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人口約2万人の町で“ホテルラッシュ”町内で進む大手乳業メーカー新工場建設の作業員宿泊⇒出張需要見込む 専門家も注目の『中標津モデル』

2025年05月14日(水) 16時45分 更新

向かったのは「宇宙からも見える格子状防風林」が北海道遺産にも選ばれている北海道東部の中標津町す。



岡田純ディレクター
「中標津の建設現場にやってきました。いま、こちらでは、あのビジネスホテルと、隣のウィークリーマンション、合わせて47部屋の建設が進められています」

建設中のものも含めると、町内では2024年から2025年にかけて、ホテルやウィークリーマンションが4か所、合わせて145部屋分増える見通しです。



アルムシステム 清信祐司 社長
「中標津も同様にそういう(行楽)シーズンになってくると、ホテルが足りない…」

北海道東部の人口わずか2万人ほどの中標津町で、いまなぜホテルやウィークリーマンションが増えているのか?そのワケをもうひとホリします。

4月下旬、ゴールデンウィーク直前の観光シーズンを前に急ピッチで建設が進んでいたのが…



アルムシステム 清信功之介 取締役
「ホテルリゾートアルムのホテル棟になります。こっちの方がB棟、C棟、D棟で、ウィークリーマンションタイプの施設となっております」

北海道全域でビジネスホテルなどを運営する、帯広市の「アルムシステム」が6月の開業を目指すホテルとウィークリーマンション。



建設のきっかけは、いま町内で進む大手乳業メーカー『明治』の新工場建設工事です。

アルムシステム 清信祐司 社長
「(工事を)請け負ったゼネコンから50室くらいの宿舎を建てないか?っていう話が、一番の始まりです。当然、(工場が)集約されるワケですから、合理化されて、こっちに来る単身で来る方の宿泊施設なり、住居なり、ってことで、使用していただこう、というのが狙いで建てました」

『明治』の新工場は、いまある北海道東部の2つの工場を集約し、2027年3月から稼働する予定です。



この建設に携わる作業員の宿泊施設として、すでに2025年6月の完成から2年間、全客室の利用契約を建設会社と結びました。

当初は、簡易的な宿舎の建設も検討しましたが、工場の完成後も『需要』があると見込んで、本格的な施設を建てることにしました。
その1つが『出張』の需要です。

アルムシステム 清信祐司 社長
「機械のメンテナンスだったり、農機具のメンテナンスだったり、それに不随して、関連産業も一緒に移ってきますよね。運輸業者なり、で、その2024年問題とか、いろんなこと、労働時間の制約もあって、今までだったら日帰りで、ってことだったのが、宿泊しないと(いけない)」

実はこうした『出張』需要が、北海道だけではなく、全国の地方都市などで高まっていると話すのは、国士舘大学の加藤幸治教授です。



国士舘大学 加藤幸治 教授(経済地理学)
「ビジネス環境の変化とか交通体系の変化、ネット環境の進歩みたいなことによって営業所みたいな所の役割が少し下がって、常駐者みたいなことが少し減って、でも、仕事としてはあるので、出張対応っていうような形で、(人が)動くようになってくると、ビジネスホテルの数がぐっと増えるっていうのはある」

地方の町に常駐する人が減ったことで、都市部からの出張に対する需要が増えているというのです。

中でも、人口が2万人ほどで『市』ではなく、知名度の高い観光施設も少ない中標津町でホテル需要が高まっている背景には、北海道の釧路市や網走市、根室市といった地方都市の中心に位置する”中標津ならではの特徴”があると言います。



国士舘大学 加藤幸治 教授(経済地理学)
「ベッドタウン的な機能を中心地に同時に持っている地域としてはなかなか珍しいパターン。夜間人口でいうと、夜間人口も昼間人口もそれなりにいて、その両方の側面を持っている。観光客がワッと押し寄せるわけじゃない。それでも(ホテルが)建つということは、やはりビジネス需要の一定の底堅さっていうことにホテル業界の方が注目されてるんだと思います」

「中標津町ならでは」のホテル建設ラッシュ。

今回、取材した「アルムシステム」のホテルなどは、2年間すでに契約済みですが、以降の出張需要なども見込んだ背景にはこんな地方の『宿』事情もあるようです…

後継者不足で地方の町村で宿泊施設が減少。

大手ビジネスホテルチェーンなどは、なかなか人口が少ない町村にはなかなか進出せず、特に、人口が少なく、全国的にも有名な観光地などがない町村には進出しないことが多く、宿泊施設が不足しがちです。

VTRでもお話を聞いた、国士舘大学の加藤教授はこうした中標津町の特徴を『中標津モデル』と提唱して以前から、注目しているんです。



中標津モデルとは、中心部の機能とベッドタウンの機能をあわせもちます。

利便性が高いため、中標津から周りの農村に働きに出る人も。

また、周辺の通勤通学と周辺からの通勤、買い物客による交流人口が多いです。

コンパクトな市街地に人が『集住』するこのような特徴が「中標津モデル」ということで、これから人口減少が全国で進む中、1つの地方都市のあり方と言えると加藤教授は話します。

中標津町のホテル建設は、常駐職員の引き上げによる出張の増加など、時代の変化が背景にありました。

これからのマチは、こうした変化をビジネスチャンスとして機敏にとらえていくことが一層求められそうです。

北海道ニュース24