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“貯金枯渇”で毎年30億円が足りない「できることはやってみようと…」公園や市道の命名権売り出しで難局打開?平成の大合併が招いた危機的事態 北海道北見市

2025年06月28日(土) 09時30分 更新

 北海道オホーツク地方で最大の自治体、北見市がいま、深刻な財政難に直面している。来年度から毎年30億円も不足するという市の財源。打開策はあるのだろうか?

◆《噴水が止まり…銭湯も閉鎖 危機的な台所事情》

合併記念イベント(2006年3月・北海道北見市)
 新生“北見市”の誕生を祝うカウントダウン・イベント。思えば、なんとも華々しい門出だった。2006年、いわゆる“平成の大合併”で、北見市と周辺の3つの町は、1つの自治体になった。その広さは、札幌市をしのぐ、北海道最大の面積だ。

だが、合併から19年…北見市はいま、危機的な財政難に陥っている。

子どもたちの憩いの場では、噴水設備の水が止まり、50年以上も、地元で愛されてきた市営の銭湯は閉鎖された。ほかにも植物園などが廃止に…。

藤田忠士記者
「小さなこちらの公園、ここもネーミングライツの対象になっている」



北見市が管理する公園や道路の命名権も、いま売り出し中だ。“焼き肉のマチ”として知られる北見市の台所事情は、かなり深刻だった。

北見市 辻直孝市長(2025年2月)
「運用できる基金残高が、わずかであることなど、財政調整機能が大変弱い状況にある」



北見市ではもう何年も前から、“市の貯金”にあたる「基金」を取り崩し、財源に充ててきた。ところが、その基金が2026年度で底をつき、毎年30億円の財源不足になる見通しだ。

◆《10枚入り1350円のごみ袋も…市民生活にも影響》

藤田忠士記者
「(スーパーの商品棚には)北見市指定のゴミ袋が並んでいますが、2026年年10月から値上げを計画しています」

ごみ袋1リットルあたり、1円の値上げを決め、約1.5倍になる。例えば、45リットルのごみ袋は、10枚入りで900円から1350円に値上げされる。北見市民から聞こえてくるのは嘆きの声だ。



北見市民
「(ごみ袋の値上がりは」聞いているよ。上がったら困る…1.5倍も上がるの?大きいねぇ」
「値上がりを聞いた時にすぐに買った。買い置きした」

こうした買い置きの動きも見られるが来年10月以降、現行のごみ袋がそのまま使えるかなどについては、まだ何も決まっていない。

◆《北海道で最大面積の北見市…財政ピンチの元凶は?》

 札幌市よりも広い面積を持ち、約11万人が暮らす北見市。市道や水道管の長さ、図書館、体育館、市立保育園の数など、いずれも北海道内で最大規模だけに、維持するための負担も重い。



北見市 辻直孝市長(2025年6月)
「施設の休廃止・集約化・複合化の議論を早急に進め、しかるべき時期までに判断していきたい」

北見市が直面する財政難の問題。すべての始まりは、2006年の大合併にあったと指摘する人物もいる。当時、北見市との合併に参加しなかった訓子府町の元町長、菊池一春さんだ。

元訓子府町長 菊池一春さん
「貧乏の北見と、貧乏な訓子府が結婚して金持ちになりますか?と言った。なるわけねぇじゃないそんなの」「俺が4期16年、町長をやっている間に、合併後に北見市長は、神田、小谷、桜田、辻と4人も変わった。4人やると新しい事をやろうとするしょ!?」



 1999年から2010年にかけ、国が推し進めた“平成の大合併”。北海道では212あった市町村が179となった。合併すれば、国に借金しても“3割の返済だけで済む”、そうした優遇措置が、自治体には用意された。合併特例債である。

元訓子府町長 菊池一春さん
「政策的に合併特例債を使おうと、過疎債を使おうと…そうすると借金がどんどん膨れていく。おまけに“ふるさと納税”が…あぶく銭みたいな金が入ってくる。それで何とかやれるだろうと」

いわば“7割引で買い物ができる”。合併特例債は、地方自治体にとって魅力的だった。

北見市では合併後、市役所の建て替えに活用するかが、市長選の争点にもなった。新庁舎のほか、常呂カーリングホール、そして山の水族館など…。

公約実現のため、市長が交代するたびに、合併特例債が使われ、気がつけば、国からの借金は、大きく膨れ上がっていた。

北見市民
「合併したら協力できていいのかなと思ったんですけど、そうじゃないんだな」
「地域の切り捨てじゃないけれど、ある程度に集約するというのが、もっと昔にしておくべきだったんだろうなと思った」

◆《公園220か所&市道3600路線の命名権も売り出し中》
 
 北見市ではいま、財政立て直しのため、さまざまな対策の検討が進められているのだが…。

藤田忠士記者
「小さな公園ですが、ここもネーミングライツの対象になっている」

北見市はいま、市内に約220か所ある公園の命名権、いわゆる“ネーミングライツ”の売り出しを進めている。

北見市 都市建設部都市計画課 石田博貴課長
(Q.町内にあるような小さな公園でもやる?)
「できることはやってみようと…。地域の企業さんとかが地域貢献でというニーズもありますので」



応募できるのは企業や団体で、社名や商品名など、好きな名称をつけることができる。

公園の看板を架け替える費用は負担する必要があるものの、住宅街にある小さな公園であれば、命名権は年間10万円。大きな公園やキャンプ場であれば年間60万円と、規模や知名度によって販売価格は異なる。

北見市が売り出している命名権は、公園だけでなく、市道も対象となっている。

北見市 都市建設部都市計画課 石田博貴課長
(Q.市内の市道も全部、ネーミングライツに出していると聞いたが?)
「市道約3600路線。原則としては全て対象。愛称は道路標識に表示することもできる」

片側車線だけの市道なら30万円。交通量が多い市道や、4車線ある路線は60万円となっている。



やれる事はすべてやる。もはや問題解決は“待ったなし”の財政危機。北見市の正念場はこれからだ。

◆《財源確保は待ったなし…寄付額50億円目指す“ふるさと納税”》

世永聖奈キャスター)
北見市によると、公園、市道ともに問い合わせはあるものの、正式に命名権を取得したい…という応募は、ごく僅かとのことです。

堀啓知キャスター)
 北海道内最大の広さを持つ自治体ですから、公園も市道も沢山あって、商品の数は豊富なんでしょうけれど、30億円の財源不足を補うには、かなり厳しい状況にあるようですね。

世永聖奈キャスター)
 北見市では財源確保のため、命名権のほか、財源確保のため、昨年度、ホタテや玉ねぎなど約30億円の収入があった『ふるさと納税』の寄付額も、今後50億円に伸ばす目標を立てています。

堀啓知キャスター)
 行政機構の合理化を目指した“平成の大合併”で、全国の市町村は、約“3200”から“1700”と数を減らしました。ただ、自治体の取り組みによっては、北見市のように財政難に陥るケースも少なくないとされます。

やはり、市民の協力なしには、この財政ピンチを解決することはできないので、“やれることは何でもやる”、そうした強い決意とともに、丁寧な説明をしながら、北見市には取り組んでもらいたいと思います。

北海道ニュース24