幻の給食「ソフト麺焼きそば」?父の思い出を娘が調査依頼 消えたメニューの裏に隠された真実と高校生たちの挑戦に迫る
2025年05月30日(金) 16時48分 更新
幻の給食「ソフト麺焼きそば」?父の思い出を娘が調査依頼。
消えたメニューの裏に隠された真実と高校生たちの挑戦に迫ります。
依頼人(札幌市在住・ドーミンさん・12歳)
「お父さんが給食で食べたソフト麺の焼きそばが美味しかったと言っています。私は食べたことがないので、調べてください」
給食の人気メニューと言えばソフト麺。
ミートソースやカレーをかけるのが一般的なのだが、「ソフト麺の焼きそば」なんて聞いたことがありません。
そこで、依頼者の父親を直撃すると…。
HBC報道部・藤田忠士記者(42)
「娘と『美味しいよね』と話したら、『何それ?』と言われ、娘が関心を持った」
父親というのは、HBC報道部のベテラン記者。
どうしても気になった娘さんが、父親には内緒で調査を依頼していたのです。
30年ほど記憶を遡ってもらうと、ソフト麺の焼きそばは、柔らかくて短い麺。
モチモチとした食感と、甘い味付けが特徴だったといいます。
HBC報道部・藤田忠士記者(42)
「クラスの中で、みんな『おかわりしたい!おかわりしたい!』って」
それほど人気がありながら、なぜ依頼人は食べたことがないのでしょうか。
調査員
「札幌市でソフト麺の焼きそばを出している?」
札幌市・学校給食課 松本文恵さん
「ソフト麺を使った焼きそばは、札幌市の給食では提供していない」
なんと、札幌市の給食では20年以上、“ソフト麺の焼きそば”はおろか、通常の焼きそばも提供されていませんでした。
札幌市教育委員会 学校給食課 松本文恵さん
「500食とか1000食とか大量調理をするので、作るのが大変なメニュー」
そこで依頼者の父親が生まれ育った、北海道苫小牧市を調べてみると、当時の焼きそばを再現してくれるというのです。
その焼きそばがこちら!
調査員
「ありました!給食の焼きそばを発見しました!」
彩り豊かで、海老に豚肉、竹輪、グリンピースと、具沢山の焼きそばです。
しかし、そこには大きな記憶違いが…。
苫小牧市・学校給食共同調理場 稲葉和宣 場長
「ソフト麺ではなく蒸した麺、蒸し麺です」
なんと!この焼きそば、ソフト麺ではなく蒸し麺だったのです。
献立表にも『蒸し麺』と書いてある。
インターネットのレシピサイトには、ソフト麺を使った焼きそばも存在しているですが、なぜソフト麺だと勘違いしたのでしょうか。
苫小牧市・学校給食共同調理場 稲葉和宣 場長
「おそらく大量に調理する過程で麺が柔らかくなったことが、もちもちという記憶になっているのかと」
また、甘みは竹輪や海老などの具材がもたらしたのでは…と推測します。
しかし…。
苫小牧市・学校給食共同調理場 稲葉和宣 場長
「2007年以降、焼きそばの提供を止めた」
実は蒸し麺の焼きそばも、2007年以降の給食から、姿を消しているといいます。
一体なぜなのでしょうか。
苫小牧市・学校給食共同調理場 稲葉和宣 場長
「1996年に『O157』が給食で発生し、衛生基準が厳しくなった」
1996年、大阪・堺市で発生した、学校給食を原因とする集団食中毒。
病原性大腸菌O157に9523人が感染し、4人が死亡しました。
再発防止のため、当時の文部省は、翌年(1997年)、給食の衛生管理を強化。
食品の中心温度を75℃で、1分以上加熱することを義務づけました。
ただ、この加熱基準を満たせば、麺は、どろどろになってしまうのです。
そのため、多くの学校給食から、焼きそばが姿を消してしまいました。
札幌市も同様の理由で、献立から外しているといいます。
ところが…。
苫小牧市の小学生
「みそうめぇ」
「ホッキ節がおいしい」
実は、いまや幻の給食とも言える”焼きそば”を、復活させた人たちがいます。
苫小牧総合経済高校マーケティング部
「私たちが、給食に苫小牧焼きそばを提供しました!」
苫小牧総合経済高校のマーケティング部です。
給食には、彼女たちが開発したご当地グルメ『苫小牧やきそば』を提供。
道産小麦「ゆめちから」100%の伸びにくい麺を使用。
もちろん、こちらも蒸し麺です。
さらに特産品の”ホッキ節”や地元野菜を使い、味噌味で仕上げています。
苫小牧総合経済高校マーケティング部 森梓 部長(17)
「給食に出したことで、子どもたちから親に伝わり、『苫小牧やきそば』のソウルフード化につながると思ったことがきっかけです」
彼女たちは、7年前からお祭りやイベントで”苫小牧やきそば”を販売していて、より多くの人たちに知ってもらうため、給食での提供に挑戦したのです。
それにしても、どうやって基準をクリアしたのでしょうか?
苫小牧総合経済高校マーケティング部 森梓 部長(17)
「スチームコンベクションオーブンを使用して、麺を75℃以上にしてから、野菜と炒めて提供するというところが苦労した点」
10℃以下に保存された麺を、まず、スチームコンベクションオーブンで75℃以上に加熱。
その後、野菜などと炒めることで、加熱の衛生基準をクリア。
給食での提供が可能になったのです。
苫小牧総合経済高校マーケティング部 森梓 部長(17)
「多くの方々に『苫小牧やきそば』を食べてもらえるように、日々、がんばっていきたい」
■調査結果
依頼者によると「思い出の焼きそばは、ソフト麺ではなかったけど、優しい味で美味しかった」ということです。
実は、苫小牧市の学校給食では、一時、こんな物も提供できなくなったそうです。
フルーツ白玉やヨーグルト和え、ゼリー和えなどは、10℃以下に温度管理をする必要があります。
ただ、対応できる冷却設備が苫小牧市には以前なかったため、一時、提供を取り止めたということです。
もちろん、現在は提供を再開しています。
学校の給食も時代ごとに変化しているので、家族で話してみると面白いかもしれません。