【メディア初取材】「政府専用機 新人たちの舞台裏」秘密のベールに包まれた機内で“ビールですか?”“与圧系統に不具合”過酷な訓練に密着
2025年05月03日(土) 07時45分 更新
総理大臣など要人たちが乗る“政府専用機”。配属された6人の新人の訓練に密着、メディア初取材です。
・地上訓練の様子
「ツカダさまの反応がありません。東さんは機長とSIC(リーダー)に報告してください」
緊急事態の訓練です。
ホールを飛行機の機内に見立てて、CA業務をするのは航空自衛隊千歳基地・ロードマスターと呼ばれる空中輸送員の新人たちです。
・特別航空輸送隊 竹村正哉 さん(43)(2025年3月)
「6人は令和7年3月1日付けをもって“特別航空輸送隊”勤務を命じられました」
“特別航空輸送隊”とは、政府専用機を管理する部隊です。
6人は、日本各地の航空隊から選抜されてきました。
階級も出身も年齢もバラバラ。あこがれを抱いて入隊を希望した精鋭たちです。
・特別航空輸送隊 竹村正哉 さん(43)
「要人と接する機会が増えてくると思いますので、失礼のないように訓練をしっかりして」
・特別航空輸送隊 桒原歩さん(31)
「憧れてなれたので、先輩方のように一生懸命頑張りたい」
・特別航空輸送隊 望月大さん(27)
「安全で快適な接遇をしたい」
・特別航空輸送隊 松田遥佳さん(26)
「せっかく空自に入ったので、空自でしかできないことをやりたくて」
・特別航空輸送隊 水口遥さん(26)
「いろいろな人にかかわると思うので、そのつながりを大切にしつつ、持ち前の笑顔と明るさで接遇をしていきたい」
・特別航空輸送隊 東美羽さん(22)
「私だけ階級が下なのですが、ずっと憧れてきた職種なので、この階級に甘えることなく必死で食らいついて、仲間と高め合いたい」
政府専用機は、1987年に導入された特別輸送機です。
現在の機体は2代目で、2019年4月から運用。首相や要人の外国訪問や国際会議出席など、いつでも飛び立つことができるよう 千歳基地に2機が待機し、整備もパイロットもすべて特別輸送隊が担当します。
さらに。
馬渕亮文 1等空曹
「緊急に入ったミッションに対して、最近ではトルコで大地震(2023年)が起きたのですが、物品、テントなど運ぶ作業を実施しました」
最大航続距離 約1万4000キロメートル。
給油無しでフランスまで飛ぶことができる政府専用機は、国際緊急活動や国際平和協力など様々なミッションを担っています。
・特別航空輸送隊 水口遥さん
「おすすめはありますか?」
訓練も笑顔を絶やさない水口さん。
航空自衛隊での生活をリポートしてくれました。
仲間と大好きなアニメや漫画などで盛り上がります。
・特別航空輸送隊 水口遥さん
「私たちの部屋を紹介します!」
・特別航空輸送隊 東美羽さん
「自分の住むスペース内だと、自由にカスタマイズができるので、こういったちょっとした家具類も買うことができます」
・特別航空輸送隊 水口遥さん
「ご覧の通り物が少ないです!」
普段は普通の20代の女性ですが、訓練となると表情は一転。
◇政府専用機の訓練はメディア初公開
4月9日。政府専用機の訓練はメディア初公開です。
ロードマスターは荷物の管理、重量計算、そしてCA業務もこなします。
6人の新人たちにそれぞれ教官役が付き、教官は乗客役もします。
・教官「ビール頂けますか?」
・特別航空輸送隊 水口遥さん
「ビールですか?かしこまりました…」
突然の声掛けに戸惑う水口さん。 ビールをぎこちなく提供します。
・特別航空輸送隊 水口遥さん
「めっちゃ震えました…」
・教官
「注文は必ず復唱する、大きな声でOK?」
実際の空の上で行われるため、揺れなど地上の訓練とは違います。
自衛隊に入り、初めての接客に苦戦の様子。そこに!
・アナウンス
「シートベルトサインが点灯しました。カートを出しておくには厳しい揺れです」
・特別航空輸送隊 東美羽さん
「乗客の皆様ベルトをお締めください!」
料理のサービス中に突然の大きな揺れが発生。作業を中断して、自分も座席に着かないといけません。
操縦席からもアナウンスが飛んできます。
・アナウンス
「シートベルトサインが消えました」
新人たちに次々と問題が課せられていきます。
・特別航空輸送隊 東美羽さん
「ものすごいスピードでやっているんですけど…、いや難しいです本当に!」
・アナウンス「操縦室よりお知らせします。当機は与圧系統の不具合が発生したため緊急降下を実施しました」
機体に異常が発生というシチュエーションに。
現場の緊張感が一気に高まります。
・特別航空輸送隊 水口遥さん
「ただいま、機体内外に異常がないか確認しております」
・特別航空輸送隊 東美羽さん
「機体内外に損傷を発見された方はお知らせください!」
状況を確認する新人隊員たち。ここで、窓に10センチの亀裂があることを発見。
・特別航空輸送隊 東美羽さん
「風の音は聞こえないです」
・教官
「この方、席移動を。ここに空いている席はないので、アフター(後方)エリアにて調整します」
安全のため乗客を移動させる東さん。後方エリア担当の水口さんに乗客を託します。
冷静に対処する新人たちですが、試練は続きます。
・アナウンス
「当機は、先ほど発生した機体の異常により、これ以上の飛行の継続は困難と判断しました。最寄りの○○国際空港に着陸します」
緊急着陸のアナウンス。笑顔が自慢の水口さんの表情も険しくなります。
・特別航空輸送隊 水口遥さん
「ただいまから着陸衝撃から身を守るための衝撃防止姿勢について説明します!」
「この姿勢は、私たちが『頭を下げて!』といった時から『シートベルトを外して!』 というまでとり続けて!」
・アナウンス「着陸30秒前。衝撃姿勢をとれ」
・隊員
「頭を下げて!」
機体は緊急着陸へ。新人たちは乗客に向かい叫び続けます。
・アナウンス
「当機は滑走路に接地。大きな音響とともに衝撃を伴って滑走中。航空機止まらない」
・特別航空輸送隊 水口遥さん
「頭を下げて!」
・アナウンス「滑走路を逸脱して、洋上にて機体完全停止」
・特別航空輸送隊 水口遥さん
「機体停止…大丈夫落ち着いて!着水!着水!シートベルトを外して!」
海の上に停止した航空機。
救命胴衣を着させ、急いで脱出させないといけません。
東さんがいるエリアでは…。
・教官
「このドアダメ!このドア使えない。前を確認して!」
・特別航空輸送隊 水口遥さん
「L4(ドア)OK!脱出!脱出!」
ここで訓練終了。水口さん、少し放心状態です。
・特別航空輸送隊 水口遥さん
「自分だけの命ではなくて、乗客の命も預かっているので、この職に就くと決めた時からしっかりと(気持ちを)切り替えていこうと」
・特別航空輸送隊 東美羽さん
「先輩や同期に情報共有を行って、ミールサービスができたら、より質の高いサービスができたんじゃないかな」
・特別航空輸送隊 松田遥佳さん
「大まかな動きはしっかりと訓練通りできたのかなと思っております。けど、やはり少し手が届かない部分があったりとか、教官に指導を頂いたところがあるので、今後改善できれば」
新人たちの訓練は、今日も続きます。