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路線バスの運転手は「地域おこし協力隊」全国初の取り組みに町民歓迎、人口減に転じた札幌市も初めて1人募集「大阪や東京から呼び寄せる取り組みも必要」

2025年05月19日(月) 23時01分 更新

地方の活性化を目指す「地域おこし協力隊」。その取り組みは、こんなところにも広がり始めています。



・ニセコ町おやこ食堂
「おいしいでーす!」

こども食堂の運営に…地元産のワイン作り。

・栗山町ラジオDJ隊員
「皆さん、こんにちは!」

地元ラジオ局のDJも。

実はみんな、過疎に悩む地方に移住して、地域の盛り上げを担う「地域おこし協力隊」の隊員です。

・美幌町地域おこし協力隊廣田剣さん
「このバスを通じて皆さんが笑顔になっていただけるように…」

そして、なんとこのマチでも…



・札幌市 まちづくり政策企画部 児玉哲寛 課長
「移住者ならではの視点で、札幌市の良さを発信してほしい」

多様化する「地域おこし協力隊」。その最前線を、もうひとホリします。

◆美幌町では路線バスの運転手に

・自動音声「次は仲町団地です」

北海道オホーツク地方の美幌町です。



町内を巡る路線バスの運転手廣田剣さん、三重県出身の46歳です。

・乗客「ありがとうございました」

もともと運転手ではなく、実は…



・就任式(2024年11月)
「ありがとうございます!」

2024年11月に就任した、美幌町の「地域おこし協力隊員」です。

運転手の不足で、スクールバスの運行が難しくなった美幌町は、2024年、「地域おこし協力隊」の制度を活用し、「運転手」として、マチを支えてくれる人を全国募集。

真っ先に応募したのが、廣田さんでした。

・美幌町地域おこし協力隊 廣田剣さん
「前に勤めていた仕事が契約満了が決まっていたんですけど、旅行に行ったときに住みよいマチだなと思ったので1回住んでみようかと」

「地域おこし協力隊」は、2009年度に始まった国の制度です。

都市部から地方に移住し、農業や福祉など「地域おこし」しながら、地方への定住を促します。

廣田さんに与えられたミッションは、美幌町がバスの運行を委託している、阿寒バスの運転手です。

移住や免許の取得にかかる費用は、美幌町が補助しました。

廣田さんは、阿寒バスに入社し、スクールバスや町内循環線の運転を担当します。



・美幌町 平野浩司 町長
「公共交通の運転手がいないから来ませんか?ではなかなか道外から来ていただけるのは難しいと実感した。町がしっかり関わってバス運転手を確保すべきだと」

地域おこし協力隊員が、民間のバス会社に入り、路線バスの運転手になるのは全国で初めて。町民も歓迎しています。

・美幌町民
「このバスなかったらどうもならん。バスの運転手さん、みんな親切な人たちだからいいわ」
「いま運転手不足だからいいと思いますよ」

・松本雅裕記者
「任命された運転手は廃止された鉄道の代替交通も担っています」

美幌町は1月にも、協力隊員をもう1人迎え、北海道北見バスに派遣。

1985年に廃止された鉄道に代わり、地域住民の足を担っています。

・美幌町地域おこし協力隊 浜谷真幸さん(48)
「来てくれてありがとうございますとか直接言っていただいて、それはすごく嬉しかったです」

◆札幌市も初めて1人募集

「地域おこし協力隊」の制度スタートから16年。

2025年度、初めて募集に踏み切ったのが…



人口196万人の札幌市です。募集は1人。

最大のミッションは「札幌の魅力を広く伝え、移住者を増やすこと」で、「三大都市圏」をはじめ、本州・九州の「大都市」の住民が募集の対象です。

全国の都市で4番目の人口を誇る札幌市で、いったいなぜ?



・札幌市 まちづくり政策企画部 児玉哲寛 課長
「実際、札幌市から大都市圏に出ていく方がやっぱり多いので、東京ですとか、大阪ですとか…であるならば、今度は大阪や東京から逆に呼び寄せる、そういった取り組みも必要なんじゃないか」

2021年をピークに、人口が減少に転じた札幌市。

北海道内各地から、引っ越してくる人がいる一方で、就職で東京などに出ていく若者が多くいます。

地方の過疎化を食い止めつつ、大都市から、札幌市に人を呼び寄せることが必要なのです。

◆隊員の報酬や活動費などかかる費用800万円は交付金でカバー

さらに、こんな理由も…

・札幌市 まちづくり政策企画部 児玉哲寛 課長
「この協力隊に対しては国からの補助金といいますか、予算がありますので、それを活用するというのが大きな要因になりますね。財源の面で正直なところ、そこは大きいですね」

隊員には、1か月の報酬として約27万円と、2026年3月までの経費として117万円が与えられます。

そのほか、募集などにかかる費用も含め、札幌市の地域おこし協力隊の取り組みにかかる費用は、2025年度約800万円。

この全額を国からの交付金でカバーします。



札幌市は面接などを経て、早ければ9月から隊員の受け入れを始めます。

新しい魅力の発掘と発信、そして移住へとつながるのか注目です。

◆制度開始16年、任期終了後の定住は55.7%

札幌市によりますと、19日時点ですでに1人の申し込みがあったということです。

総務省によりますと、全国の「地域おこし協力隊」の隊員数は、2024年度、過去最多となる7910人。

このうち北海道の隊員数は1307人と全国で最も多い割合です。

最長で3年の「地域おこし協力隊」制度ですが、人口を増やし、地域を活性化させるためには、隊員がその土地に定住してくれるかが鍵です。

総務省のデータでは、任期終了後同じ市町村に定住するケースは55.7%でした。

「地域おこし協力隊」の制度に詳しい弘前大学大学院の平井太郎教授は…

隊員が定住したあとで子育て時期に差し掛かると、保育施設がない、小学校が遠い、などの理由で転出するケースがあり、仕事面だけでなく、家族の暮らしの面でもフォローをしなければ、本当の意味での移住は根付かないと話しています。

北海道ニュース24