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北海道の最低賃金1075円へ…働く時間を減らして「年収130万円以内」で人手不足に拍車の懸念も 立場で異なる「うれしい」「苦しい」リアルな声

2025年10月02日(木) 20時08分 更新

9月、北海道労働局は、道内の最低賃金を1075円に引き上げることを、正式に公表しました。しかし喜ぶ人ばかりではないようです。

■「賃上げ」は悩みの種にも

地域密着型のスーパーです。

この日も多くの買い物客でにぎわっていますが、いま、悩みの種が…



マルコストアー 山川悟史社長
「働いている人は大事にしなければいけないので、人件費を上げていかなきゃならないんですけども、(上げ幅が)計画より上振れすると厳しい」

「賃上げ」です。

9月、北海道労働局は、道内の最低賃金を1075円に引き上げることを、正式に公表しました。

止まらない物価高。今月の値上げ商品は、3000品目を超えました。

家計の負担が増え続ける中、賃金の引き上げは必要不可欠です。

しかし…

マルコストアー パート従業員
「時給が上がることはうれしいです。うれしいですけど時間を調整して、やっぱり扶養内で…(働く)」

『最低賃金アップ』の影響を「もうひとホリ」します。

■従業員の8割以上はパートやアルバイトの店

マルコストアー 山川社長
「もともと八百屋だったので…」

札幌市内で2店舗を展開する「マルコストアー」。



従業員約130人のうち、8割以上がパートやアルバイトといった「時給」で働く人たちです。

道内で、4日から適用される最低賃金。



1時間当たりの時給は、現在の「1010円」から「1075円」に引き上げられます。

5年連続のアップで、引き上げ率の6.4パーセントは平成に入ってから最大です。

マルコストアー 山川悟史社長
「今年は物価高の影響で5%は上がるだろうと予測していた。ただ、6%までは予測できなかった」

人件費の増加が、経営にのしかかります。

さらに…



マルコストアー 山川悟史社長
「一番は賃金の上昇よりも、人手不足。(配偶者の)扶養内で働きたいという人が多い、そうなるとどうしても働いてもらう時間を短くせざるを得ない。ここ何年間もずっとそう。時給が上がる度に(働く)時間が短くなっていくという傾向はある」

■年収130万円の壁で「人手不足」に拍車

社会保険料の支払いが発生する「年収130万円の壁」。

パート従業員の多くが、家族の扶養内で働いているため、時給が上がると、その分、働く時間を減らして「年収130万円以内」におさめなければならず、「人手不足」に拍車がかかるのではと懸念されています。

2024年から「マルコストアー」で働き始めた高橋さん(30代)です。

5歳と3歳の子どもを育てながら、夫の扶養内でパートとして働いています。

最低賃金のアップは「うれしい」と受け止めるものの、扶養内で働く「130万円の壁」に阻まれ、自身の収入アップにはつながらないとみています。



マルコストアーパート従業員 高橋さん
「いま子どもが小さいので、家事と育児とのバランスが取りやすい、そういった面でパートで(夫の)扶養内で働いている」

物価高で食費などが上がる中、「もう少し働きたい」気持ちもありますが…

マルコストアーパート従業員 高橋さん
「(物価高の)このご時世は働いた方がいいのかなと(思って)。リミット(年収の壁)は、無くなったほうがいいんじゃないかなって他のパートさんと話していても思う」

■専門家「シフトを減らされる可能性も」

労働経済に詳しい北海道大学大学院の安部由起子教授は、働き控えだけでなく、現場の機械化・効率化も進み、結果的に労働者の収入ダウンにつながるのではと危惧しています。



北大大学院経済学研究員 安部由起子教授
「実質賃金が下がっている、つまり物価高が勝っているということ。これはどう見たって(経済の)好循環じゃない。(最低賃金の)引き上げ率が高かったので失業率の上昇まではいかないと思うが、例えば(労働者が)シフトを減らされたというようなことは出てくる可能性はある」

■どの立場で考えるかで「うれしい」「苦しい」

森田絹子キャスター)
道内の最低賃金が4日から、現在の1010円から65円アップして1075円に引き上げられます。労働者側にとっては喜ばしいことですが、懸念もあります。



中小企業にとっては、賃上げが経営の圧迫につながり、「働き控え」による人手不足も深刻です。

また、扶養の中で働くパート従業員の立場では「年収130万円の壁」があり、最低賃金が上がっても、トータルの年収はアップにつながらないケースがあります。

堀啓知キャスター)
中小企業への支援策として、厚生労働省の業務改善助成金というものがあります。

森田キャスター)
賃上げを行い、かつ生産性を上げる設備などを導入した中小企業を対象に、最大600万円を助成するものです。

北海道労働局によりますと、年々申請は増えていて、昨年度、道内では1030件の申請がありました。

設備導入の具体的なものとしては、売り上げや在庫管理の効率化ができる「POSレジ」システムの導入や顧客管理情報のシステム化、除雪機の購入も対象になるそうです。

いま受け付けているのは「第2期」ですが申請は3日までだということです。

福島和可菜さん)
どの立場にたって考えるかで、考え方が変わってくると思うんですが…パートの立場だったら「時給上がるんだ、うれしい」と思いますけど、経営者の立場に立つと「苦しいな」という部分もあるじゃないですか。

人によって違うのが難しいですし、いくら最低賃金が上がったからと言って年収が上がらないという。

これはどうなのかなと正直思いますし、一方で物価高も続いていくので、いい例ないのかなと思いますけど。

海外は国によっていい循環で、という話をよく聞くので…

アンヌ遙香さん)
あまりにも今の日本の現状が、個人の我慢などに頼りすぎている事が多くないですか?と思うんですよね。

近々自民党の総裁選もありますが、これだけ、日本国民に苦しいと言っている人が多いのをどれだけ把握してくれているのか、という感情がわいてきますよね。

個人が我慢すれば、まわるという仕組み自体を変えていかなきゃ、日本の未来はないなと思います。

堀キャスター)
政府は2020年代までには、最低賃金1500円を掲げているということですけれど、実現可能なのか、現代にあった仕組みなのか、トータルで含めてスピード感を持って取り組んでもらいたいなと思います。

北海道ニュース24