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アイヌの女子高校生・新谷菜々さん 「隠す必要ない」友人の言葉を胸に特別授業 生徒約80人を前に演舞披露「堂々と発信していきたい」

2025年08月09日(土) 09時14分 更新

札幌市で生まれ育ったアイヌの女子高校生。

過去に、心無い言葉をかけられたことから、学校でアイヌだと打ち明けることができませんでした。

そんな彼女が特別授業を開くことを決めました。

札幌南高校定時制4年 新谷菜々さん(18)
「みなさん、イランカラプテ!」

7月、札幌南高校で行われた、アイヌの文化や伝統などを伝える特別授業。



札幌南高校定時制4年 新谷菜々さん
「平成21(2009)年にはユネスコ無形文化遺産にも登録され、アイヌ古式舞踊は世界の代表的な1つとして認められている」

講師は、定時制4年の新谷菜々さん。

札幌市で生まれ育ったアイヌです。

新谷菜々さん
「アイヌ民族を好きになって欲しかったから。北海道の先住民族として、今も生き続けてるんだよと」

小学校4年の時、同級生が菜々さんの兄弟がアイヌ民族だと知り、彼女に心無い言葉を投げたといいます。

新谷菜々さん
「『うわっキモ』とか『近寄ってくるな』っていう話をされたり、陰で言われていたりしていて…」



嫌がらせを受けたことは、母親に言えませんでした。

菜々さんは、札幌ウポポ保存会に所属して、伝統舞踊や文化を学んでいます。



菜々さんの母、由美子さん(56)。保存会の先輩です。

由美子さんが活動を始めたのは30代になってから。

それまで、アイヌだということを親から教わらなかったと言います。

菜々さんの母 由美子さん
「おじいちゃんおばあちゃんはアイヌでも、私たちは違うっていう変な認識の仕方をした。今の時代とは違うようないじめが昔はあったので、私の母は私にアイヌだってことを言わなかった」

6人兄弟の末っ子の菜々さんは、生まれたころからアイヌ民族の歌や踊りを見て育ちました。

菜々さんの母 由美子さん
「(特別授業は?)嬉しいですねやっぱり。今は緊張と不安と、いっぱいいっぱいのときなので、温かく見守ろうかなと」

アイヌとして活動しながらも、学校では打ち明けられなかった菜々さん。

高校に入り、ある友人の存在が彼女を変えました。

新谷菜々さん
「『別に隠す必要ないでしょ。それは良いことだと思うし、自分の誇りだと思ってやっていけばいい』と言ってくれた。すごい嬉しくて、その時もちょっと泣いちゃった」

もう1人、彼女を支えてきた人がいます。

野口隆先生です。



札幌南高校定時制 野口隆 教諭
「教員として、アイヌ民族についての勉強はしてきたつもり。いろいろ大変だったんだろうなと」

アイヌのことをもっと知ってほしいと考えた菜々さんは、特別授業をしたいと野口先生に話しました。

新谷菜々さん
「語りと舞踊を見てもらう」

札幌南高校定時制 野口隆 教諭
「演舞も1時間くらい(時間を)取りますので、思ったこと全部やってください。卒業記念に。卒業できるのか?」

新谷菜々さん
「できますよ!」



体育館に集まった定時制の生徒約80人。菜々さんの特別授業の前に、野口先生からアイヌ民族の歴史や差別を受けてきた過去を学びました。



札幌南高校定時制 野口隆 教諭
「アイヌの人たちは大陸と交易をし、豊かな暮らしをしていた。そこに和人が入って来た」

新谷菜々さん
「アイヌの生活習慣だった狩猟・アイヌ語などがすべて禁止されたので、私たちはアイヌ語を話すことができません。口承されてきた歌や踊り、アイヌ語、儀式や食生活など復興を目指し活動しています」



そして保存会のメンバーと舞踊を披露。母と姉の姿もありました。

最後は参加者らと「輪踊り」を行いました。

新谷菜々さん
「すごかったって言ってもらえたから、やってよかったなって思いました。堂々とアイヌのことについて発信していきたい」

「アイヌであることを隠さなくてもいい」

菜々さんを変えた友人たちも授業に参加していました。



菜々さんの友人
「アイヌの魅力を知れて良かったです。かっこ良かったです」

想いを伝える楽器といわれているムックリ。

アイヌを好きになってほしい。

彼女の願いは、多くの人に響いたに違いありません。

北海道ニュース24