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映画『宝島』を通して学ぶ戦争と平和 授業でほとんど扱わない米軍占領下の沖縄「まだ戦争のにおいは感じている」妻夫木聡さんらが高校で特別授業【戦後80年・北海道と戦争】

2025年08月15日(金) 19時35分 更新

8月15日は終戦の日。沖縄戦を通じて、戦争と平和を学ぶ高校が札幌にあります。

戦後80年が経ち、戦争体験者がどんどん少なくなる中、ある映画を通して、戦争をより深く知る取り組みが行われました。

7月札幌市の北海高校で、ある特別授業が行われました。



講師は俳優の妻夫木聡さんと、大友啓史監督です。

大友啓史監督
「せっかくだから感想を聞きたい」

妻夫木聡さん
「手を挙げてくれると嬉しい」

映画『宝島』。

今まで描かれてこなかった、沖縄がアメリカだった時代。米軍基地から物資を盗み、人々に分け与えていた“戦果アギヤー”をめぐって物語は進んでいきます。

沖縄で今も続くアメリカ兵による性暴力事件や基地問題。

小学校へのジェット機墜落事故、コザ騒動など、実際にあった出来事も『宝島』は描きます。

太平洋戦争末期の1945年3月、アメリカ軍が沖縄に上陸。沖縄では3か月以上にわたり激しい地上戦が行われました。

沖縄戦では民間人を含む約20万人がなくなったといわれています。

北海高校は30年以上、修学旅行で沖縄を訪れています。



沖縄戦の体験者の話を聞き、集団自決のあったガマに入り、明かりを消し当時の暗闇を体験。

米軍基地を見たり、沖縄平和祈念資料館を訪れたりするなど、沖縄戦を学んでいます。

大森和之教頭は、北海高校に赴任して以来、日本史の教師として平和学習に関わってきました。

北海高校 大森和之教頭
「沖縄戦の中で、北海道の方々が多く亡くなっている。(北海道と沖縄は)すごく離れているけど、実はつながっている。そんな意味を持って(平和学習を)30年続けている」



『宝島』の特別授業を前に、試写会が行われました。

歴史の授業ではほとんど扱わない米軍占領下の時代、そして3時間を超える内容に、生徒たちの表情は。

北海高校 大森和之教頭
「どうでした?誰か感想言いたい人?」



10月の修学旅行に向け、これから沖縄を学んでいく生徒たち。映画の内容は少し難しかったようです。

生徒
「画がリアルで勉強になりました」
「戦争の悲惨さを考えるきっかけになりました」

北海高校 大森和之教頭
「(生徒たちは)落とし込みきれてはいないかな。非常にたくさんの情報があったので、3時間という非常に長い映画。うまく消化できない部分があるだろうけど」

大森教頭は最近の平和学習の難しさを感じています。

北海高校 大森和之教頭
「当然だが、実体験を聞く機会が急速に減っている」

「沖縄も(戦争の)追体験がやりづらい」

戦後80年、映画を通して戦争の現実、そして“平和とは何か”少しでも考えてほしい。

大森教頭は、妻夫木さんらによる特別授業を前に、レクチャーを行うと決めていました。

北海高校 大森和之教頭
「映画に出てくる史実を生徒たちに確認してほしい」



「深めないともったいない。こういう機会を与えてもらったので」

妻夫木さんらの登場を前に、約200人の生徒を前にして、大森教頭のレクチャーが始まりました。

北海高校 大森和之教頭
「コザ騒動っていうのは、車にひかれた人を米軍の憲兵隊が、自分たちで勝手に取り調べしようとしている人たちに対して、沖縄の人たちがお前たちに調べさせないぞと車を取り囲んだ。それがエスカレートしたのがコザ騒動」

沖縄戦では沖縄県民の4分の1、約20万人がなくなっている。実数がわからない。行方不明のまま終わっちゃっている人もいる」

北海高校 大森和之教頭
「宮森小学校にジェット機が墜落。実際にあった。17人、そのうち児童11人が亡くなっています。最終的には。不可抗力だからしかたないねってことで、大した補償がないまま実は終わってしまう」

「宝島」の中には実際の史実というものがいくつも描かれています。

こういった背景を知ってもう一度映画を見ると、沖縄の人たちがどれだけ大変な思いをしたのか、実際にイメージをもって見られる。

「日本の国土の1パーセントに70パーセントの米軍基地がある」

「なかなかここは難しいです。どっちが正しいかは言えない。基地があるないっていうのは。ただ、沖縄の人にすると、なんで沖縄に基地があるのか、そういうことを考えてほしい」



生徒たちは特別授業を前に、『宝島』に出てきた史実を確認しました。

いよいよ特別授業が始まります。

妻夫木聡さん、大友啓史監督に、生徒たちの質問が飛びました。

生徒
「撮影をしている中で、心に深く刻んでいたこと、刻まれたことは?」

妻夫木聡さん
「友達と海沿いのカフェに行ってお茶をしていた。くつろぐために連れて行ってくれたと思ったら、戦闘機がバーっと飛んで、『妻夫木、これが沖縄よ』と言われた。その瞬間にすごくハッとして」

妻夫木聡さん
「沖縄に住んでいる人にとってはまだ戦争のにおいは感じているし、どこかまだ終わってないんじゃないかと思う。そういう事実があることも知らなければならない。沖縄の過去の歴史は確実に知らなければならない」



『宝島』で描かれた沖縄の時代。歴史の授業や平和学習ではあまり触れられなかった時代を、生徒たちは肌で感じたようです。

大友啓史監督
「戦争というのは戦っている間だけではなくて、戦った後にも人々の暮らしにどのくらいのしかかってくるのか(伝えたい)」



映画を用いての平和学習、その意義を大森教頭はこう語ります。

北海高校 大森和之教頭
「平和学習はイメージできないとだめなんじゃないか。人が亡くなったり、イメージしづらい。そういう場面を(映画で)示してもらうだけでも、平和学習は映像によって進むのではないか」

北海高校は、2025年から修学旅行の行先を沖縄だけにし、10月27日に出発します。

北海道ニュース24