中国系企業の経営破綻で工事が止まった高級リゾート“バブル”に翻弄されるニセコ町、破産管財人「現時点で継承先は決まっていない」
2025年05月23日(金) 20時47分 更新
インバウンドで賑わうニセコ町で高級大型リゾート施設を建設していた中国系企業が経営破たんしました。「ニセコバブル」は、この先、どこへ向かうのでしょうか。
◆大型リゾート計画の突然の頓挫
・貴田岡結衣記者
「ニセコ町、曽我地区です。緑の木々の中の真っ青なブルーシートが目立ちますね、鳥のさえずりが聞こえるほど、工事現場は静まり返っていてなんだか異様な空間が広がっています」
ニセコ駅から車で10分あまり。見えてきたのは、中国系の高級リゾート「ニュー・ワールド・ラ・プルーム・ニセコ・リゾート」の建設現場です。
リゾートは地上9階、地下2階。219室のコンドミニアムに5棟の高級ヴィラ、温泉やプール、フィットネスクラブを備え、2021年に着工し来月には完成予定でした。
・荒木颯太記者
「L字型の大きな建物が見えてきました。ラプルームの建設現場です。白いシートで覆われていて、側面や屋上など鉄骨や骨組みが見えています。一部骨組みがあらわになっていて、工事が途中で終わっていることを感じさせます」
工事が止まったのは、2024年の夏ごろ。工事代金を受け取っていない建設会社が裁判所にリゾート開発を行っていた会社の破産を申し立てました。
破産手続きの開始が決まったのは、4月でした。
大型リゾート計画の突然の頓挫。
地元の人たちも戸惑いを隠せません。
・ニセコ町で働く人
「止まっちゃうと、仕事を請け負った日本の業者が大変じゃないかなと思う」
・ニセコ町で働く人
「規模大きいですよね。もうずっと止まったままだよねという話をしていた」
・ニセコ町の住民
「心配してもしょうがないけど、もったいないよね」
◆地元自治体「今の時点では気にしていない」と静観
一方、ニセコ町の担当者は静観の構えです。
・ニセコ町商工担当課 米田舜係長
「他にも例えば新しく宿泊施設を作りたいんだけど、みたいなご相談はあったりするので、今の時点では気にしていないというところです」
関係者の間には「リゾート事業の継承先がすでに決まっている」との噂も出ていますが、破産管財人を務める弁護士事務所は、HBCの取材に「現時点で継承先は決まっていない」と否定しています。
◆帝国データバンクはニセコエリアへのインパクトの大きさを指摘
北海道を代表する観光地の異変に23日、鈴木知事は…。
・鈴木直道知事(23日)
「国として投資に対して、自治体が身の丈以上に対応しなくてはならないことに対する財政的な支援とかそういったものがないと、投資も止まってしまう」
民間の調査会社帝国データバンク札幌支店は、今回の破産がニセコエリアに与えるインパクトは大きいと指摘します。
・帝国データバンク調査部松田尚也係長
「実際にこういうことが起きるんだというところをどうみるか。確実にニセコの開発における今回のひとつの倒産が影響を及ぼすことは間違いないかなと思う」
◆カツカレー3200円…物価高騰イメージを地元は払拭へ
ニセコエリアには、別の悩みも。
海外の富裕層相手についた、物価高騰のイメージです。
・中尾大輔ディレクター
「見てください、カツカレーが3200円です‥」
「物が高い」との印象から日本人観光客に敬遠されかねないイメージを払拭しようと、観光協会が打ち出したのが、ニセコ町版のカレーライス物価指数です。
ニセコ町内で購入できる具材などで試算すると、ニセコ町のカレーライスは375円。
全国平均より50円ほど安いとアピールします。
23日、ニセコ町内のスーパーをのぞくと玉ねぎ3つが268円。
物価は、道内の他の地域と変わらない印象です。
・Aコープようていニセコ店 戸澤卓也店長
「インバウンドで来られる方々とまたちょっと違うので、そこのギャップが現れているのかな」
・ニセコ町商工担当課 米田舜係長
「あたかもニセコが全部物価が高いというふうに捉えられがちなので、そうではないんです。あくまで普通に我々は暮らせているんですよと」
「バブル」に翻弄される観光地・ニセコ。華やかさの一方で不透明さを増しています。