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北海道初上陸“動くライフライン”カスタム軽トラック1台でガス・電気・水道を供給…被災地で活躍期待 川や湖の水も浄化し安全な飲み水に

2025年08月26日(火) 19時57分 更新

8月、北海道に初めて上陸したこの軽トラック。災害時に活躍するというんですが、一体どんなクルマなのでしょうか。

8月20日、釧路市白糠町にやってきた1台のクルマ。



一見ふつうの軽トラックですが、車体には、水やコンセントプラグ、炎のマークが。いったい、これは…?

二二商会 佐藤智哉さん
「『災害支援車』馴染みのない言葉ですが、一言で言えば『動くライフライン』です」

「動くライフライン」、その名も「LCX」(エルシーエックス)。



災害が起きてライフラインがストップしても水道・電気・ガスの3つを、この1台でまかなうことができるというのです。

荷台を開けると…まず、目につくのはLPガスのタンクです。



軽油などと比べて長期保存が可能で「災害に強い」といわれるLPガス。

これを使えば、被災地でも温かい食事をとることができます。

LPガスで発電機を動かし、電気を確保。そして、もっともこだわったのが…

災害のあと、復旧に時間がかかるのが「水道」です。

でも、クルマのなかに水のタンクは見当たりません…



二二商会 営業部 佐藤智哉さん
「逆浸透膜浄水という方法になるのですが、ピュアウォーター(純水)が生成される浄水方法です」



このクルマは、水を避難所に運ぶのではなく、近くにある防火水槽や、川、湖などの水をその場でろ過して、安全な飲み水を作り出すことができるのです。

試しに、抹茶ラテの粉末を混ぜた水を、この浄水器でろ過してみると…

岡田純リポーター
「すごいまろやかで、水道水よりもクセがないです。抹茶のニオイなどもすべて消えています」

1時間で約125リットルの飲み水をつくることができます。

これらの機能は、最大で20時間、稼働可能。

クルマ自体も軽トラックなので、普通自動車免許で運転でき、小回りもききます。

「LCX」を開発したのは、山形県で救急車などの製造・販売を手がける「大江車体特装」です。



大江車体特装 大江晴久社長
「今までは(倉庫に備蓄する)固定型のインフラおよびライフラインだったものが、車に搭載することによって、移動型で提供できるということころが一番の特徴になる」

大江社長は、東日本大震災で、被災した人に水と温かい食事を届けることの必要性を痛感したといいます。

その教訓をもとに「LCX」を開発。

2024年1月の能登半島地震では、石川県の社会福祉協議会に無償で貸し出しました。

大江車体特装 大江晴久社長
「水を作る車が移動してこちら(避難所)に来るという発想の転換、新しい発想と文化をどれだけ広めていけるかなというふうなことを考えて、今プレゼンテーション活動を進めている」

二二商会 佐藤智哉さん
「実際にこういった車両を、防災減災に努めていらっしゃる第一線の皆様に、知っていただく…」

8月、札幌の会社を通じて、北海道東部のマチでデモンストレーションを行った「LCX」。

役場の防災担当者の反応は…?

白糠町職員
「ふつうにおいしいです。大丈夫です」



白糠町職員
「まだまだ、開発の余地があったりとか、これからの発展性をすごく感じた。寝かせておくのはもったいない物なので、普段から使ってて、それを有事に使う、という形でやっていただけるとありがたい」

堀啓知キャスター)
「動くライフライン」と聞いたときは大型の車が来るのかと思っていましたが、コンパクトな軽自動車ということで…誰でも運転できるということですね。

小橋亜樹さん)
有事の際だけでなく、普段から私たちも使えるような場面があると、ますます身近に感じられていいんじゃないですかね。

堀啓知キャスター)
普段から使っていないと、いざという時に使えないので、当たり前のように普段から使えるような環境になっていったらいいなと思います。



堀内大輝キャスター)
2021年に「LCX」の販売を開始しましたが、2023年に山形市が初めて導入し、2026年は山形県南部の長井市で導入予定です。

長井市の場合、導入の予算額は約830万円で、このうち2分の1は国の補助金が出るということです。

8月は白糠町のほか、釧路市や根室市など北海道東部の10自治体をまわり、デモンストレーションを行いました。

メーカーの「大江車体特装」によりますと、こうしたクルマの認知度はまだこれからですが、災害が起きたときだけでなく、山奥の建設現場や、商店街のイベントでの使用も期待できるということです。

満島てる子さん)
イベントでステージトラックとして貸してもらった車が電源を搭載していて災害時に出動したことのあるトラックで、大いに活用させてもらったんですよね。

各種イベントでこの車を活用していくことで地域おこしの一つの原動力になるのであれば、災害時意外の活躍も見越せると思います。

もちろん災害時に全てのライフラインをまかなえるというのは心強いと思うので、北海道でも各地で導入していくべきだと思います。

堀内大輝キャスター)
「LCX」はカスタマイズすることも可能でライフラインに限らず、例えば地域の要望に沿った機能をを持たせることも可能です。

堀啓知キャスター)
災害の種類は、地震や津波、水害など多様なので、多様な災害に対応できる「災害支援車」が普及してほしいなと思います。

北海道ニュース24