「小説に書いた景色と大きく違ってなくてよかった」直木賞作家の伊与原新さんが『星隕つ駅逓』の舞台、遠軽町白滝を初訪問
2025年07月29日(火) 19時25分 更新
市街地に隕石を落とすと展開が難しい。今年、直木賞を受賞した作家の伊与原新さんが小説の舞台、北海道の遠軽町白滝を初めて訪れました。
遠軽町白滝地区に姿を現したのは、直木賞作家の伊与原新さんです。
第172回直木賞受賞作家 伊与原新さん
「小説に書いた景色と大きく違ってなくて良かったな、という感じですね」
伊与原さんは2025年1月、短編小説集「藍を継ぐ海」で第172回直木賞を受賞。
その中に、白滝の山中に落ちた小さな隕石と過疎化が進み、廃止が決まった郵便局をめぐる物語、「星隕つ駅逓」が収録されています。
第172回直木賞受賞作家 伊与原新さん
「思ったよりぎっしり詰まってますね…」
訪れたのは、農家民宿など、小説のモデルになった場所です。しかし…。
第172回直木賞受賞作家 伊与原新さん
「(本当にきょうが初めて?)初めてです。今はグーグルマップでこの道沿いの景色とわかる」
実は、伊与原さん、これまで、白滝を訪れたことはなくファームや周辺の景色はネットで調べたことと想像で書きあげました。
しかし、描写は鮮やかでそこで暮らす人たちの心を大きく動かしました。
白滝郵便局長 中田卓也 局長
「本当に飛び上がって喜びたい感じだった。まわりにも白滝が載ってるよとアピールした」
白滝にこだわり活動する農家は、作品が自分たちを応援してくれているように感じたといいます。
農家民宿えづらファーム 江面陽子さん
「地名をなくしたくなくて何かに名前を付けてということが、私たちがジャガイモに『白滝』と名をつけて活動しているのにぴったり合うので、よく登場人物に感情移入して読むと小説はおもしろいというが、それが自然にできる作品でした」
東大の大学院では、地球惑星科学を専攻した伊与原さん。
その後、白滝から出土した「日本最古の国宝」黒曜石の石器などを見学しました。
第172回直木賞受賞作家 伊与原新さん
「今回は瞰望岩も黒曜石も登場しない小説にしたんですけれども、それがかえって、白滝で生きる人たちについて描く余白、スペースができたと思っています。」
直木賞を受賞した「藍を継ぐ海」。
「地方」を描く中で伊与原さんが感じたのは「過疎」と「消えゆく文化の継承」という日本共通の課題です。
第172回直木賞受賞作家 伊与原新さん
「なんの実効的な力がないことは分かるが、考え方としては少し俯瞰して考えてみると気持ちもちょっと明るくなったりするのかと」
独特の自然や歴史など地方は豊かで多様。
ちょっと掘れば面白い話がたくさんある。
講演で伊与原さんは、いかにも地質学者らしく地方に暮らす私たちにエールを送りました。