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トラブル続出のJR北海道に2年間の“異例”監査 現役社員「人員不足と若年退職の影響」交通政策の専門家「抜本的な改善を社内だけでできるかは疑問」

2025年05月27日(火) 21時09分 更新

安全にかかわるトラブルが続く、JR北海道。

・三國谷浩司記者
「午前10時です。国交省と北海道運輸局の係官が、JR北海道本社に監査に入りました。」



国土交通省は、JR北海道に対し、27日から約2年間にわたり、継続的に保安監査を行う「強化型保安監査体制」に入りました。

この制度が適用されるのは全国で初めてです。

・JR北海道の現役社員
「だから、甘いんですよ、安全に対して甘くなってきてます!前よりは」

異例の監査の背景をもうひとホリします。

◆見張りを置かず線路に立ち入り…そしてウソの報告

ことの発端は、2024年11月でした。

JR函館線の砂川駅で、保線作業員が、見張りを置かずに線路に立ち入り、貨物列車が緊急停止しました。

しかし担当者は、その事実を隠そうと会社にウソの報告をしていました。



・JR北海道 綿貫泰之社長
「多大な不安や不信感を与えてしまい深くお詫び申し上げます」

◆貨物列車脱線事故現場では安全確認をしないまま、対向列車を通過させる

同じく11月、北海道・森町の貨物列車脱線事故では安全確認をしないまま、対向列車を通過させていました。

こうしたトラブルをうけ、国交省は3月、JR北海道に「改善指示」を出しました。

・北海道運輸局 井上健二局長
「輸送の安全確保の仕組みを根底から覆す行為であり、到底容認できるものではなく極めて遺憾である」

JR北海道は道内34か所の保線管理室に聞き取りを行い、4月、再発防止に向けた「改善報告」を国に提出しました。



・JR北海道 山北一郎安全推進部長
「これまで安全の取り組みをいろいろ見直してきたが。必要な措置を講じていく」

しかし、トラブルは後を絶ちません。

◆見張り担当者が、保線作業に加わる

今月9日には、北海道・長万部町の函館線で、見張りの担当者が、見張りをせずに保線作業に加わっていたことがわかりました。

さらに15日には運転士の操作ミスで札幌駅で列車が急停止し、乗客6人がけがをしました。

国への改善報告後にも、安全に関わるトラブルが続いたことで、国交省は、今回の「強化型保安監査」に踏み切りました。

安全軽視ともいえるトラブルは、なぜ続くのでしょうか?JR北海道の現役社員は…





◆人員不足と若年退職の影響

・JR北海道の現役社員
「人員不足と、若年退職が影響していると、ひとつは思いますよね、例えば、見張りを配置したとしても、作業人員が少なくなっているので、どうしても、負荷がかかったり、見張り員が作業に参加してしまう風土って、あるんじゃないですかね。若年層退職が多いもんですから、どうしでも中間層が育たない…それもあって技術的なこと安全的なことが社員の知識で高まっていかない…」

専門家は、今のJR北海道の経営状況が背景にあると指摘します。



・流通経済大学(交通政策) 板谷和也教授
「特に黒字経営がなかなか見込めない状況である以上、例えば人手が不足したときに、それを改善するための効率化が必要なわけだが、そのための投資も十分にできないような状況で、毎年経営を繰り返していることを考えると、本当に抜本的な改善を社内だけでできるかというと、ちょっと疑問符がつくところ。少しでも人手不足とか投資不足とかが改善できるようにしていく必要がある」

そして、今の社内の空気を、現役の社員はこう語りました。

・JR北海道の現役社員
「話し合える、コミュニケーションとれるような職場にしようや、会社にしようやっていうような雰囲気に、本社含めてなってないからこういうことが起きるんですよ」

板谷(いたや)教授も労使関係の改善が安全対策につながるといいます。



◆労使間の話し合いが不十分

・流通経済大学(交通政策) 板谷和也教授
「労働側と経営側の間で、きちっと話し合いができていないのではないかと言われていた。昨今の工事状況を見ていると(話し合いが)十分ではなかったのかなと思っていて、さらに会社の中での改善が必要だろうと思う」

◆今回の監査をきっかけに改善へ

・堀啓知キャスター
トラブルの中にはJR北海道の経営状況や、そして社内事情など様々な要因があるみたいですけれども、今回の監査をきっかけに改善の道へ進んでいけるのか、ということだと思います。

都合の悪いことを隠してウソの報告をする、というのは今回だけじゃなく過去にも起きているので、信頼回復が遠のいてしまったのかなという気持ちになります。

◆2014年には「常設監査体制」、2020年は「安全アドバイザー会議」

・森田絹子キャスター
今回2年間の監査が始まったJR北海道ですが、長期にわたる監査というのは初めてではありません。



2013年に大沼駅で起きた貨物列車脱線事故で、レール幅のデータ改ざんが発覚しました。

これを受けて2014年から5年間にわたって国が「常設監査体制」をとりました。

これは、国からの業務改善命令と監督命令の取り組み状況を確認するというものでした。

その後JR北海道は、2020年に「安全アドバイザー会議」というものを設置し、外部の有識者から業務の安全について助言と指導を受けます。

また、社員にも報告の重要性を再確認するパンフレットを配布するなどして、安全意識を高めてきました。

◆JR西日本の福知山線脱線事故から20年

・堀啓知キャスター
脱線事故を教訓に取り組んできたはずなんですが、昨年末からまたトラブルが続いているということになります。

今年の4月には、JR西日本の福知山線の脱線事故から20年という節目だったわけですけれど、事故の後、遺族は今でも苦しんでいます。

やはり、人命に関わる大きい出来事が起きてからでは遅いんですよね。ですので、安全教育、安全対策に早急に取り掛かってもらいたいなと思います。

北海道ニュース24