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見栄えだけじゃない…経営者の思いを重ねたデザインで競争力強化、人材採用や新たな客層の開拓も 企業に広がる「デザイン経営」という視点

2025年06月11日(水) 16時26分 更新

「デザイン経営」という言葉をご存じですか?これは経済産業省と特許庁が2018年から推進している、「デザインを企業価値向上のために活用する経営のこと」です。

経営のトップが、製品などのデザインに深く関わることで、企業ブランド向上や競争力の強化などの効果が期待できます。

「デザイン経営」でどんな変化が生まれるのか「もうひとホリ」します!

◆大胆なデザインのパンフレットで成功した新卒採用7人

熟練の目利きで選んだ魚をスーパーや飲食店に卸す、創業66年の仲卸会社です。



副社長の本間雅広さんは、若い世代の採用に力を入れてきましたが思うような結果が出ていませんでした。

・一鱗共同水産 本間雅広 副社長
「市場で売るのが基本的な仕事なので、外回りとかもそんなにないし、(採用は)縁故採用みたいのが、多分ほとんど」

そこで、6年前、初めて採用パンフレットを作ることにした本間さん。



できあがったパンフレットは、魚をかたどった大胆なデザインです。

屋号の「ウロコ」をポップに配置し、ページをめくると、働く社員の思いが、躍動感のある写真とともに記されています。

このデザインを担当したのが、札幌市で中小企業のブランディングを手がける、デザイナーの江川南さんでした。

・一鱗共同水産 本間雅弘 副社長
「ノーマルのだけはやめてくださいみたいな指示をしたと思うけど」

・RESUPPORT 江川南 代表
「そうですね、思いだけあるみたいな。こんな魚のパンフレットを見たことがないと言ってくれたりしたので、見る人が面白がってくれる手ごたえはあった。経営者と話をする中で経営者の思いや言葉をデザイナーが整理する」

このパンフレットを使い始めてから、新卒社員7人の採用に成功しました。



一鱗共同水産 小島航さん(新卒2年目)
「ちょっと魚の形をしたパンフレットがあって、それを見ておもしろそうだなと思った/(就職サイト情報だけで会社を受けたか?)いやー、正直存在を知らなかったと思う」

◆デザインに重ねる商人の思い

さらに思いがけないプロジェクトも…。

「いらっしゃいませー」

本間さんの会社が卸した新鮮な魚介類が自慢の飲食店です。

リゾットや夜パフェの有名店とタイアップして、5年前にオープンしました。



店内には、パンフレットの表紙になった、あの「魚」が、そこかしこにちりばめられています。



・GAKU 橋本学 代表
「デザインの面白さと、失礼かもしれないですけど、仲卸業で、そこのデザインに向けられてて、すごいステキだなという思いはある」

本間さんは、改めて「伝える」形の大切さを、身にしみて感じています。

・一鱗共同水産 本間雅弘 副社長
「人に伝える上で、デザインはある程度大切だと思うし、餅は餅屋と思うので、そういう人に相談するとか、そうやっていくのが一番いいのかなと」

◆業界のイメージを刷新

札幌の狸小路にあるカプセルトイの専門店。



ここも、「デザイン」を取り入れ、成長を続ける会社のひとつ。

・トーシン 佐々木繁さん
「狸小路4丁目の店舗が、タヌキプラネットというテーマ。提灯で化けているような感じの、ちょっとポップな感じのタヌキのイラストを使って、というテーマでやっている」

北海道帯広市に本社を置く「トーシン」です。

これまで「薄暗い」イメージだったカプセルトイ業界。

地域の歴史や名物などをデザインに取り入れ、インバウンドなど新たな客層を呼び込みました。

こうした店舗は、全国で200店以上に広がっています。



・トーシン 宮本達也 社長
「経営者の製品に込めた思いや地域社会にどう貢献していくかみたいなところをデザインに落とし込んで、ということをやっていけば、それがちゃんとわかっていただける方には届くのかなと思う、それが大事なのかなと」

◆専門家「デザインを軸に経営や自社のあり方を見直す」

専門家は、「デザイン経営」の考え方は、企業のあり方を見直すために必要だと指摘します。



立命館大学経営学部 八重樫文 教授
「デザインを軸に経営自体、または自社のあり方自体を見直そうという試みなので、社会に対して、良い影響を与えていけるのかっていうことが経営に求められることですし、新たに従業員を迎えるためのアピール力、求心力にもなってきますし、多かれ少なかれ意識していかないと、企業っていうのは存続していけなくなってくると思う」

特許庁は、「デザイン経営」を継続することで、次のような効果があるとしています。

・会社のあるべき姿である「自社らしさの明確化」
・従業員のやりがいや楽しさにつなげる「人材の採用と定着化」
・会社の新たな価値を生み出す「新しい仕事の創出」

立命館大学の八重樫教授は、2つ目の「人材の採用と定着化」の効果が特に大きく、従業員の会社への愛着度が上がり、「良い会社」であることを従業員が自らアピールするケースがみられるということです。

北海道ニュース24