【参議院選挙】暮らしに欠かせない電気…泊原発再稼働すれば安くなる?一方で再稼働に懸念示す専門家も エネルギーのあり方について私たちの選択は
2025年07月09日(水) 20時32分 更新
原発再稼働の動きが加速する中、迎えた参議院選挙です。私たちの暮らしに欠かせない電気の問題について考えます。
エネルギーのあり方をどう進めていくのか、候補者たちに聞きました。
■「活断層ではない」泊原発3号機 再稼働に向け準備着々
北海道電力の泊原子力発電所、3号機です。停止から13年あまりが経ちます。
再稼働へ向けて巨大津波対策の新たな防潮堤づくりが進行中です。
地中を深く掘り進み、防潮堤を支える強固な基礎作りが、進められています。
完成は2年後。
海面からの高さは19メートル。厚さは30メートルもある巨大な壁が、原発の周囲1.2キロを囲みます。
東日本大震災のあと、国は”新規制基準”を設け、原発の「安全対策」をはかっています。
2024年4月、原子力規制委員会が泊3号機の格納容器の内部に入り、検査を実施しました。
三國谷浩司記者
「原子炉の真上にあたる4階に来ています。こちらではいま、原子力規制委員会の現地調査が行われています」
新規制基準に適合しているのか?
原子力規制委員会による現地調査は12回に及びました。
泊原発の敷地では、断層11本の存在を確認。
仮に「活断層」であった場合、大地震発生の可能性は、排除できません。
北電は、地中を掘り返し検証を続け、「活断層ではない」と主張。
そして今年4月、原子力規制委員会の審査会合で、大きな動きがありました。
原子力規制委員会 山中伸介委員長
「審査の案を取りまとめることを決定してよろしいでしょうか?」
「決定してよいと考えます」「決定してよいと考えます」
原子力規制委員会は「活断層ではない」と最終評価を下し、3号機は、基準に適合していると判断されました。
再稼働に向けた、事実上の「ゴーサイン」でした。
地元の住民も、再稼働に肯定的です。
地元住民
「北海道の企業は(原発に)動いてほしいと思っているでしょ」
「地元としては、動いたほうが(経済が)活発化するほうが村のためにいい」
■再稼働に懸念 噴火活動の痕跡指摘する専門家も
胆振東部地震の発生時のようす(2018年9月6日)
「真っ暗です、停電であたりは明りがほとんどありません」
全道がブラックアウトした北海道胆振東部地震。
北海道の電力は、当時、7割ほどを火力発電へ依存していました。
電源構成の「一極集中のリスク」が浮かび上がりました。
泊原発3号機は、地元自治体と道による同意があれば、2年後の春以降、再稼働することになります。
しかし、いまも警鐘を鳴らし続ける研究者がいます。
北海道大学の小野有五名誉教授です。
北海道大学(地理学)小野有五名誉教授
「火山の石と、周りを埋めているものがくっついている。そういうふうにしか見えない」
北大の小野名誉教授は、泊村の隣町、共和町で、火山性堆積物の「ピソライト」を8年前の調査で発見しました。
遥か太古の時代、ニセコ周辺の噴火活動がもたらした痕跡だといいます。
北海道大学(地理学)小野有五名誉教授
「科学の事実は否定できない。いくら合格になってもこの事実は永久に残る」
■北電は、再稼働後に電気料金値下げ実施へ
一方、千歳市の半導体工場「ラピダス」や石狩市のデータセンターなど、デジタルインフラの中核を担う産業にとっては大量の安定電力は欠かせません。
さらに、火力発電は燃料の輸入コストが高いため、家庭用の電気料金は、全国の電力会社と比較しても最も高い水準にあります。
6月の株主総会では、再稼働に反対する株主から、原発事業からの撤退提案が出されるも、すべて否決されました。
しかし、経営側は電気料金の値下げに言及したのです。
北海道電力 上野昌裕副社長
「再稼働後には再稼働メリットなどを総合的に勘案し、適正な水準で値下げを実施します」
いま、核燃料の搬入や、使用済み燃料の搬出を目的にした新たな港の建設計画を発表するなど、北電の動きは加速しています。
エネルギーのあり方を、どう進めるのか?自らの選択を一票に託す日は、もう間近です。
■北海道選挙区・候補者にアンケート
泊原発の再稼働について、候補者12人に【必要】・【不要】・【回答しない】の選択肢から選んでもらい、その理由を聞きました。(表記は届け出順)
◆自民党・現職 高橋はるみ候補(71)【必要】
「北海道の産業振興、脱炭素等を考慮すると、安全確保の上で再稼働を急ぐ」
◆参政党・新人 田中義人候補(53)【必要】
「安全性が確認された原発の再稼働については、住民の合意形成を前提に反対するものではない。エネルギーはベストミックスが重要」
◆日本保守党・新人 小野寺秀候補(61)【必要】
「本州と比べ電気代が異常に高い北海道は、早急に泊を稼働させるべき」
◆諸派のNHK党・新人 後藤朋子候補(55)【必要】
「道内に原発は必要だが、年数の経っている泊再稼働は安全性が第一」
◆日本共産党・新人 宮内史織候補(33)【不要】
「安全性も経済性も失格の原発はなくし、再エネ・省エネの普及を」
◆自民党・現職 岩本剛人候補(60)【必要】
「安全であることが最優先で、電力需要を踏まえ原発を活用する」
◆諸派のチームみらい・新人 稲原宗能候補(36)【必要】
「エネルギー需給のひっ迫が予想されており、電気代が高騰していることから」
◆国民民主党・新人 鈴木雅貴候補(33)【必要】
「安全審査基準適合、地元合意を前提に電力安定供給確保のため」
◆立憲民主党・現職 勝部賢志候補(65)【回答しない】
「核廃棄物処理の課題、重大リスクへの国民的不安から再稼働は困難」
◆日本維新の会・新人 オカダ美輪子候補(45)【回答しない】
理由の記載なし
◆諸派の日本改革党・新人 高杉保次候補(56)【必要】
「電気代高騰を抑制する最も効果的な要素」
◆れいわ新選組・新人 野村パターソン和孝候補(40)【不要】
「自然災害大国の日本には不向きな発電方法。別の再生エネルギーへの投資を進めるべき」