かつては全国で22万匹超が殺処分に「ネコも困っている、人も困っている…」2200匹以上を保護して新たな飼い主へ…母ネコに代わって24時間、小さな命を守る取り組みも
2025年06月28日(土) 09時00分 更新
さまざまな事情で飼い主の手から離れ、保護されるネコたちがいます。そうした小さな命を守り、新たな家族の元へと繋ぐ取り組みを見つめました。
◆《かつて殺処分2000匹以上…“小さな命を救いたい”》
大きな目で見つめる、愛らしい姿に、誰もが釘付けです。6月14日、札幌市の動物愛護管理センター『あいまるさっぽろ』で開かれたのは、新しい飼い主へとつなぐ、保護ネコの譲渡会です。80人以上が訪れました。
譲渡会に来た人
「いいね、全然ビクンってなんないしょ。ツンデレかも」
入院や引っ越しなどの事情で放棄されたり、飼い主が孤独死したり…。多頭飼育崩壊の家から、保護されたネコもいます。そんな行き場をなくしたネコたちを救い出し、安心して暮らせる飼い主へと託す―。
札幌の保護団体『ねこたまご』が活動を始めて、14年になります。
『ねこまたご』のカフェに訪れた人
「癒しを求めて…」
併設されたカフェは、ネコにとって、新たな飼い主と出会う大切な場所です。
非営利型一般社団法人『ねこたまご』後藤志帆 代表理事
「活動を始めたのが2011年なんですけど、その当時は、まだたくさん殺処分がされていた時代で…」
後藤さんらが活動を始める以前、札幌市では毎年、2000匹を超えるネコが殺処分されていました。多くは母乳が必要な、生まれたばかりの子ネコ。“小さな命を救いたい…”その思いから活動は始まりました。
非営利型一般社団法人『ねこたまご』後藤志帆 代表理事
「保護してミルクをあげて、新しい飼い主を探すという活動を始めたところがきっかけ」
◆《離乳期前の子ネコを24時間見守る“ミルクボランティア”》
乳飲み子ボランティア 玉田美紀子さん
「名前は“三日月”と“新月”です」
『ねこたまご』が保護した、生後1か月に満たない2匹。玉田さんは“乳飲み子ボランティア”と呼ばれる、メンバーの1人です。
乳飲み子ボランティア 玉田美紀子さん
「測りでゼロにして(以前)飲んだ分の後からやります。この子たちはもう10g以上飲みます」
生まれてしばらくの間は、食事や排せつができず、2~3時間おきに、ミルクをあげる必要があります。
乳飲み子ボランティア 玉田美紀子さん
「子ネコは1時間起きて2時間寝るみたいな感じかな。ミルクを飲まないとか、薬を嫌がるとか、あと下痢が一番大変ですね、あと私も寝不足になるのが大変」
ネコの保護活動に取り組む『ねこたまご』のボランティアスタッフは、約100人。15人が“乳飲み子ボランティア”として、離乳期を迎えるまでの、約1か月間、毎日24時間、小さな命と向き合うことになります。
乳飲み子ボランティア 玉田美紀子さん
(Q.手放すときは寂しくないですか?)
「んー、もう慣れたっていうか(笑)」
玉田さんの手を離れると、次は、離乳期の預かりボランティアへ引き継がれます。
◆《多頭飼育崩壊や飼い切れなくなって放棄も…》
札幌市の動物愛護管理センター『あいまるさっぽろ』を取材した日、19匹のネコが収容されていました。
札幌市動物愛護管理センター 千葉司 所長
「AC070605-07、このネコは、今年6月5日に入って来たナンバー7(7匹目)って意味です。多頭飼育崩壊の現場にいたネコです」
札幌市の施設『あいまるさっぽろ』に収容されているのは、多頭飼育崩壊の家から救出されたネコもいれば…。さまざま事情から飼い切れなくなったと、飼い主やその家族らが、ここに連れてくることも…。
ただ、病気やけがで、回復が望めないと判断されない限り、以前のような殺処分は行われていません。そうした中、対応が難しいのが、生後まもない子ネコたちです。
札幌市動物愛護管理センター 千葉司 所長
「例えば“うちの物置にネコが赤ちゃんを生んで、お母さんネコはどっか行っちゃっている状態で、目も開いていないようなこんな子がいるんです”そうした連絡もあります」
ネコの繁殖期は、春から夏にかけて…。一度に4匹から、多ければ8匹ほど産むとされます。以前は、こうしたネコたちで施設があふれることもありました。
そして今も、不妊手術を受けさせず、手に余したり、多頭飼育崩壊へ陥ったり…。飼い主の無責任な対応の結果、収容されるケースも少なくありません。しかし、人の手が24時間必要な対応は、自治体の施設では困難です。
札幌市動物愛護管理センター 千葉司 所長
「われわれの施設では、こうした子に毎日ミルクをやるわけにいかないので“助けて”って、保護活動に取り組む団体に声をかけています」
◆《殺処分ゼロが続く札幌市…保護団体との強い連携》
札幌市では『ねこたまご』と連携。ほかの保護ネコの団体とも情報を共有し、小さな命を守っています。
生後まもない子ネコに特化して、保護活動を続けて14年目。『ねこたまご』では、これまで2200匹を超えるネコを保護して、1900匹ほどが、新しい飼い主に巡り会えました。
『ねこたまご』のカフェを訪れた親子
(Q.きょうは猫ちゃんを探しに?)
『そうです。ネコOKの住宅を探して、5月に引っ越しました」
新しい飼い主の候補もこの日、『ねこたまご』を訪れていました。不妊手術やワクチンの接種、譲渡を受ける際の年齢制限のほか、引き取った後、一定期間、ネコの様子を報告するなど、飼い主になるためには、いくつもの約束事があります。
保護ネコを引き取ることを決めた人
「みんな困っているから、ネコも困っている、人も困っていると…。ちょっと力になれたらいいかなって感じですね」
行き場を失うネコを少しでも減らしたい。その一心で、活動は続けられています。
非営利型一般社団法人『ねこたまご』後藤志帆 代表理事
「動物を迎えて、最後まで飼ってあげられるかどうかをきちんと考えてから、家族として迎える、これだけを徹底していただきたい…と思っています」
たくさんの人の手が結ばれ、ネコたちの小さな命をつないでいます。
◆《全国の自治体で減る殺処分…現場を支える保護団体》
森田絹子キャスター)
環境省の集計によると、全国各地の自治体では20年前の2005年度は、引き取ったネコ22万6702匹が殺処分されていました。それが2023年度、6899匹にまで減っています。
こうした背景には、法律の改正が重ねられたこと。そして『ねこたまご』のような保護団体と自治体の連携が深まっているなどの理由があります。
堀啓知キャスター)
札幌市では「殺処分ゼロ」ということですから「積極的に保護猫を引き取ろう」という意識も、たくさんの人に広がっているのではないかと思います。
そして、子ネコと向きあうボランティアの方の取り組みをみていると、改めて動物を飼う事の大変さ、飼いきることの責任にも気づかされます。当たり前のことですが、人の手を無くして生きられない小さな命を最後まで守っていく、その覚悟が必要です。