世界自然遺産・知床の漁協婦人部食堂 わずか13席の食堂が映し出す“知床のいま” 観光客から常連客まで笑顔に
2025年05月08日(木) 16時49分 更新
世界遺産の北海道斜里町ウトロの港に、観光客らに人気の小さな食堂があります。
大型連休の最終日、この食堂を通して知床の今を取材しました。
東京からの観光客
「うまいです!」
サケのづけやイクラがたっぷりのった三種丼。店一番の人気メニューです。
札幌からの観光客
「最高です!」
サケの定置網・水揚げが日本一の斜里町。
そのウトロ地区の港に「漁協婦人部食堂」が店を構えて、52年になります。
漁協の女性部6人が切り盛り。人々のお腹を満たしてきました。
食堂の朝は早い。
米を研ぐのは、漁協女性部の部長で食堂の責任者、畠山美佐さん(57)です。
「ふう、腰痛い」
観光客で賑わう大型連休も、この日が最終日。
ウトロ漁業協同組合女性部 畠山美佐 部長
「きょうは多分4升(約6キロ)以上はお客さんが来ると思うので、もう炊いちゃいます」
8時半の開店を前に、外には10人ほどが列を作りました。
開店からわずか5分で13席はいっぱいに。
注文の半分以上は、看板メニューの三種丼です。
「お待たせしました~三種丼です。どうぞ」
極上の朝ごはんをほおばり、お客さんたちは、この笑顔です。
東京からの観光客
「おいしいです!甘い!」
神奈川からの観光客
「(イクラが)大粒で味が濃いです。美味しいです」
サケはもちろん漁協直送。60センチはありそうなものを、あっという間に三枚おろしにしていきます。
女性部スタッフ
「サケか何かを使った新しいもの(メニュー)はないかと言われたときに、この三種丼を考え出して、しばらく本当に売れなかった。やっとです。最近は足りないくらい」
その味にフランス人観光客も…。
フランスからの観光客
「きのう三種丼を食べておいしかったので、きょうまた同じものを頼みました」
営業は、朝8時半から午後2時半まで。
時間帯によって、朝は主にウトロに宿泊する道外の観光客。
昼から午後は、近場の日帰りの観光客。
そして昼前か、閉店前に駆け込んでくるのが常連客です。
常連客
「僕がカウンターに座ると、勝手に味噌ラーメンが出てきます(笑)。忙しい時間だと構ってもらえないので」
この大型連休中も多くの人で賑わった「婦人部食堂」ですが、あの事故の影はいまも消えていません。
ウトロ漁業協同組合女性部 畠山美佐 部長
「(事故前は)知らない人にも勝手に観光大使をしていたんですけど、事故があってからは、『ぜひ、いらしてください』とは心から言えなくなりました」
「(これからは)みなさん思い出を作って帰ってくださればいいなと思います」
開店から、あっという間の6時間。
この日は結局、10.5キロのコメを炊きましたが、すべて売り切れ。閉店後のまかないはラーメンです。
訪れた人たちを笑顔にする「ウトロ漁協婦人部食堂」。
ここでしか食べられない料理が、再び知床に人びとを呼び込もうとしています。
■大型連休中の婦人部食堂
畠山さんによりますと、この大型連休中で多い日には約150人が婦人部食堂を訪れました。
ウトロ地区の人口が1200人ということで、“浜の母さん”の味がいかに人気なのかがわかります。
■婦人部食堂 誕生の秘話
1970年の加藤登紀子さんの「知床旅情」のヒットで、訪れる観光客のために誕生したのが婦人部食堂でした。
地元産=ウトロの味を前面に押し出すようになって人気に火が付いたということです。
食堂では、まもなく旬の「ウニ」も提供される予定です。