましたが、思い出に残る体験になればと、児童みずから手作りすることに。
そこには、地元の産業を知ってもらいたいという想いも込められています。
・ソメスサドル法人事業部・野澤大輔部長
「地元にこういった企業がある、モノづくりをしている会社があるんだっていうことを、子どもたちに一人でも多く知っていただきたい。
っていうのが、最大の目的でもありますし、将来ソメスサドルで働きたいとか、大人になったらソメスサドルの商品持ちたいな、という子が一人でも増えてくれたら、うれしいと思っています」
堀内大輝キャスター)
今後、職人が最終仕上げを行い、校章などの刻印を入れて11月頃の閉校の式典などで児童に手渡されるということです。
少子化で児童が減るなか、地元の産業を知ってもらう取り組みは各地で行われています。
◇釧路市の橋りょうメーカー「釧路製作所」
2019年から市と一緒に市内6つの小学校で出前授業を行っています。
「レオナルドの橋」と呼ばれる接着剤や釘を使わずに自立する小さな橋づくりに挑戦するなど、マチを支えるモノ作りを学んでいます。
◇北海道運輸局
3年前から、江差町教育委員会などと協力して海や船の仕事に興味を持ってもらうため江差町の小学生を対象に、フェリーの体験航海を行っています。
船内で操舵室を見学したり、奥尻町の津波館を見学したりして防災意識も高めています。