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「なぜもっと早く調査してくれなかったのか」不適切指導を問題視してパワハラ被害に…その後自殺「本当に無念」女性教諭の遺族がコメント発表

2025年07月13日(日) 11時58分 更新

札幌市教育委員会の会見(11日)
札幌市教育委員会の会見(11日)

 児童への不適切指導や同僚の女性教諭にパワハラを行っていた40代の男性教諭に対し、札幌市教育委員会が停職6か月の懲戒処分したことを受けて11日、女性教諭らの代理人の弁護士がコメントを発表しました。

 男性教諭は、2016年度から8年間にわたって2つの小学校の特別支援学級で、少なくとも3人の児童に対し、額を指で弾く、授業中に児童のイスを蹴るなど14件の体罰や不適切な指導をしていました。

札幌市教育委員会の会見(11日)
 また、2019年に男性教諭の指導について市教委に訴えた同僚の女性教諭に対してパワハラを行っていたことも認定されました。

 この女性教諭は2023年になって、自殺しています。

 以下、被害児童保護者と女性教諭の代理人弁護士のコメント

札幌市教育委員会の会見(11日)
1)本件調査結果について

 今般、上記2校における上記男性教諭の体罰・不適切指導が複数認定されたこと、女性教諭へのパワーハラスメント行為が認定されたことについては、いずれも当方の主張が概ね認められたものと考えております。

 本件で認定された事実には、椅子を蹴る、大声で叱責するなどの粗暴で威圧的な言動が含まれておりますが、それ自体、一般社会においては犯罪やハラスメントに該当しかねないもので、不適切な言動と言わざるを得ません。

 さらに本件では、B校における被害児童はいずれも低学年児童であり今般認定されたような不適切指導を行う正当事由はおよそ見いだせないこと、男性教諭は特別支援コーディネーターを務めるなど、各児童の特性にあった適正な特別支援教育を推進する立場にもあったことに鑑みれば、指導の範疇を明らかに超えた言動であると評価せざるを得ません。

 本件では、当職が関与した後速やかに警察へ被害相談も行いましたが、一部の言動については、暴行罪の公訴時効が3年ということもあって被害届の提出を断念せざるを得ませんでした。

 もっとも今回の認定事実1件(児童の手を引っ張る行為)については、男性教諭が暴行罪で略式起訴され、すでに罰金処分が確定されています。

 検察官において起訴処分を下したことは、本件事案について違法性が強いと評価された結果であると考えております。


2)被害の大きさ、深刻さについて

 本件は、長時間にわたり複数の不適切指導が行われた事案であり、直接被害を受けた児童のほか、その言動を見聞きした児童も多数に及ぶものと推察され、男性教諭の粗暴で威圧的な言動に恐怖を覚えた児童は相当数に上る可能性があると考えております。

 さらに被害児童らは低学年の児童であり、特別支援学級の児童であること、「教育」という名の下で行われていたことに照らせば、その心身に与える悪影響がさらに深刻なものになったことは明らかです。

 まだ幼い児童が、上記のような粗暴な言動を受け、あるいは同級生が被害を受けていた場面を目撃していたわけですから、強い恐怖心を植えつけられていたことは当然ですし、その心の傷は、簡単に癒えるものではありません。


3)市教委の対応の問題点について

 B校の被害児童保護者らは、複数回にわたり、管理職や市教委に男性教諭の指導につき相談を行っておりましたが、適切な対応はなく、積極的に事実関係を調査しようとする姿勢も皆無でした。

 本件で市教委が第三者調査にようやく踏み切ったのは、一部報道でこの問題が大きく取り扱われた後でした。あまりにも、遅すぎる対応と言わざるを得ません。

 本件の2件の調査において、当時の市教委の体制、管理職の対応については厳しい指摘がなされたと聞いておりますが、当然の結果であると考えます。

 とりわけ、2019年3月に、女性教諭が市教委内部の相談窓口に対し、A校での男性教諭の児童に対する不適切指導が相談したにもかかわらず、特段調査等を行わなかったことについては、一連の市教委対応の中でも最大の問題と考えております。

 仮にこの時点で上記女性教諭の訴えに真摯に耳を傾け、その重大さを理解し、体罰・不適切指導の事実関係調査を行い、有効かつ適切な指導を行っていれば、B校でも同様の被害が起こることは防げたのではないでしょうか。

 この時点で対応をしなかった原因について、市教委担当者に質問をしましたが、残念ながら、10日時点においては納得できる回答はありませんでした。


 本件において、市教委は、適正な情報提供を行った女性教諭を切り捨て、結果的に加害者である男性教諭を守り続けました。その安易な判断が、体罰・不適切指導を助長し続けたと言っても過言ではなく、責任は重大であると考えます。


4)男性教諭の処分について

 懲戒処分について、停職6か月とのことですが、児童らが受けた傷の深刻さや、前途ある優秀な女性教諭がパワハラにより休職を余儀なくされ、その後命を落とした事実を前にすれば、決して十分な処分とはいえません。

 もっとも、市教委において本件の問題を深刻に捉えた上で行った処分であるという点においては、一定の評価ができるものと考えております。


5)最後に

 女性教諭は、教員としての使命感と責任感のもと、男性教諭の言動を問題視して声をあげていました。

 女性教諭が当時、このような勇気ある行動をしていなければ、今般、A校での体罰・不適切指導問題が明らかになることはなく、問題の根深さが明るみになることはありませんでした。

 この場をお借りして、女性教諭への敬意を表明するととともに、深い哀悼の意を表します。

札幌市教育委員会の会見(11日)
◆B校保護者一同のコメント

 まずは、私たちが訴えた内容が認められたことについて安堵しております。この度の調査で、慎重に事実関係を調査してくださった調査委員の皆様、調査に協力してくださった皆様には、心より感謝申し上げます。

 男性教諭が、B校のみならず、前任校でも同様の問題を起こしていたこと、女性教諭へのパワハラを行っていたこと、当該女性教諭が亡くなっていたことを知った時には大変驚き、怒りを覚えました。

 もし私たちが声をあげなければ、誰かの命が失われなければ、市教委は動くこともなく、男性教諭はなんのお咎めもなく教壇に立ち続けていたのかと思うと、あまりにも遅すぎる対応で会ったと言わざるを得ません。

 我が子が苦しみ、親として葛藤を繰り返してきた時間は戻ってきませんし、子どもが受けた心の傷も簡単に癒えるものではありません。

 市教委、学校関係者の皆様には、二度と同じ思いをする児童生徒、教職員がでないように、本件を真摯に受け止めていただきたいと思います。

 最後に、A校の女性教諭が、自らパワハラ被害を受けながらも、子どもたちのために声をあげてくれていたことについて、私たちは皆、先生の勇気ある行動に感謝の思いでいっぱいです。

 そして、先生のことを心から誇りに思っております。

 この場をお借りして、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

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◆女性教諭のご遺族のコメント

 6か月の停職処分とのことですが、娘の受けた被害や、お子さん方が受けた精神的・肉体的苦痛を考えると、あまりにも軽すぎる処分と言わざるを得ません。

 娘は、A校へ赴任して間もなく、当該教諭の児童への言動を目の当たりにしました。同じ特別支援学級の教諭として、大きな衝撃を受けたことと思います。

 ただA校では当該男性教諭の教育方針がまかり通っていて、逆に娘が目を付けられ、パワハラ被害を受ける結果となりました。また管理職や市教委へ行っても全く聞いてもらえないことにも絶望していました。

 今回の調査で、A校での体罰・不適切指導が認定されたとのことですが、氷山の一角に過ぎないと思います。

 当時速やかに男性教諭の言動を調査していれば、多くの児童が被害を受けることは防止できたと思います。

 また、娘が命を落とすこともなく、大好きな教員という仕事を続けられたのではないかと思うと、本当に無念でなりません。

 なぜもっと早く調査してくれなかったのか、その思いは一生拭えることはありません。

北海道ニュース24