ノースサファリ問題で発覚の「市街化調整区域」の違法建築…札幌市内に約3300棟、道内初のジン蒸溜所も“用途外”秋元市長「活用するほうがよければ、見直しも」
2025年05月14日(水) 20時22分 更新
札幌市のノースサファリの問題発覚で注目が集まる市街化調整区域の違法建築物。その実情を取材しました。
◆北海道初のジン蒸溜所も“用途外”
爽やかな香りが特徴的なジン。ミントやラベンダーなど札幌育ちのボタニカルが風味を引き立てます。
札幌市のふるさと納税の返礼品にもなっているこのジンをつくっているのは、札幌市南区のジンの蒸溜所です。
7年前に誕生し「北海道内初のジン蒸溜所」としても知られています。
しかし…。
泉優紀子記者
「そのジンの蒸溜所は、林の中にある公園内にあります。しかし、法律に照らすと違法状態にあるということなのです」
札幌市都市局開発指導課 坪田修一 課長
「ここはジンギスカン用の『倉庫』として認められているものなので、あくまで倉庫として使い続けてという指導になる。それが蒸溜施設として使われているので是正してくださいと指導している」
建物の用途は「倉庫」のため「蒸溜所」には使えないのです。
この建物、実は原則、限られた用途以外の建物が建てられない「市街化調整区域」の中にあります。
◆無秩序な市街化を防ぐ目的
この地域が「市街化調整区域」になったのは札幌オリンピックを2年後に控えた1970年。
人口の増加に伴う無秩序な市街化を防ぐことが目的でした。
札幌市の開発指導課は、蒸溜所誕生の翌年2019年に勧告書を出し、倉庫に戻すよう求めています。
その一方で、同じ札幌市の保健所は蒸溜所に対して酒類製造業の施設としての許可を出しています。
札幌市保健所食の安全推進課 寺島寛樹 課長
「法のたてつけもあって食品衛生法上の施設基準に合致していれば許可を出さざるを得ない」
札幌市によりますと、蒸溜所側は是正にむけた動きを進めているということですが、蒸溜を続けるには、この場所を離れるしかありません。
市街化調整区域は、新たに事業を始めようとする人にとって、活用に限界がある土地なのです。
◆札幌市内に違法建築は約3300棟
札幌市によると、市街化調整区域内の違法建築は約3300棟。
このうち87棟が、今回のような用途違反の建物です。
市街化を抑制する「市街化調整区域」。
自治体が指定する背景には、住宅が点在してしまうと道路や水道などのインフラを計画的に整備することが難しくなる事情があります。
一方で、札幌市は、観光対策などから、丘珠空港や札幌ドームの周辺などで規制を緩和し、限定的に土地を活用できないか検討を始めています。
◆活用するほうが地域にとってよいのであれば…
札幌市 秋元克広 市長(4月24日)
「時代によって沿線の状況は変わってくるので、今後将来にわたってそこを活用するほうが地域にとってよりよい場所であれば、見直しをしていくことになる。一律に物を考えない」
人口減少が急ピッチで進む札幌市。マチの活性化のためには市街化調整区域の土地活用の検討も選択肢のひとつです。