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駅で買うのが最も高くなる?切符はスマホやパソコンで買う時代に“歓迎”それとも…特急列車から自由席廃止の流れ北海道でも

2023年11月18日(土) 09時23分 更新

全席指定となる特急とかち(札幌~帯広)
全席指定となる特急とかち(札幌~帯広)

 JR北海道は15日、来年春に札幌と道南・道東を結ぶ「北斗」「すずらん」「とかち」「おおぞら」の4つの特急列車から自由席を廃止し、全車指定席とすることを発表しました。
 特急列車の切符の買い方が、大きく変わることになる今回の発表。
 いつでも気軽に乗ることができた自由席の廃止は、利用者に優しいものになるのでしょうか。

■気軽さの象徴・自由席
 事前の座席指定が必要ない特急の自由席は、予定を立てにくい人や、乗る列車を直前で変えたい人にとっては、便利な存在でした。
 また、乗りたい列車の指定席が満席でも、始発駅で早めに並べば自由席で着席できたり、立ったまま“立ち席”で乗車することもできました。
 国鉄時代を含めおよそ50年間、日本のほぼすべての特急で自由席が提供されて来たのは、この気軽さが支持されていたからと言えます。

特急北斗(札幌~函館)
■全国で消え行く自由席
 しかし今、自由席の廃止は全国的な流れとなっています。
 JR東日本は、東京発の東北・北海道新幹線などで、停車駅の少ないタイプの列車に自由席を設定していません。
 在来線の特急列車も、2014年ごろから自由席の廃止が始まり、来年春には東京駅から出発するすべての在来線の特急から、自由席がなくなります。
 JR西日本でも、去年から特急の自由席廃止が始まり、来春にはさらに拡大されます。
 JR北海道は、今回対象としない旭川など道北方面の特急についても、今後、自由席の廃止を検討すると話しています。



■座席予約はネットで「いつでも」「どこでも」
 特急から自由席が消えて行く大きな要因の1つは、インターネットを使った「オンライン予約」の進展です。
 かつては駅の窓口か自動販売機でしか予約ができなかった座席指定券ですが、現在では、スマートフォンやパソコンで24時間どこからでも希望の列車を予約でき、支払いまで完結できます。
 北海道の場合、7年前に導入された「えきねっと」というシステムを使うことが条件ですが、ネットで予約・購入した指定券を駅の自販機で発券すれば、すぐに列車に乗ることができます。
 JR北海道によりますと、えきねっとによる指定券の購入は、既に全体の半分を超えているということで、この割合をさらに高めて行けば、自由席を廃止しても不便はないと説明します。
 また「座席未指定券」という新たな切符を導入することで、これまでの自由席のように予約をしないまま列車に乗ることもできると理解を求めています。

「えきねっと」を紹介するJR北海道のホームページ
■ホテル・航空機並みの柔軟な料金へ
 一方で、これまで駅の窓口や自販機で販売されていた「Sきっぷ」「Rきっぷ」などの割引切符は「えきねっと」に統合されることも発表されました。
 JR北海道は、「イールドマネジメント」(歩留まり管理)という考え方を導入し、利用状況や時間帯などによって料金を変動させることで、これまでよりも割安感のある料金を提供すると説明します。
 日程や予約のタイミングによって、料金が大きく異なる、航空機やホテルと同じ仕組みです。
 AIを使って予測の精度を上げることで、料金を下げつつも空席を減らし、全体の利益率を高めることができると言います。
 15日の会見では、札幌~帯広の片道利用の場合で、えきねっとを利用すると、通常料金から最大で55%安くなることなどが紹介されました。

JR北海道の会見(15日)
■駅で買うのが「最も高く」なる
 各種の割引がネット予約に統合されるため、来年春からは、駅で直接購入できる切符は「最も高い」ものだけとなるのも現実です。
 JR北海道は、えきねっとのPRや利用方法の案内を強化すると説明しますが、列車の利用頻度が高くはなく、会員登録やクレジット決済、パスワード管理などがわずらわしいと感じる人たちは、割高な運賃を負担させられる可能性もあり、不公平感が出ないかどうかは、未知数と言えます。
 もっとも、航空機やホテルを利用する場合、空港カウンターや施設のフロントで直接予約しようとすれば割高になることは、かなり前から「ほぼ常識」となっていて、鉄道も同じ状況になるという見方が、できるかも知れません。

JR札幌駅
JR札幌駅
■検札不要で車掌は負担軽減へ
 自由席の廃止には、乗務員の負担軽減という理由もあります。
 座席指定券は、駅の改札口通過と同時にシステムに登録されるため、車掌が車内で切符を確認(検札)する必要がなくなります。
 乗客も、座席で寝ているところを起こされることがなくなり、全車指定席で確実に座れることと合わせ、「サービス改善につながる」というのが、JR北海道の説明です。

特急北斗(札幌~函館)
 社会に浸透するデジタル化に呼応するように、消えて行く特急列車の自由席。
 駅で切符を買って乗ることに慣れ親しんだ鉄道の利用の仕方が、大きく変わります。

JR北海道本社
◇HBC:南部肇